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第11話 聖女様の素敵な大冒険 (アナザーサイド)

※、別視点です




 エフィルア達がダンジョンに潜って数時間後。

 2番手で第1階層に足を踏み入れるパーティーがあった。


「ああもう忌々しい。なんで聖女たる私じゃなくて、あの男がトップパーティーなのかしらね。やっぱりあの時ちゃんと昇天させておくべきだったんだわ」


 まだ若い5人の男女。

 その中心にいるのは聖女エルリカ。

 

 彼らは町の人々の盛大な声援と見送りを受けながら、迅速に準備を進めここに至っていた。

 普段はあまり精力的な狩りをしていない彼ら。

 その習熟度からすると(いささ)か不安のある旅立ちで、引き留める声も相当程度あった。

 だが結局はパーティーを率いるエルリカのゴリ押しによってダンジョンへと足を踏み入れる事に。


 彼女が他人の意見など聞き入れないというのは、身近な者たちには良く分かっていること。

 陰ながら派遣された護衛の者たちも、実に余計な仕事を増やしてくれたものだとは思いつつ逆らう事はない。


 そして戦いは始まる。


 

「みんな落ち着いて。暗くて見通しが悪いだけで敵の強さは魔狼と変わらないっ!」

「そ、そうだな聖女様の言うとおりだぜ」


 慣れない暗闇での戦い。混乱に陥りかけるパーティーメンバーを一応まとめ上げて、地下第1階層を奥へ奥へと探索を進める。

 聖女を突き動かすもの。それはもちろんエフィルアへの対抗心、嫉妬心、敵愾心。

 あのような邪悪で矮小な者に聖女たる自分が遅れをとるなど、この世に存在してはいけない事象なのだった。そんな事があり得るくらいならば死んだほうがましである、いや、むしろ殺す。そういった強い信念が彼女を支える。


「私達こそがこの町を守る英雄となるのです!」

「「「おおッ!!」」」


 


「うおおお、いたぞ! 例の人面獣だ」

 メンバーの1人ギャオが、今日の第1目標とする魔物を見つける。

 闇に潜んで行動するその魔物はエフィルアの“ライト”を嫌って出てこなかったため、上層階にいくらか残っていた。


「うっ、なんなのですかこの獣! 闇にまぎれて実態が……」

「きゃああ」


 エフィルアが戦った時は、その魔物とまともにやりあう事なく殲滅してしまっていたが、人面獣達はようやく今、本領を発揮した。

 闇の中で音を殺し、マナの気配で撹乱し、集団で襲い掛かる。


 その魔物は、聖女ばかりを執拗に狙う。

 囲まれ、孤立し、ついには、あわや暗闇の奥に引きずり込まれそうになる。


「くそっ、僕がそうはさせないっ」

 駆け出し剣聖のシオエラルが間一髪追いすがる。

 が、しかし。


「な、なんだと。今度はスケルトン? みんな! アンデッドが大量に湧いている。とても手には負えないっ」


 そこには魔物の待ち伏せ。剣聖はヘタレた。


 闇に引きずり込まれた聖女は、四肢を噛み付かれ、抑えられ、ついには獣の先端が・ 


「くそがあああああ 獣や骨がこの私にぃぃぃぃ! 我が聖なる魔力で全ての邪悪なる者を浄化してくれるあぁ!」

 それでも聖女は持ち前の無駄に強い高慢な精神力(ガッツ)で闇の中を這いずり回り、魔力を振り絞る。

 暗闇の中での乱戦、死闘。


 彼女達は明らかに自分達の実力を見誤っていた。

 エフィルアに劣るわけがないという、彼への異常な熱情が判断を狂わせる。


 聖女のそのたぎる熱情は、ただでさえ彼女に吸い寄せられるように押し寄せるてくる人面獣達に、よりいっそうの刺激をあたえるのだった。


 後方から護衛に付いていたはずの一団にとっても誤算であって、事前に集めていた情報を遥かに上回る量の魔物が沸き上がっていた。


 それでも戦いに決着がつく。

 聖女達のメンバーは、それぞれに酷い傷を負いながらも死者まではださずに済んだ。

 アンデッドには聖属性魔法が異常に効果的なこともあり、酷い苦戦を強いられながらも生き残った。


 それでも、聖女はさらなる正義と熱情に突き動かされる。

 奥へ、奥へ。

 ルーキーとしては異例の速さ、1日で2階層(・・・)という町の人達が驚く速度で探索を進めるのだった。


「くぅ、これは聖女たる私への神からの試練。必ずやあの邪神エフィルアを……」

 度重なる苦難。聖女の中でエフィルアは邪神にランクアップしていた。

 自分に降りかかった災厄は全てあの邪悪な存在が元凶であると思わねば、彼女の捻じれたプライドと精神は保てなかった。

 だがしかし、エフィルアは邪神ではなく魔神だった。

 厄災に関しては全て自業自得だった。



「すごいぜ… 聖女の執念。このペースならもうエフィルア達に追いつくかもな」

 ギャオは本当はもう帰りたかった。いや、誰だってそうだろう。

 しかし持ち前の太鼓持ち気質が聖女へ愛想を振りまいてしまう。


「いや、もう追い越してるかもしれないよ」

 そして剣聖は知らない。

 激しい乱戦の終盤で、彼の背後から致命傷になりかねない一撃をあびせてきた人間の事を。

 聖女からはすでに、"私を助けなかった糞ヘタレ雑魚、絶対殺す”と思われている事を。


「違いないやっ! はっはっはっ」

「「「は~っはっはっは~」」」

 

 聖女達は、ある面では無駄に精神力が強かった。

 自分達の正義と優位を信じて疑わない。

 たとえ、股のあたりに不具合を感じたとしても、それを打ち消すように湿った笑い声をダンジョンに響かせるのだった。







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