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猿橋と光と影の巷談  作者: 犬冠 雲映子
夜が続く異界へ
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戦利品

お久しぶりです。

なんと、続きを見つけました。

 鈍器や刃物など武器になるものがでてくるかもしれない。

 平和の世日本にこんなひやひやする場面に直面している子供がいるか?


 野犬に襲われるなんてものはどこにでもある状況だ。熊だってイノシシだってここらにはうようよしている。

 だけど私は「得体のしれない」いきものなのだ。

 私を助けてくれる人間なんて今のところいない。頼れるのは自分だけ!


 にっこりとほほ笑んでいる奇妙な遺影と多数の額縁(がくぶち)。この家の者はかつて子がいたようだ。不慮の事故だろうか?

 ずい分若い遺影だ。お気の毒に。

 せっかく喧騒(けんそう)を忘れて第二の人生を歩もうとしていたのだとしたら。なんてひどい仕打ちなのだろう。


「―!」遺影に見取れているとぶらりと視界の(すみ)に白い物体がよぎった。おばけ?いや…布だ。自殺を図っている等身大のてるてる坊主。悪趣味だ。


 噂をききつけた輩が演出のために設置したのか。意図は読めないけれどちびりそうにはなった。

 胸をなでおろしててるてる坊主に近づく。こんな代物どこから持ってくるのやら。ぺたぺたと触っているとぐるりとてるてる坊主は回転した。「ぎゃあ!」


 不気味な笑みをたたえた老婆の顔写真が貼られているではないか。

 これも遺影だ。

 顔をくりぬいてコイツに貼りつけたのだ。


「ふわーお!」

「ぎゃああああああ!」

 今度こそ腰をぬかしてしまった。尻もちをついた私をあざ笑っていたのは―チョゲだった。


「ょ、チョゲっ!チョゲ生きてたのね!」

 多少傷ついてはいるが首も繋がっているし四肢もある。舌で毛並みを整えるとシッポをふって足元にじゃれついてきた。


「おらちはむてきだーい」

 言動はアホらしいが兵だというこは認める。

「あいつら今頃めぇひんむいてたおれてるゼえーふひゃひゃっねえねえハルハチぃお腹へったー」


 能天気さに安心する私も私だけれどこいつはあの野犬どもをぶちのめしたという。ありえない事実だ。もしかしら逃げてきたのかもしれない。そしたら…八つ裂きにされる。


「あーおみやげおみやげー」


 そう言ってぴょこぴょこと暗がりに消える。しばらくすると畳みをする重い塊を銜えてチョゲはやってきた。

 てるてる坊主よりも遺影よりもおぞましい所業だ。


 チョゲは野犬の図体のうち。頭部だけを、それこそ戦利品の如く私の前に差し出した。

 黒いほうだ。あのホオズキみたいに光っていた眼球はくすんで淀んで曇りガラスめいたてかりのみ。舌をだして「めぇひんむいて」死んでいた。


「…これ、あんたがやったの?」

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