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8「ドラゴン討伐なのです」

 私は剣を1本引き抜き、逆手に構える。オフェンシヴも盾と槍を構える。毎回思うけれども、よく持てるわね。くっそデカいわよあれ。


「んじゃ、チャーチルさんはそこで待機しといて」

「ヒヒヒッ、死んだら骨は拾いますよ……ヒヒヒッ」


 さーて、狩りの時間よー。

 フロストドラゴンは青い鱗が特徴的な、四足歩行のドラゴンである。全身に白い冷気を纏わせたこいつは、10メートル離れ、サラマンダーの革鎧を着ているというのに、寒さを感じる。チャーチルなんかは50メートル離れた所に止めてあるというのに、馬車の中でブルブル震えてたくらいだ。

 ……だというのにネクロと博士はなんでそんな元気なのかねー。

 特にネクロは、博士と違い保温魔法なんてものを持っていないというのに。


《足》

「りょ、博士とネクロは引き付けて」

「りょうかーい♪」

「了解ですよー……」


 言葉短に確認を済ませると、私とオフェンシヴは同時に地面を蹴る。

 近付くにつれ気温は下がり、鳥肌が立つ。サラマンダーの革鎧を着ててこれなのだから、オフェンシヴの方は想像もつかないくらい寒いだろう。

 取り敢えずフロストドラゴンの足下で一旦私とオフェンシヴは足を止め、私は市販の剣を、オフェンシヴはその大きな槍をフロストドラゴンの前足に突き刺し、地面に固定する。

 雄叫びが喧しいけど気にしない。

 こっちに向けて大きな顎を開き、口元に冷気の塊を集めてるけど問題ない。


《博士、ネクロ》

「はいさー♪」

「ヒヒヒッヒヒヒハハハハハ」


 ネクロの鉄線がフロストドラゴンの顎を、鱗が砕け血がにじみ出る程の強さで縛り、そこに博士が、魔法で作り出した氷の槍で串焼きのように固定。

 うわあ、痛そう。そして流れ出る血が、ただでさえ凍っている地面に、過冷却水みたいに真っ赤な氷の山を作る。あれ浴びたら死ぬだわね。

 つか、固定されてない後ろ足がバッタバッタ暴れてるの、ヤバイわ。凍った地面がビュンビュン遠くへ飛んで……あー、馬車の前に落ちた。大丈夫かな、チャーチル。


《……早く解体せねば、あの貴族死ぬのではないか?》

「そん時はそん時って事で、いいんじゃないかな姫様?」

「死んだら利用出来ますねー……その際は依頼失敗として、お金渡さなくていいですよー」

「人命優先でお願いね、2人とも」


 私のチーム、まともなのが2人しかいないってどうなのよ。いや、実際強いんだけどね。有能なんだけどね?

 ……何故かしら、私の背中に未だ死神がいる気配がするわ。


「よーし、んじゃ仕上げ!」


 ネクロがフロストドラゴンの後ろに回り込み、鉄線でフロストドラゴンの後ろ足を縛り付け、思い切り後方へ引っ張る。

 するとビタン! とフロストドラゴンは地面に、自重で叩き付けられた。あら、衝撃で私の剣が壊れちゃった……まあいいや。

 私は剣を1本オフェンシヴに投げ渡してから、目前に落ちてきたフロストドラゴンの眼窩に、オフェンシヴと同時に突き刺した。

 過冷却水のように冷たい血が飛び散り、フロストドラゴンが声にならない悲鳴をあげる。可哀想だけれども、殺さなきゃ人に迷惑がかかるし、殺せば私の支持率上がるから仕方ないの。

 つか手がくっそ痛い。よくこれで壊死したりしないわね私の腕。

 そのまま剣を脳ミソに突き立てるまで剣を押し込む。私の腕が、刺すような寒さで痛みが走る。

 あーくっそ冷たい、なにこれ。本当に生きているのかしらこいつ。


《……終わったな》

「流石に疲れたー……」


 流石に疲れたので座ってしまう私と、荘厳と立っているままのオフェンシヴ。そういえば、こいつが疲れてへばってる所見たことないなー。


「ネクロー、チャーチル見てきてー」

「はいはーい」


 疲れたし姫だから、チャーチルの様子をネクロに見てきてもらえるよう頼む。たまにはいいよね、姫だから。

 ……ドラゴンとか狩ってるけど、姫だから! 勇ましいとか言われてるけど、姫だから! 女の子だから!


「……あっちゃー」

「どうしたのネクロ」

「……気絶してるよ、小便漏らして」


 ……帰りは徒歩にするか!

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