悪夢の夜道
夜が怖い。
夢を見るのが怖くてたまらない。
あの感触、リアルすぎる。
匂い、触った感触がまるで実際にあったかのようだ。
そんな体験したことないか?
僕は正直何度もある。
その夢で見たものの中で、いっちばん怖かったのは…。
夜道、1人で歩いている。
途中高架下をくぐるのだが、そこは真っ暗。灯りが一つもない。
だから携帯のライトを使って歩いているのだが、足音が聞こえる。
それも一つじゃない。
もう一つ…。
自身ではない足音だ。
ドキドキする。
どうしよう?ここは住宅密集地。叫べば誰かが出てくるだろう。
助けはすぐに呼べる。
そう思っていた。
こんな時家族が誰かいれば良かったと正直思う。
でも実際は1人。
防犯用のアプリを立ち上げ、いつでも音をならせるようにしておく。
足音はさっきから変わらずついてくる。
たまたま?
イヤイヤ違うでしょ?
だってこの先は僕が住むマンションが建ってるだけ。
だから、おかしいって。
自分の足音が徐々に早くなる。
すると足音も早くなる。
反響してるのかとも思ったのだが、ここは住宅密集地。…ありえなくはないが、後ろを振り返る勇気が持てない。
「どうしよう?鳴らそうか。そしたらいなくなってくれるかなぁ?」
泣きたくなるがここは我慢。
グッと涙を抑え、ブザー音を鳴らした。
あたりに響き渡る音。
でもね?おかしいんだ。
誰も家から出て来ない。
なんで?
おかしいと言えば、部屋の明かりが何処もついていないという事。
それもおかしいよね?
誰もいない?
まさ…か。
まだ夜の7時。寝るには早いよね。
じゃあ、何で何処もついてないの?
ここは本当に僕が通っている道なのか?
不安がつきまとう。
トントンといきなり誰かに肩を叩かれる。
怖くてたまらない。
誰が僕の肩を叩くの?
知り合いはこの時間通らない道なのに。
ドキドキが止まらない。
振り返るか?どうしよう…。
するとまたトントンと肩を叩かれる。
怖いが振り返った。
するとそこに立っていたのは警官だった。
「君、大丈夫?夜道こんな暗い所を歩いてちゃダメだよ。何かあっても誰も助けてはくれないからね〜。」
そう言って腰にさしてある拳銃を僕に向けた。
「ひ!?な、なんで?」
「そりゃこうするためだよ。」
そう言って警官は拳銃を上に向けて発砲した。
ビックリするくらい大きな音に僕はその場で腰を抜かしてしまった。
「悪い悪い。さっ、続きしようか。逃げなきゃどうなるかわからないよ〜。」
「あ、アンタだったのか?僕を付け回してたのは。な、なんでそんなことするんだよ。仮にも警官だろ?!」
「イヤイヤ、毎日が書類とのにらめっこでね、飽きてたんだ。だから丁度いい所に君が来て嬉しかったよ。」
「っかしいよ。ゼッテー変!アンタ本当に警官か?」
「ん?ホントだよ。ほら、警察手帳。名前書いてあるだろ?」確かに名前が書かれていた。
ニヤリと笑う不気味さに僕は顔を引きつらせながら走り出した。
「何なんだよ。おかし〜よ。警官が街中で発砲なんてありえない。夢だよね?夢だと誰か言ってくれ!!」
そこで目が覚めた。
全身汗びっしょりかいていた。
起きた瞬間に眠気もどこかに行ってしまい、ガタガタと体が震えている。
なんて夢見たんだ。
まだ夢を覚えていた。
だから怖い。
夜が…。
夢の続きをみやしないかと不安でたまらない。
今日はどんな夢を見るのだろう……。
その日の夜、夢と同じような時間に帰宅することになった僕は嫌な予感しかなかった。
バイト…早く切り上げればよかったなぁ〜と後の祭りである。
ただ違うのは明かりがあちこちで見られる事。
人がいるという事だ。
少しホッとしている自分がいる。
その時足音が聞こえてきた。
夢と同じだ。
瞬間的に身構えたが、僕が止まると足音も止まる。しかし今回は少し違った。僕が止まっても近づいてくるのだ。てっきりここら辺に住む住人かと思ったのだが、見えたのが体の一部だけだったのでさらに驚いてしまった。
そう、足首から下しかなかったのだ。
しかも透けて見える。
明らかに生きている人間ではないだろう。
逃げようとして慌てていた為その場で転んでしまったが、足首が近づいてくるのは変わらない。
起き上がってすぐに走り出した。
すると足音も早くなる。
「こんな時どうすればいいんだよ〜!誰か〜!」
叫びながら防犯ブザーを鳴らす。
するとスーッと消えた。
本当にホント。
後ろを振り返っても足首も見えなかった。
何だったんだ?
一体??