17「首狩りぞ! 狩り得ぞ! なのです!!」
敵が2人、さてまずどう動きますかね。
「まあ、女装子だろうがなんだろうが構わねぇ、穴があるんだからよぉ!!」
「……あー、俺は遠慮しとく。手伝ってやるから酒奢れ 」
あららー愚直に一直線、駄目よーそんなんじゃ。
「まずは1人」
相手の頭を両手で固定し、身体をねじる。これで首の骨をこきっとね。
白目向いて倒れる海賊から剣を拝借し、そのままズバッと首を切り落とす。別に斬る必要ないけれど、なんとなくね。
取り得じゃあーっ!! あてくしを男扱いする奴等の首取り得じゃあーっ!!
変なテンションのまま私は走る、走る、走る! 敵が待つ場所へ、敵の足音へ!
「なっ、なんだてめっ」
袈裟に切って! そして首を蹴飛ばして!
「せいやっさっ!」
「あだっ!? なっ、なんだこ……ヒィッ!?」
怯んだ相手の頭に回し蹴り! ばきょっという音を立てたかと思うと、すぐにだらりと、空気が中途半端に抜けた風船のように垂れる。
うーん、グロい!自分でやっておいてなんだけどかなりエグいわねこれ。
「よーし、次ィ!!」
あっはは、あたしを殺してごらんよ! という変なテンションのまま適当にぶらぶらと走って見るも、人の姿が無い。
「……なるほどねえ」
人質の位置は……ふむ、中央甲板ね。ここからなら、飛び降りればいけるかしら。
高さは、まあ、フロストドラゴンに比べれば低いからいけるわね。
見張りもまあ、数人。他にも色々と連れてこられているから、もっといそうね。
つーか見張りはどうした。
「……あら、あらあら?」
部屋の隅で固められている黒いあれ、兵士かしら?
燃やされたみたいに真っ黒だけれど、あそこまで焦がすにはかなりの時間がかかるわよね……。他のところに火が移った様子はないし。人体発火現象? でもあれは希に起きるものだし、あの数が一度になるとは到底思えないわね……。
となると考えられるのは……魔法? そりゃ、ドラゴンとかいっぱいいるけどさ。うちでも軍に導入しているけどさ、でも魔法って……。てっきり補助的なのばかりなのかと。
この世界、モン○ン的なの想像していたんだけれど……つか、どうしようかしら。魔法使い相手と戦ったことなんてないですだわよ私。
……よくよく考えれば、私の大陸の奴等全員脳筋だったわね。
「……まっ、なんとかなるわよね」
あら、海賊の1人が女子に手を出そうとしてるわね。このタイミングで行けば、印象は多少良いかしら?
まあ、きっと大丈夫よね。男の子からの評価以外は。
よっ、と飛び降り、地面に足が付いた瞬間にドンッ、と走る。
ふはははは、これぞバルカ式電撃戦よ! 相手が状況を理解する暇も与えん!! 士気さえ削れば後はテンションでごり押すだけよ!
「まずは1人ィ!!」
首をばさりと切り落とすと、生徒達から悲鳴があがった。
教師まで悲鳴あげるとか、それでも玉付いてんのかしら。
「怖いんなら目ぇ閉じときなさい!!」
ったく、女だけならともかく男も悲鳴あげるかねぇ。
2人いっぺんに首を切り落としながら、私はため息を付く。
しかし……魔法使いはここにはいないのかしら?
そう思っていると、突然上から稲妻が。
「っと、危なっ!?」
まあ、避けられるんだけれど。このくらいなら。
「チッ、化け物が」
上空から声……化け物って、それ酷くない?