15「弟のお尻の中に可愛いスパームが注入されているらしいなのです」
2か月なんて経つのは速いものね、と私は船の上で思うわ。
ギルドのチームメンバーと別れ……あいつら、涙とか全く無かったわね。博士に弁当貰ったくらい。
あとやっぱ、博士とオフェンシヴ付き合ってやがった。何が「結婚式に……呼べませんねぇ」だ畜生! 私ばかり何でこんな……なんで、なんでいつもいつも、みんな私を置いていくのよ!?
あっ、ちなみに入学届けは、お父様が既に済ませておいてくださってました。流石、内政に限って言えば右に出る者無しと云われるくらいですわね。ありがたやありがたや。
……しっかしまあ、こんな大海原を見てると叫びたくなるわね。
回りにゃ誰もいないし、チャンスは今ね!
「私もモテたいわよー!! 男ほしいわよー!!」
思わず甲板で心のうちを叫ぶ私、多分この姿見られたら更に男寄り付かなくなるだろうけれど、知るか!
どうせ女子にばかり言い寄られるなのよさ! 神様、どうして私をこんなイケメンにしたのですか? 私は宝塚にも全く興味ないというのに……。
「どうしたんですか、バルカ様?」
「……あっ、あら、アリーシュ」
もしかして、今の聞かれてた?
「大丈夫です! 例えバルカ様に婚約者が出来なくても、私がお嫁さんになります!」
「ちょっと待たないか」
どうしてそうレズい方へ持っていこうとするのよみんな。
……何だろう、嫌な予感がするわ。学園でも落ちるの、男じゃなくて女な気がしてきたわ。
あらやだある意味逆ハーレム、ホモに囲まれる男主人公ってある意味逆ハーよねとか笑っていた過去の自分を殴り飛ばしたくなってきたわ。
「そういえば、ラストは何処に?」
確か同じ船に乗っていた筈だけれど……。
「ラスト様でしたら、先程船員達と何処かへ……」
「ここでもかあいつ」
あんの淫乱ビッチめ。そりゃ出航前から「船員……溜まっている……じゅるり」とか言っていたけれどもさ!
やっぱりか、やっぱりやったかあいつ! そりゃまだエイズとか確認れてないけれども、それでも普通やる!? やるんだろうなぁ、あいつだから。
……よく考えたら原因私だった。ごめんなさいお母様、バルカはラストを止められそうにありません。
「まあいいわ。ところでアリーシュ、私に何のよう?」
「用事なんて、私がバルカ様に会いたくなった以外ありません! もっ、もしかして、ご迷惑でしたでしょうか……?」
指をもじもじとさせ、上目遣いで……ああ、もう、私男に生まれたかったわ。
男なら、素直に喜べるんでしょうけれども、やっぱ女から見たらあざといだけね。
いや、私に向けられているからちょっとはらこう、クるけれども。
「いいえ、大丈夫よアリーシュ。そこまで言ってもらえるなんて嬉しいわ」
ああ、百合い百合い。でも私が求めているのは男なの、だから貴女じゃ需要は満たせないわ。
そんな俗物的なことを考えながらアリーシュの頭を撫でていると、不意に船に走る悲鳴。
船の横側を見てみると、いつの間にか黒い海賊船が。そして聞こえてくる野太い声と学生共の悲鳴。
「……えっ」
こんなイベント、ゲームに出てないよぉ……。