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七魔の極光  作者: カロ
第一章 ルーウェルティア王国編
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第三話 ギルド登録









 ゲートを潜った先に広がったのは、ただただ何の変哲もない、少し汚れただけの壁。周囲は薄暗く、気味の悪さを感じる。

 僕が横にずれたことで続々と皆がやってきた。


「何でこんなに暗いの? あ、そっか。驚かせると悪いからって路地裏にゲートを繋げてたものね」


 シャロンが広がった光景に、自分で質問し、自分で解決する。それを聞き、バレンだけが納得の声を出し、ユレイアは飽きれたため息を出した。


「……あれ? そういえば何で僕のゲートが繋がったの? 登録してる場所にしか繋がらないはずだけど」


「簡単なことですよ、ユキ様。私が六百七十年前に、ゲートが登録している場所から半径五メートルは工事をさせないように忠告したからです」


「あぁ、脅したのね……。感謝するべきか怒るべきか分からないけど、まぁここは素直に感謝しとこう。ありがとね? あ、でももう改修はバンバンしちゃっていいから。脅しは解いてね? 色々大変なことになってそうだし」


「はうあっ!? ユキ様が私にありがとうと言ってくださった!? 不味いです、鼻血が出そうです!」


 とりあえず苦笑いを返し、光が差し込んでくる路地へと歩き出した。ほんの数秒で路地裏から脱し、眩しい光が目に入って思わず手で隠す。


 少し落ち着き手を退けると、そこにはレンガ造りでできた家々が並ぶすっかり見慣れてしまった景色が広がった。


 六百七十年ぶりの外出だから久しぶりなんだろうけど、僕にとっては寝て起きたってだけの感覚だからそこまでうわぁ、とはならないんだよねぇ? 一応した方がいいのかな、こういうのって。


 そんな馬鹿な考え事をしていると、ふと大勢の視線に気づき辺りを見回す。


 あ、そりゃそうか。路地裏から露出度の高い黒髪美女に綺麗なエルフ美女、ゴスロリに日傘を持った金髪お嬢様に、老執事、無表情な美少女。そして、めちゃくちゃ強そうなイケメンが纏まっていたら確実に視線がいくよね。


 え、僕? 僕は普通中の普通な少年だから大丈夫。僕にも男から視線が来るように感じるのは、多分気のせい。


「ふんっ! 下等生物どもが、この可憐で麗しいわたくしの美貌を眺めるなど百万年、いえ、一億万年早いですわ。あぁ、帰ったら体を消毒しないといけませんわね」


 な、何を子供みたいなこと言ってるの……。しかも一億万年って子供以外から聞いたことないんだけど……。


 とりあえず、視線を気にしないようにして冒険者支部へと歩いていく。多少道が変わっているらしく、こういう時は頼りになるユレイアに案内してもらう事となった。













 そして数分後。大してトラブルが起きることもなく冒険者支部にたどり着いた。……あ、一回だけ、近づこうとした厳つい男がユレイアに睨まれて失禁しながら倒れたけど、それは気づかなかった振りをしたからカウントしない。


「失礼しま~す」


 小声で呟きながら中に入ると、中で酒を飲みながらどんちゃん騒ぎをしていた冒険者たちに依頼掲示板を眺めていた冒険者たち、机に座って談笑や作戦会議をしていた冒険者たちなど、さまざまなことをしていた冒険者支部内の冒険者は一人残らず入り口を振りむいた。


 大抵の人は状況が掴めずただ茫然としているが、酒に酔ってまともな思考ができていない一部の人たちは、ユレイアやシャロン、アイにアリス。そして何故か僕に視線を向けて口笛を吹いた。


 これもまた無視し、一直線で受付へと向かう。

 受付は、冒険者やギルドの登録、依頼の要請と受注、または達成報告をする場所だ。ギルドの登録をしに来た僕たちは当然寄る場所。


 気の毒に、この癖の強い人が多い僕たちに選ばれた受付嬢は、かわいらしい栗色の髪を持った、僕と見た目上同年代くらいの女の子だった。


「すみません、ギルドの登録をお願いしたいのですが」


「え、あ、は、はいっ! えと、こちらの紙にギルド名とメンバー数、ギルドマスターとサブギルドマスターの名前を記入し、あちらのカウンターにある紙に全メンバーの名前と種族、役職をお書きください。終わりましたら、誰でもよろしいので受付までお持ちください!」


 う、うわ、すっごい早口だった……。


 僕たちを見てめちゃくちゃビビっていたため、かわいそうになり即座に撤退する。そして受付嬢に言われたとおりにカウンターまで行くと、置いてあった紙を一枚とり、ユレイアに渡す。ユレイアが名前を書き始めたのを見て、僕は受付嬢に渡されたほうの紙を書き始める。


 んっと、ギルド名は当然〈七魔の極光〉でしょ? メンバー数は七人で、ギルマスは僕の名前である、ユキ・リーヴェルテ。サブギルマスはユレイア・リーヴェルテっと。こんなもんかな。


 書き終わったところで横をチラッと見る。今は三人目のようだ。もう少し待とう。


 しかし、大勢に見つめられるって何回経験してもこそばゆいんだよねぇ。注目が長ければ段々気にならなくなるけど、一回途切れた後にまた注目されるとこそばゆくなる。やっぱり、このメンバーと行動するなら慣れなきゃ不味いよね? 

 流石に全員揃って外出なんか緊急事態以外は滅多にないけど……。


「……マスター、これ」


「ん? あぁ、ありがと、アイ」


 アイから紙を渡されたため、パパっと書き込む。


 名前を書いて……種族は人間。何故かめちゃくちゃ長生きしてるけど。役職はオールラウンダーって書いとけばいいよね。そもそも誰かと一緒に戦う事自体少ないし、現にどこでもいけるし。


「よし、これでオッケーと」


 記入し終わり、受付へと向かう。


 ……やめて。もうこっちに来ないでって、顔で訴えるのやめて。


 栗色の髪の子をじっと見つめ、諦めろ、と目で訴える。すると、顔をポフンと一気に赤く染め上げ、俯かれてしまう。


 え、えぇ……。何かごめん……。


 心の中で謝りつつも、結局は同じ受付嬢のもとへとたどり着く。


「お、終わったので確認お願いします……」


「うぅ……。分かりました……うひぃっ!?」


 彼女が、紙を受け取って顔を上げた途端、僕の後ろに視線を合わせて、赤かった顔を一瞬で青白く変え、変な声を出す。

 恐る恐る振り向くと、そこには鋭い目を彼女に向けたユレイアの姿が。


「……ユレイア」


 少しだけ睨みを利かせてユレイアを見つめると、すぐさま表情を変え、まるで化け物でも見たかのような反応をする。


「も、もも、申し訳ありません、ユキ様! しかし、この女がユキ様に色気を使うというしてはならない行為をしたために私は――」


「いや、色気なんか使ってないから!? これからは、なるべく人を睨みつけないこと! 良い!?」


「うぐぅ……。分かりました……」


 ユレイアに軽い説教をし、彼女の頭を撫でて、ごめんねと慰める。


 って、何やってるの、僕!? い、いかん……。あまりにも子供みたいな可愛さがあったからつい撫でてしまった。


「ひゃうぅぅぅぅっ……!? ……あっ。……うぅっ!! か、かかか、確認するので少しお待ちくださいっ!?」


 最初は変な声を上げていたが、僕の理性を抑えて手を離すと、小さく息を漏らす。そして、はっと我に返ったかと思うとものすごい勢いで顔を振り、そして大声を出して紙に視線を移す。


 え、何この子。めちゃくちゃ面白いんだけど。ファンになりそうなレベルでかわいい……。


 じっと彼女の顔を見つめている間に、ギルド名等が書かれた紙を読んでいく。そして、二枚目の、メンバーの情報が書かれている紙を目にした途端、ピタッと動きを止めた。


「え、あの、大丈夫です?」


「……こ、これ、嘘じゃないんですよね?」


「え、あ、多分誰も嘘は書いてないと思うけど?」


 そう答えた途端、受付嬢の体がワナワナと震えだし、それにつられて紙が音を立てる。

 その異様な状態に、もともと僕たちに注目していた視線は彼女の方へと移った。


 しばらくして、彼女の口が開く。


「ゆ、ユレイア様が天魔族の魔術師。シャロン様がエルフの弓使い。バレン様が獣人族獅子の剣士。アリス様が吸血鬼の魔術師。ルーウェン様が龍人族の格闘家。アイ様が機械種の魔導技師。そしてギルドマスターのユキ様が人間のオールラウンダー。ま、間違いないですね?」


「えっと、そうですよ?」


 彼女の手から、二枚の紙がはらりと落ちる。


 やがて、数秒間の沈黙が流れた。それは、僕たちと彼女の間だけでなく、近くで聞いていた他の受付嬢たちも、この冒険者支部にいる冒険者たちも、だ。


 





 しかし、その沈黙は唐突に終わりを告げることとなる。


 合図をしてないにも関わらず同時に発せられたその声は、冒険者支部を、いや、街までを震わせた。




「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」」」」」




 数年、数十年ぶりのレベルの大声が、この日、ルーウェルティア王国の外れの街〈セルアス〉の冒険者支部を中心に響き渡った。











次話は十二時です!

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