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猿橋と光と影の巷談  作者: 犬冠 雲映子
幽世を彷徨う
34/45

人身事故

「チョゲ!どこ?!」

 あの子はどこにもいない。どこへ行ったの?

「チョゲーっ!」

 お化け屋敷に行くと、仏間にチョゲにそっくりな写真があるのに気づく。

 ──あの子は人だった。


 あのね。サルハチ。わたしね、秘密でぼーけんしてるの。みんなに内緒で。だからね。ごめんね。

 ホントはね、線路を歩こうと思ってたんだ~…。


 あの子は、ぼーけんをしたかったんだ。

 誰かが、外でハルカという名を呼んでいる。たくさんの呼び声で、あれは捜索している村の人たちだと知る。

 ハルカとは誰だろう。()()()()()()()()()()()

 助かるかという思い、希望。私の中から明るい気持ちがわきでる。


「ここにいますっ!私は──」必死になって捜索隊の方へ向かう。

「あ」


 捜索隊がいるはずの外にはオオカミの群れがいた。オオカミたちは牙を向き、一斉にこちらを睨みつけてくる。

 毛を逆立て、彼らは唸りを上げた。捜索隊の人たちはどこへ?これは何?


「お前のせいだ!」

 誰かが叫ぶ。

「お前があの子を外に出さなければ──」

 知らないオオカミが一匹のオオカミを倒し、こちらをみる。

 眩い光を放つ、異色の存在であるネムフスキーだった。


 今だと走って森に逃げた。途中で踏切に阻まれる。

「なんで!こんな所に?!」

「サルハチ!」

「チョゲ?」

 遠くから車輪が削れる耳障りな音がしたような気がした。電車がくる。来るはずのないあの電車が──

「チョゲ!逃げて!」

 このままではチョゲが轢かれてしまう。

 ああ──

 景色が滲んでいる。私の眼球は閃光にやられて。

 気がついたらチョゲはいない。いるのは私だけ。ぽつんと割れたスイカを前にへたりこんでいる。

 隣町に向かう電車は終電を迎えたのか──村は全て消灯している。暗い月明かりの世界で私はどうしてここにいる?

 私は消えてしまった彼女を探す。どこにも痕跡は無い。血溜まりも、何も…。


 ネムフスキーがこちらを見ているのに気づく。彼は幻の電車が再びやってくるのを見て、どこかへ立ち去っていった。この世界は繰り返されているのだ。

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