プロローグ ある酒場での会話
拙い文章もたくさんあると思いますが、どうぞ読んでいってください(__)
すっかりと日が暮れて周囲に星が浮かび始めたころ、とある町のとある酒場では、静まり返った町と打って変わって、まるで宴会の如き盛り上がりを見せていた。
そんな酒場の中で、二人の冒険者が酒を飲みながら、互いに愚痴をこぼし合っている。すっかり酔いが回り始めたところで、ふと片方の冒険者が何かを思い出したかのようにぽつりとつぶやいた。
「最強のギルドか……」
それを聞き取ったもう片方の冒険者が、どうした? と聞き返すと、その冒険者はふっと笑い、馬鹿馬鹿しい話なんだがな、と話を続けた。
「こないだ王都の酒場で飲んでいた時よぉ、こんな噂を耳にしたんだ。……昔、七人で結成された神殺しのギルドがあった、ってな」
「七人のギルド? 神殺し? んな馬鹿な話があるかよ。随分とぶっ飛んだ噂だな」
アホくせぇ、と笑うと、ぐびっと残りの酒を飲み干し、お代わりを要求する。
「確か一人一人がとてつもない力を持っていて、何でも最弱でも一人で王都は消せるとか言ってたな。んで、ギルマスは神とタイマン張って、何とか倒したんだと」
「ははっ、面白い噂もあるもんだなぁ。おい、そのギルドに美女がいるとかそんな噂はねぇのか?」
噂を語る男も、残りの酒をぐびっと飲み干し、既に頼んでおいた酒に手をつける。
「これもまたおかしな噂なんだけどな、どうやら男三、女四のギルドでよぉ。しかも女は全員美女美少女なんだってよ。んで、極め付きはギルマスだ。男なのは確かなんだが、なんと十四歳くらいにしか見えねぇほどちっちゃいんだってよ。おまけにめちゃくちゃカワイイらしい。いわゆる男の娘というやつだ」
「ぷふっ、ホントすげー噂だな。他には聞いてねぇのか?」
「そのギルドの拠点はどうやら、あの死の孤島にあるらしいんだよ。まぁ、誰もたどり着けないから確認しようもないんだけどな」
「ほうほう、そういう話、逆にそそられるなぁ」
今まで聞いたことのないほどの吹っ飛んだ噂に興味が出始め、追加の酒が机に乗せられたのも気づかずに、前乗りになって続きを催促する。
「そして数百年前に、理由は知らないがそのギルドと神とで戦争がはじまり、大陸一帯が荒れ地になり、クレーターだらけに。んで、戦争はいよいよ最終局面。神とギルマスの一騎打ちになり、ギルマスが勝利。神は死んで、ギルドはだれ一人の死者も出なかったとか」
「くははっ! なんだそれ、そんじゃあ数百年前に全ての国が滅んでたってか?」
「……ギルマスはほぼ瀕死の状態だったんだが、最後の力を振り絞って大陸の状態を戦争が起こる前に復元。そのせいか、戦争が終わるまで生き残ったやつ以外はこの戦争の記憶がないために、この話が噂にしかなりえないのだそうだ」
「んじゃ、何だ? かわいいかわいいギルマスちゃんは死んじゃったってか?」
男は、ふるふると首を振り否定の意を表す。
「寝たんだってよ。それでギルドは一時的に解散。今じゃ存在したっていう証拠もなくなって、こういう風に噂になっちゃったんだと」
「はぁ? 何だよそれ、醒める話だなぁ。どうせならもっと盛大な落ちにしてくれよ」
ちっ、とつまらなさそうに舌打ちをして、酒を手に取り口に近づける。
だが、男はつまらなさそうにする男の顔をみて、にやりと笑った。
「な、なんだよ」
「まだ、続きがあってな。実はこの間、王城に手紙が届いたらしいんだよ」
「手紙? その噂と関わりがあるのか?」
口をつけずにグラスを机に戻すと、顔をしかめて男に尋ねる。
「こう書かれていたんだとよ。『彼は再び目覚める』ってな」
「……ぷっ、凝ってる噂だなぁ。こんなデマ流されたら王城もいい迷惑だなぁ」
「ははっ、ホントだよな、全く。一体だれがこんなアホらしい噂を流したんだか」
二人同時に、一気に酒を飲み干すと、席から立ち上がって支払いをする。
思ったより長居をしてしまい、いつもより高くなってしまったが、楽しかったしいいかと声をあげて笑う。
用が済み、扉を開けて外に出ると、瞬間冷たい風が火照った体を冷やす。
今日はこれで解散、男がそう言おうとしたときに、ふとまだ伝え忘れていた噂を思い出す。
「そうだった。どうやらあの七人のギルドな、全員種族が違うんだってよ」
「へぇ。んじゃきっととてつもなく強い種族なんだろうな。吸血鬼とか龍人族とかよぉ」
静かな町中で、響くほどに笑いながら言う男に、彼はまじめな顔で静かに告げた。
「どうやら、ギルマスは人間らしいぞ?」
町中に、二人に笑い声が響き渡った。
HJ大賞2019に応募するため、十万文字までは飛ばしていきます! それ以降はペースが落ちると思います……。