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猿橋と光と影の巷談  作者: 犬冠 雲映子
幽世を彷徨う
32/45

怪物

 光子が大切そうにしていた日記帳を見つけ、読み始め──歯を食いしばる。

 そこには普段おくびにも出さない、彼女の裏の側面があった。影井家への憎悪。詠子への悪口、いじめ。

 影井家と稲光家が対立していたのは真実だったわけだ。どうやら工場建設ができる前から仲は良くなかったらしい。

 外部と関わりがある影井家と土着を大切にする光子の家。地主同士。そして勢力争い。

 産業革命以降の時代から財力を持ち始めた影井家は外部からやってきた工場と手を組んだ──

 それからは稲光一族の威光は弱まり、苦汁をすする日々が続く。それを村の者たちは知っていたが、関わらぬように暮らしてきた。村八分とは行かぬが孤立し、影井家の影響により阻害されている稲光一族を誰も助けなかった。


「…光子…」

 ガタリ、と廊下から気配がして固まる。


「チョゲ…?」

 照明器具がついていない廊下からゆっくりと光子の頭が現れた。いつもの優しい笑みを貼り付けた、光子。けれど頭の位置は彼女の背より数倍上にあった。


「■■■■■■■■」

 何かを口走り、のろったくこちらへ、部屋に入ろうとしてくる。体は人間の形をしていなく、痩せこけたイタチかキツネに似た獣であった。


 悲鳴をこらえて、立ちすくむ。

「猿橋ぃ、なんでいきてるのお?」

「やめて!」

 日記帳を抱えたまま廊下へダッシュする。「それ、返して欲しいなあ」

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