62「こまめに水飲めよ、なのです」
子供の頃、ずっと同じような、楽しい生活が続くと思っていた。
私もその例に漏れず、子供の頃は木登りや虫取りをしたり、線路歩いて死体を見に行ったり、B級映画にハマったり、FPSにハマったり、ちょっと一般的では無いコアでマイナーな漫画にハマったり……そういえば全部1人でやってたな私。あらやだ涙が。
学校で話すけどそれ以外だと全く関わらないような友達ばっかだったなあ……そう考えたら、今の世界は恵まれている気がする。婚約者寝取られまくってるけど。
あら、窓から見えるわ白い小鳥が……あらやだ猛禽類に食べられた。
「バルカ様、手が止まっておりましてよ」
「覚えているものを一々書くのって、不毛だと思わない?」
「気持ちは分かりますが、しっかりとしてくださいまし」
そうは言っても眠くなるのよねー、この授業。んでもってこの時間帯。
この学園はどうも特殊なようで、補習を手っ取り早く終わらせる為に4時間の授業がある。なんでも、貴族の令嬢は嫁ぐと自由に遊べる時間が無くなるので、思い出を作る時間を少しでも増やすために、補習を早く終わらせるようにしているらしい。
とはいっても私の場合出席が足りてないだけなんだけどね。学力は決して劣っている訳じゃないし。むしろ上位だし。
んでもって肝心の授業も、知っていることばかりだし、歴史なんか宗教関係の進化論とかそういうのだし。
要するに、すんごいやる気が出ない。そりゃあもうびっくりするくらい。
というか神様とかいないっつーの、いたとしてもとっくに寿命でおだぶつしてる気がするし。永遠なんてものは存在しないのよ全く……。
というか、
「なんでラストは補習出てないのよ……」
「枕ではありませんの?」
……すんごいあり得る。というか、むしろ真面目に補習受けているよりそっちの方が納得出来る。
さて、何故私が補習を受けているのかというと、まあ単純に、出席日数が足りてなかったせいなのだ。というのも、日々食べ歩き旅や買い食い、料理を作るための食材を買ったりと色々とやっていたら、いつの間にか……ね。
アリデレスは、授業を休んでまで反省文を書いていたのと、ケツァルコルトニーへのストーキング、ついでに失恋による軽い鬱症状の引きこもりによってだ。
まあそれも、外からの香辛料たっぷりお肉攻撃で引き出したけどね。食欲に勝てる人間なんてそうそういないわよ。
ちなみに私とアリデレス以外には、アヘンだけ。貴族って割と真面目に過ごしているのね。
「アリデレスさんや、ハンバーグ作ってあげるから代わりにノート書いて-」
「嫌ですわバルカ様、それでは自分のためにならないではありませんか」
「チーズも付けよう。お肉の層を切ったらとろーりチーズが出てくる感じの」
「……自分の力でやらなければ、ためになりませんわ。なのでおっ、お断り、しますわ。お断り……」
うわあすんごい未練がましそう。というか、私の料理「太りますわ!」とか言ってなかったっけ。それでも全部食べていたけれど。
あっ、書き終わった。前世の学生時代に培った自動書記能力、会得していて良かった! 欠点は読み直すとかなり読みにくいってことだけど!
「そういえば、バルカ様の国では冒険者、というものが存在するんですわよね?」
「へっ、ああうんそうだけど。どしたのいきなり」
「いえ、もう……家を出て冒険者になろうかと思いまして。どうせこのまま私の伴侶も出てこないでしょうし、いっそのこと夢とロマンを追い求めようかと。あと、卒業出来なかったら勘当されそうですわ……」
……そういえば普通に実力はあるのよね。精霊魔法無しでも盗賊としてならやっていけるくらいの技術持っているし。
勘当されたらスカウトするのもありね、暗殺部隊として。
「……バルカ様、なんだか物騒なことを考えてません?」
「気のせいじゃない?」
なんで見透かされたんだろう、怖い。
そして私の後ろでブツブツ何か呟いているアヘン、怖い。
「ワタクシの実力って、バルカ様の大陸でも通用します?」
「あー、まあ、それなりには行くと思うよ」
まあ、それなり止まりだろうけども。
いや、よくよく考えてみると私の土地ってラストダンジョンな訳で、そこで通用するってことはもう勇者的なあれな訳で。というかそこでもそこそこ通用するって時点でかなり筋は良いのよねアリデレスは。
そんな会話をアリデレスとしていると、突然後ろからバタンと誰かが倒れる音。振り返ってみてみると、アヘンが目を回して倒れていた。
「あついです……」
「ちょっ、アヘンさん!? 大丈夫ですの!?」
太陽の光は窓から差し込んでいる。そしてこの世界の技術ではクーラーも扇風機も存在せず、んでもって保健室は今の時間すんごい暑い筈。
廊下ならちょっとは涼しいわね。熱失神は確か、涼しいところに寝かせて、衣服を緩めて寝かせなきゃいけなかったかしら。
「熱中症ね。先生、生理食塩水あります?」
「保健室に行かないと無いな。バルカ、頼めるか?」
保健室に行かないと無いか。しかし保健室は暑い状態となっている筈。
仕方ない。
「アリデレスさん、涼しい風出すような魔法ある? あるならアヘンに浴びせ続けて」
「はっ、はい。分かりましたわ」
うわっ、背負ってみたらすんごいぐっしょりしてる! そりゃこんな夏場に厚着してたらそうなるわ!
服を緩めようにも、どうしようもない厚着&重ね着だからどうしようもない。流石に男性教師の前で脱がせる訳にもいかない。
「アリデレスさん、急ぐよ!」




