豊かすぎるが故の夢の話
寝るって寝たのではなくて寝落ちからの夢って変にリアルだったりする。そんな話。
ーーーーーここは、何処なのだろう。
周りには何も無い。
真っ暗で、
真っ黒で真っ白で。
上も下も右も左も、濁っていてよくわからない。
どれくらい続いているのか、
全く終わりが見えない道がある。
その道の上をひたすらに歩いている。
体はいう事を聞かずに進み続ける。
ーーーーーどれ程歩いたのか。
そもそも本当に歩いていたのか。
……それすらもわからない。
ーーーーーっ!
「ぐふっっっごぶぉぉぉっっっ」
……盛大な吐血。
一呼吸しては吐血。
吐血。
吐血。
血を吐いて、息を吸う度にむせる。
そしてまた血を吐く。
苦しい……
「ぜえ、ぜえ、、ぜえ、、、
うっ…おえぇぇぇぇぇぇぇ」
ーーーーー。。。
どのくらいの時間溺れていたのだろうか。
口から、鼻から、目から溢れるものが涙なのか鼻水なのか血なのか、とうに分からなくなっていた。
「はあ、、、助けて……っ!?!?」
ーーー異変に気付く。
自分の顔や、体をぺたぺたと触る。
血は出ていない。
「??????……ふぅぅ……」
私は安心して胸を撫で下ろそうとしたが、撫で下ろす途中で体が消えた。
「……え?あ、、ああぁぁ……」
……正確には、穴が空いていた
「ああぁぁぁだぁぉぁぁぁぁぉっっっ…………痛い痛い痛いいたいいだいいだいっっづっ」
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「っっ!!???あぁぁぁぁぉぉ!????ひぎぃっやぁぉぁぁぁっっっ」
声にならない叫び。
言葉に出来ない痛み。
「何でこんな……嫌だ…嫌だ嫌だいやだいやだ誰か助け………………て…………」
……………………。
……。
「痛く、ない??……?、、、何なの……どういう……」
何故か痛みはなかった。穴は拳より少し大きい事がわかる。
興奮しているせいか、体が熱い。
どうやら感覚もおかしいらしく、体全体を爪楊枝でひたすら突っつかれるような、くすぐったい感覚に包まれる。
顔を上げると赤い鳥が目の前にいる。大きくて立派な鳥。
「?鳥……?何でこんなところに…っっっっ…………」
赤い鳥は翼をはためかせた。
ーーーボッ
鳥は身体の穴を通り抜けていった。
ーーーーージュッ
「……………………は?」
ーーーーー火。
ーーー炎だ。
ーー燃えている。穴が、いや、身体が灼熱に包まれる。
「あぁぁっっっ熱い!???熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い、…ぃぃぃぃ」
……ただ燃えて。
……ひたすら焼けて。
最早声など出ない。
手を伸ばした。果てしなく続く道の先。何かがいる。誰かがいる。
ーーーーーあれは。
ーーー私?
「ー!?!?!???っっっっ!、!」
世界がホワイトアウトしていく。
光に消されていく。
「あぁぁぁぁ!!!!」ガバッ
「はあ、、はあ、、、今の……夢、、なの?」
……ベットから飛び起きて周りを見る。雷華の姿はなくて、泣きそうになる。
机の上には雷華が用意してくれたであろう、水の入ったコップがあった。
体は汗でびしょびしょ。
失った水分を補給するために水を口に含む。が、顔面に水しぶきを打ちつけて終わる。震えている。震えてコップを口に持っていくことが出来ない。
手から滑り落ちたコップを見ながら考える。
……怖い。思い出しそうになって一気に毛穴が開く。
床に落としたコップに反射して自分の顔がぐしゃりと歪んで見えた。
「ひっっもうやめて…………」
「こ、言葉!?大丈夫!!!???」
腰が抜け床で毛布にくるまっている私を抱き上げてベットに戻すと、雷華は手際良くコップを拾い、タオルで床を拭いた。
「よーいしょっと……」
雷華は私の腰に手を回し、
両手で挟むようにして私の震える手をがっしり握った。
……私はポロポロと涙を零すだけで喋ることができなくて、震えもまったく止まらない。
……それを見た雷華は私を抱き寄せた。
「ごめん……私があんな話したからだね……怖かったね……」
……「怖かった」のは雷華で。
実際にあの痛みを経験したのも雷華で。
自分が情けなくてさらに涙が零れる。
「話を聞くって決めたのは私……だから……謝らないで…」
「……そっか。よしよし……このまま寝よっか。」
………………そのまま私は雷華に抱かれて深い眠りに落ちたのだった。
ーーーーー。。。
想像力って怖い。
想像力が豊かなのもある意味弱点になり得るのかもしれない。