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2「今流行りの壁ドンって奴です」

 さて、私は転生者である。前世では弓×矢や銃×銃弾×弾倉の三角関係で萌え、リアリティー追究する為にそれらの腕を極め、実戦レベルまで昇華させた愛すべき馬鹿である。自分で言っちゃってるけど、仕方ないよね。事実、興味のあるもの以外は全くだったし。数学とかマジぃみわかんない。。。リスカしょ。。。

 更にどういう訳か度しがたい厨二秒になって、架空戦記やらテロ行為に興味持って、ああ、あたしって本当痛い娘。しかもそれらにハマったのが20歳の頃の話、痛いってレベルじゃないですだわよ。

 まあ、前世の記憶のおかげで、この国モンテクルズの軍事力はトップを誇るようになったんだけどさ。読んでてよかったドリフ○ーズ。

 さて、今私は、ギルドからの報告書を読んでいる。近場に出没した強力な魔物がズラーッと並んでいる。

 私は眉間を揉みほぐしてから、指を鳴らす。


「セバス」

「フラジルです」


 赤い髪を後ろで束ねた女執事、フラジルは、私が今まさに頼もうとしていたココアを置いてくれた。

 この執事、実に手際がいい。彼女の腕に感心しながらココアを一口。

 舌の上に広がる芳醇な香り、頭を覚醒させる苦み。

 ……コーヒーだこれ。


「フラジル、これ」

「お許しくださいお姫様、ココアはその……グラート様が、その、おホモ達とお尻の中に」

「ごめんもう言わなくていいわ」


 私の隣の部屋から「ああ^~気持ちいいんじゃ~」という気持ち悪い声と、ブピピと嫌な糞の音。

 ああ、なんで私の弟がこんな変態に……あれかしら、姉が変態だと下の子も変態になるのかしら。


 ……ああ、そうか。私が変に前世の記憶持ってしまったせいか。

 実はこの世界、私の前世ではゲームの世界だったのだ! 私が前世の記憶に目覚めた際に真っ先に思ったのは(これがもしかして、巷で噂の乙女ゲー転移って奴!? 悪役令嬢って奴!?)と私は興奮していた。

 ああ、確かに。悪役令嬢ではあった。いや姫を令嬢と言っていいか微妙な所だけども。まあ詳しくないから、大体同じ感じのニュアンスで、ね? 分かるだろぉ、同じ人間じゃないか。

 まあそれは置いといて、私が記憶を完璧に取り戻した際に、ある問題が浮上した。その問題なのは……悪役令嬢は悪役令嬢でも、RPGゲームに出てくる方だったのだ。神様、悪役令嬢だけども……いや姫だけども……。

 そして、そのゲームで私の立ち位置と言えば、まああれよ。民を家畜と呼んで、意味もなく襲うような奴だったのよ。最終的に死ぬんだけど、それでも主人公の魂も道連れっていうね。

 で、まあ、私はそんな目に会うのは、嫌だから色々やった結果


「なーんでこうなっちゃったんだろう」

「ハイ、私に何か問題でも?」

「セバスには問題ないわ」

「フラジルです」


 しっかし無表情ねーこの娘。何考えてるのかしら?

 多分なにも考えてないわね。この娘執事のくせに馬鹿だし。税の話してたのに「そうですか、今日の後夕飯はカレーです」って言うし。多分食べることしか考えてないわこの娘。酒! 飯! そして寝る! こいつが考えているのは9割これで、残る1割が私への忠誠だと思う。流石に、金ではないと思いたい。少しくらい……あるわよね?


「もっと! もっと深く!」

「ワン、ご主人様! ワンワンっ!」


 ああ、隣から肉のぶつかる音と弟と8人目の許嫁の声が……。

 ゲームじゃ我が弟は冷酷で残虐な策略家だったのに、今じゃ淫乱雌犬に。何があの子を変えたのかしら。私が買ったBL春画のせいねごめんなさい。スカトロプレイするようなクソマニアックなもの買ってしまってごめんなさい。興味本位だったの、まさか貴方が見るとは思わなかったの。読むとは思わなかったの。


「胸にかけて! 胸に!」

「るっさい!!」


 ドゴォッ! と、馬鹿みたいに大きな音を立てる割りに威力のない蹴りを壁にぶちこむと、途端に静かになった。

 うん、困った時はこれに限る。壁ドン、前世じゃ隣でアベックがパコッてたらこれか般若心経、若しくはキチガイレコード垂れ流しだったわ。楽しかったわーあれは。

 あら、目から汗が。


「……ふう。すまないけどフラジル、ココアを買ってきて……」


 あら、音でびっくりしたのか気を失っているわね。

 うふふ、こんな所で寝たら服が汚れるわよ。全く、仕方ないわね。

 ……なんで動かないのかしら。なんで胸が、胸が上下してないのかしら?

 いっ、一応、脈を図ってみましょうか。いやまさか、これまでも死んだ事はあったけど、これで死ぬとは思えないからよ。まさか死ぬなんてことは──


「しっ、死んでる……」

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