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猿橋と光と影の巷談  作者: 犬冠 雲映子
幽世を彷徨う
31/45

赤い塊

 あれから二人で学校の怪談や七不思議を話していると、里の方へ続き──または犬塚沼(いぬづかぬま)へ向かう道で不明瞭な、塊に近い人が現れた。


「ひッ!」

 ──お化けだ。ヒグマの次はお化けに追いかけられる…嫌な予感がした。

 塊は赤く見えた。それがヨレヨレと歩いている。不意に赤い服を着た人がいるという噂話を思い出した。

 夜中に出歩くと赤い女が出る。だからきちんと門限を守り家にいろ、と。


「な、七不思議に襲われるの?」

「すご!!せっかく七不思議に会えたんだから追いかけてみよー!」

「嫌だよ!」

「ほら行こー!サルハチ!ほらー!」

 元気いっぱいにチョゲが走っていく。もはや止める気力もない。だが、赤い塊に興味が無いわけではなかった。

 なぜだが既視感がある。あの光景を、私は一度見たことがあるのだ。

 腰を上げて、私は後をつけるのに加わる。あの塊がどこに行こうと何も変わらないかもしれない。もしかしたら、"おうさま"に会えたりもするかもしれない。


 分からないけれど、チョゲについて行った。




 ──赤い人は稲光家の、光子の家に消えていく。半開きのドアを開け、玄関に入っていった。

 村にある有数の、大きな農家の古民家を改築した素敵な住宅だった。

「そんな…」

 後を追わなければよかった。でもなぜ、光子の家に?

 あれは…。

 私はゆっくりと忍び足で家におじゃました。いつもの見慣れた室内。いつもの嗅ぎなれた稲光家の匂い。内装。

 赤い人はよろめきながら暗い廊下を歩いていき──光子の部屋を通り過ぎた。ホッと胸を撫で下ろし、あれがただ村を徘徊している妖怪か、化け物の類だと確信する。

「あーあ、びっくりした…」

 アレはゆっくりと廊下を進み、スッと消える。「え…?」


 私が常日頃、遊びに来ている時には無い、古びた扉がある。あそこはいつも棚があり、インテリア雑貨が並べられている場所だ。

 隠し部屋とでも言えばいいのだろうか?あんな扉見た事がない。

 知らない部屋の扉を開け、塊は階段を降りていく。驚愕しつつも、好奇心と恐怖で後をつけてしまう。もう知らないフリはできなかった。

 光子は、稲光一族は何を隠しているのか?

 階段を降りるとアメリカの映画に出てくるような地下室があった。物置部屋というべきか。

 蔵にしまわれているような物が所狭しと並べられている。

 その一角に世間一般が想像するような、邪悪な儀式を行った痕跡があった。


 蝋燭と奇妙な──魔法陣?そして数多の血痕。


 光子はエイコを憎んでいる…それは光子のおばあちゃんが研究施設で話してくれた。

 …光子か、彼女の家族はこの魔法陣を作り、何かをした。それだけは確かであり…認めがたいものだった。


「な、なんで」

 声が震える。私は咄嗟に、自然と安全地帯であった光子の子供部屋に逃げ込んだ。彼女ではなく、家族の誰かがやったのだと信じたくて──。

 彼女の部屋から、ベッドの上に血まみれの服が置いてある。それは光子がお気に入りと公言していた可愛らしいTシャツだった。

 赤い人の塊とはこれだったのだ。

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