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婚約破棄され過ぎて心が折れそうです  作者: プラン9


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63「保健室で体よく補習をサボりたいのです」

 補習自体は、ノートも書き終えているし、歴史以外は大体頭の中に入っているからなんとでもなる。忘れている箇所も、問題さえ見ればきっと思い出せるだろう。覚えていないというのは、なにを覚えていないのかを思い出せないもんだから気にしても仕方がないのだ。

 ただまあ、時間が空いているなら他のも進めておけと、教材山積みにされたのは計算外だったわね。畜生楽できると思ったのに。

 ついでにアリデレスのも終わらせなけりゃならないってのも。予想はしていたけれど思った以上にこの娘書いてなかったのよね。食べたい料理のメニューがずらりと書いていたけど。

 お蔭でアリデレスの分まで書くことになるなんて……ヤンナルネ。

 ふと気分転換がてらに、ベッドに寝ているアヘンの顔を見る。

 黙って眠っていたら、誰もが振り向くような整った顔をしてんのよねー。目の隈さえ無ければ。

 勿体ない逸材だわ本当。


「……黙ってたら綺麗よねぇ、アヘンは」

「そうですわねぇ……疲れましたので交代してくれません?」

「私魔法使えない」


 最近はちゃんと食べるようになって、まるで孤児のような細い腕も程々の良い感じの肉付きになったし、頬もちゃんと健康的にふっくらしているし。

 私と我が友人の努力の成果、と言えるわねこれ。


「……ん。あれ、ここ、どこ?」

「おはようアヘン、調子はどう?」

「大丈夫、少し頭痛がするだけ」


 ……なんつうか、ダウナー気味なアヘンってあれね。私とは違うベクトルでイケメンね。自画自賛ちゃう、自画自賛なら美人て言うよあたいは。

 取りあえず私が用意しておいた生理食塩水を渡す。


「……なんで手を放さないの」

「零れるからよ」


 今、アヘンの手はすんごい震えている。手を放したら折角作った食塩水がびちゃびちゃに零れてしまうわ。

 いや、作ったと言っても常温の水に塩をちょっと入れただけなんだけどね。


「妙ですわ、どうしても百合というよりは薔薇に見えてしまいますわね」

「アリデレスそれどういう意味?」

「なんでお2人とも女に生まれてしまいましたの? ってことですわ」


 私はまあ自覚あるからなんとも言えないけど、アヘンはどうもそうではないようで、首を傾げている。きっと、アリデレスが言っている意味が分かっていないんだろう。

 というかこの世界、百合とか薔薇とかいう単語あったんだ。おねえさんびっくりだ。確か薔薇は元々薔薇族というゲイ雑誌が由来で、百合は薔薇族の誰かか忘れたけど、編集長の人が用いたんだっけか。

 勿論この世界では薔薇族なんて本無いのに、言葉はあるんだ……他の転生者的なあれがいたのかしら?

 もし仮にいたとしたら、お友達になりたいわね……話の合う人って中々いないのよ。

 アヘンに水を飲ませているうちに、チャイムが鳴った。


「これで授業も終わりかー。アリデレスさん、あと何日残ってたっけ?」

「ワタクシは明後日で終わりですが……確かバルカ様はあと3日くらい残っていたような気がしますわ」

「私より2日少ない、金髪の言うとおり」

「きっ、金髪……ワタクシはアリス・アリデレスですわ! アリスでもアリデレスでもよろしいですが、金髪呼びは許しませんわよ!!」


 ほぼ初対面に近い者同士なのに仲がよろしいこって。

 アヘンは少し首を傾げ、目が何故か金髪縦ロールの方へ、何かを追うように視線を向ける。多分アヘンの目には、アリデレスの髪に毛虫みたいなものが付いているように見えているんだろうなー。

 やだっ、考えただけで寒気がしてきた。


「了解した。けむ……アリデレスさん」

「……今何と言いかけました?」

「……はて」


 アヘンちゃんこんな性格だったかしら? 昔はもっとおどおどして、敬語で……いやおどおどは今もしているか。


「アヘン、変わったわね」

「……馴れ馴れしかった?」

「いんや、今の方が可愛いから好きよ私は」


 私がそう言うと、アヘンが突然そっぽを向いた。耳まで真っ赤にしてまあ……なんで私、女の子相手にフラグを立てているのかしら。男のフラグが欲しいわ。暗殺フラグはもう飽きた。

 んでアリデレス、なにその、信じられないもんを見るような顔は。


「……口説いてませんわよね?」

「口説いてないわね」


 いや、私としては普通にしている筈なんだけどね。前世と同じような感覚でやっていただけだからね。まあこれも学生時代に培っただけで、社会人になってからは……涙が出てくるから思い出すのはやめよう。

 とにかく、私は決して口説いていない。男を口説くかもしれないけれども、女を口説く趣味は無い!


「バルカ様って、まるで王子様みたいですわよね。見た目は」

「見た目はってどういう意味よあんた」

「中身は正直荒くれ者ですわ」


 うぐっ、言い返せない……。思い当たる節がありすぎる。

 そりゃ、多少荒っぽいわよ私も。だって王女である前に姫騎士で冒険者なんだし。でも荒くれ者って、乙女に向かって荒くれ者って。


「というか、アリデレスさんがそれを言えるのかしら? 来る者拒まずのミハル教の教会に立ち入り禁止になったア・リ・デ・レ・ス・さ・ん?」

「あれはケツァルコルトニーが悪いんですの、ワタクシは全く悪くありませんわ」


 すげぇよこの女全く悪びれねえ。私より悪役令嬢の素質あるよ。いや私令嬢じゃなくて王女だけど。

 ……待てよ、アリデレス? なんか知っているような……何かしらこの、歯にトウモロコシの筋が詰まったような感覚は。


「どうしましたの?」

「いんや、なんでもない」

「……水」

「アリデレスさん、お願い」


 そういえば、今の状態のアヘンもどっかで見たような気がするのよね……。

 まあ、相当昔の記憶だから覚えていないのも無理は無いけど。


「そうだ。お昼はどうしましょうか。バルカ様、ご予定は?」

「んー……アヘン、予定はあるかしら?」

「無い」

「ならあそこ行きましょうか」


 なら、もう行く店は決まったわね。午後からは自由だし、何所でなにを食べても許される。

 久しぶりに安くてパンチのある味を楽しみたいし、夏だしちょうど良いわ。


「あのお店行くわよ」


 私のその言葉に、アリデレスは微妙な表情をした。まあミハル教会の近くを通るからその反応も当然か。でも私は曲げないわよ。私がいっぱい食べたいのは勿論だし、アヘンにもいっぱい食べさせなきゃいけないからね。

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