単なるそういうお話
※このお話は、私が一人の少女と出逢い、人となった話、などではなく単なる後日談になりますので、悪しからず。。。
-ーーーー楽しい。
漠然と。曖昧に、朧げに、私は今、楽しい。
体を起こして、陽の光を浴びて、ご飯を食べて。
散歩をして、好きな歌を歌って、駆け回って。
胸を張って、顔を上げて、目を開いて、息を吸って。
私は今日も笑顔で筆を執る。ーーーーー
私の名前は「文埜言葉」。
日本人のお母様とドイツ人のお父様を持つ、いわゆる
Half Japanese, Half German.というやつだ。
おっと失礼、「混血」と言えばわかりやすいかな。いや、「ハーフ」の方がしっくり来るかもしれない。
……まあどうでもいいよね!!!
私はドイツのドルトムントで生を受け11歳までは学校には行かずにお母様から学問、作法、常識等を教わり素養教養を身に付けた。
あんなことやこんなことがあって、嵐みたいな17年を生きて今私は日本にいる。
今年の侍の月がくれば晴れて私も18になる訳で。
合法的に薄い本が買える年齢になる訳で。
楽しみ過ぎて夜も眠れないのが胸の内に秘めている本音なのでして。
駄々漏れじゃないか!という一人ツッコミはスルーしてこれくらいで私のちょっとした、黒々とした自己紹介は終わりとさせていただきたい。
む?学校?ドイツにて行ける所まで行ったので通っていないし通う必要も無い。と私は思う。
大人達には今のところ何も言われたりはしていないし問題は無いとは思う。
花のJKライフ?というものには憧れこそあるものの、
全て行き着くとこまで行ってしまった私にとっては授業は退屈過ぎて、
きっと死んでしまうだろう。
ーーーーーー筆の走りが止まっていることに気付いてしまって、溜息をつく。
今私は幸せを逃した。後で捕まえに行くから問題はないけれど、こうして人の「幸せ」は簡単に失われていくと思うとなんだか世界は理不尽で出来ているように感じてしまう。
………今日は休日。とツイートして堂々と休む宣言をしたところで家の門が開く音がした。
ーーーーーどうやら今日は逃した幸せが自分の意思で帰ってきたみたい。
「また朝からグータラしちゃって」と金色に耀く声が私に向けて発せられた。
「今日は休日だもの。別にいいでしょ?」私は今すぐにでも抱き着きたい衝動を抑えて、強い鼓動を悟られないようにして、彼女の方を見ないままに言った。
「今日こそは続き書くから来てほしい〜って言うから一式持ってきたのにー。。。」少し機嫌を悪くしたような顔をしていきなり私の頬をつねってきた。
やだ何超痛い。表情筋が硬いということかしら。いやマジで痛い。
「ごえんなあいっっっ」涙目の訴えも虚しく、しばらくグルグルされた。涙を拭き頬をさすりながら改めて彼女の身体を一瞥した。
うん、とても可愛い!!今日も綺麗だ!!
「声に出てるのはわざとなのかしらぁ?」耳の先を赤くしながらもいかにも怒りマークが付いていそうな彼女は言った。
「おっと失敬…でも、本当に今日も素敵よ?」とキスをした。
「っっ………早く着替えてよどこも出かけられないじゃない」と不意に言う彼女。
「え?だって今日は続編書くって言っtttmtmっっっ」………………………
………思考が停止するほどの長いキス。こうなってしまったら私に主導権はなくて、ゆっくりと目線をあげると橙色の瞳に射貫かれて体まで動かせない。
「今日は休日、なんでしょ?早く早く!」意地悪く微笑んで仕事部屋を出ていく彼女。
ーーーーー後ろ姿を見つめるだけで、胸が跳ねる。
目と目が合うだけで、雷に撃たれる。
私の目の前には今日も金色の花が咲いている。ーーーーー
どうやら暖かい春の陽気にあてられて、心も体もふわふわしているみたいだ。
「そうね…」と私もようやく活動を開始する。
「顔赤いけど大丈夫?」と悪い顔の彼女が聞いてくる。
……なんて返してやろうか。。。。
ーーー刹那。考える前に動いていた。身体はどうしたらいいか覚えていた。
三度目にして、最長最深のキス。
ーーー私は何て今日も幸せなのだろう……時が、世界が止まったように錯覚するこの瞬間すらもどかしくて、やめられない………
ーーー「遅くなったけど…………おはよう、そして今日も……
……愛してるわ、雷華。」
ーーーーー雷華。雷鳴轟き咲いた華。それが、それが私の愛する人の名前。
ーーー「私も愛してるよ、言葉。」
これは、私が日本に来るきっかけの話でも、
小説家になるきっかけの話でも、
雷華との出会いを回想する話でもない。
私は、ただ雷華が好きっていう、そういうお話。
皆さんは出逢った事がありますか?
雷に撃たれた事、ありますか?
さてさて、後日談は後日談なので本編はまだ始まりません。
イチャついてばかりのお二人ですが、後日談の前日談となる本編も、本編の前日談も、いつか言葉が語ってくれることを願ってまたいつの日か。おやすみなさい。