慣れって怖いよねって話
残念ながらスーパーコトハにはなれなかったみたい。
雷華は簡単にやってのけたけど、麻痺しているのかもしれない。感覚も、体も。
ーーーーー「っていやできないから普通!!!」
力に目覚めるなんて事もなく。説教タイム。
家の中に入って話を聞こうと思ったのだけれど、
今日は色々あったからもう頭の中はごちゃごちゃで、雷華のぶっ飛んだ話をすぐ理解できる自信もなかったので今日のところはもうおしまい。
問い詰める気力もなく、頭がオーバーヒートした私はソファで雷華に膝枕をしてもらっていた。
雷華の太ももはとても柔らかくて睡魔が私を襲う。
「話、明日にする?」
私の頭を撫でながら、雷華が言った。
「ん……聞くだけ聞くわ」
……恥ずかしいけれど前言撤回。やっぱり聞かなきゃいけないと思った。
いいリアクション取れないだろうし、ツッコミをいれる気力もない。
でも、これ以上雷華と離れたくない。
寂しい。雷華の気持ちがわからないのが、何より寂しい。
覚悟を決めた私は雷華の手を握って話に耳を傾けた。
「……そっか、わかった。じゃあ、話すね。
まず何処に行ったかなんだけど。
さっき見せたやつあるじゃん?ビリビリ~ってやつね。
あれが「常識」で、個人のステータス。
そういう世界に行ってたんだ。国同士が何時も戦っててさ、見たことないようなモンスターとかもいて。
「人」ではない人達が同じ場所に住んでいて。
そういう、世界にいた。」
ーーー淡々と言うけれど、話のさわりの段階で既にすごい事言うのね。まあいいわ。
「つづけていいわよ。。。」
「……うん。それでね。私、元々そっちの生まれらしいんだ。風華も。私のお母さんたちも。」
「え、風華もなの!?!?」
ーーーいきなり突っ込んでしまった。早々にアウト。
雷華には妹がいる。双子の妹。
名前は「風華」。雷華とは全然違った雰囲気で綺麗というよりは可愛いタイプ。
私との出会いは姉妹揃ってだった。
雷華と風華には血の繋がりがない。
風華には幼い頃の記憶がなく、施設で1人きりで過ごしていたのを雷華の母親が預かったらしい。
とっても良い娘で、守りたくなる感じの娘だ。
…………お母さん「たち」。不穏なワードが気になったけど、まあ要するにみんな向こう側の人ってのはわかったから大人しく話の続きを聞く。
「……お母さんは向こうの世界だとすごい人らしくて、向こうからするとこの世界は全くの未知なんだって。
それで、お母さんは向こうから4人の若王を調査のために来させた。
私と同い年なんだけど、刀持ってたり私みたいにビリビリってできたり空飛べたり地面割れたり傷治せたりして、すごい人達なんだ。」
「魔力?ってやつだったかしら?」
「そうそう。向こうだと皆持っててさ、当たり前なんだよ。」
「魔法というのと同じ感覚でいいの?」
「別物かなー。魔力というものがあって初めて魔法が成り立つ的な感じ。
詳しい事は私もわからないんだけどね。
……とりあえず身を守るには魔力がないとって言われてたよ。」
…………魔法学校なるものがあるのだろうか。
「それで、私たちと彼等は去年の3月に出会って6月の終わりに向こうに行った。てわけね。」
…………彼等といった。
…………そうかそうか。
まあ王というのだからそれはそれは逞しい屈強な男なのよね。
………………おっと。それはさておきなるほど理解したわ。
そんな世界いつか行ってみたい。
景色を見たい。
色んな人達と話をしてみたい。
色んなことを聞いてみたい。
そして書きたい。
「何しに行ったかなんだけど。まあ自分達が違う世界にいる理由を知りに、かな。この世界からの客人として向こうの世界を見に行ってきたんだ。」
「……なるほどね、わかったわ」
……もうこの話に抵抗がなくなっていた。
「まあ向こうに行った皆それぞれの理由があると思うんだけど。
…………私は…………本当の母親に会うため。」
「…………そう。」
ーーーそう。雷華のお母さんは本当のお母さんではない。お義母さんだ。
その事は知っていたし、話の流れからそういう事なんだろうとも思っていた。。
とりあえず一連の話を聞いて、ひとまず事情は理解した。
…………けど今私が1番に聞きたいのは別にあった。
「……話は大体理解したわ、雷華はまた、その世界に行くつもりなの?」
……私は体を勢いよく起こしてそう言った。
ーーー。。。
ーーーーー。。。。
知らないところでとてつもなく大きな何かによって話が進んで、事情がある。
わかっている。わかったけれども。
私にとって大切なのはそこじゃない。
私が、本当に聞きたいのは。知りたいのは。。。。。