第七十話 ティアナ王都へ
「え?ティアナが王都に?」
週末実家に帰り、書斎にいたお父様にご挨拶に行くと、開口一番このニュースを聞かされた。
「そうなんだ。王都の教会本部の祭典に呼ばれたらしく、出来ればお前に会って帰りたいと連絡があってな」
机越しに渡された、開封された手紙を開く。
そこには、来週王都に来ること、出来れば先日の寄付のお礼を申し上げたくアマーリエ様にお会い出来たら幸いです、と書かれている。
「義理堅いわねぇ、ティアナは。
でも、どうせなら泊まってもらいたいわ。王都の楽しいところ、いっぱい案内したいし。
ねぇ、お父様。よろしいでしょう?」
私の言葉に、お父様は笑って頷いた。
「ああ、ではそう返事をしておこう」
「ティアナが来たら、ヤン様のお店に連れて行こうかしら。いいお店ですものね?」
うっ、ごほっ、ごほっ!
お父様がむせた。
お父様と話した後、ヤン様のお店に行って甘いお酒を何種類か注文し、次の週末までに男爵家へ運んでもらうよう依頼する。そして、来週ティアナを連れて来るための予約をした。
そして週明け。学校で会ったローミに、ティアナが王都へ来る話をした。
「そんなわけで、彼女には男爵家に泊まってもらおうと思っているの。ローミも来ない?彼女に会いたがっていたでしょ」
今いる教室は黒板を正面に、階段のように細長い机が並んでいる。席は自由なので、私とローミは並んで座っていた。
彼女はキラリと目を光らせ、一言。
「行くわ」
その即答を聞いて、私はちょっとだけ不安になる。
……ローミ、ティアナに会ったら詰問なんてしないでしょうね?
授業後は、ローミとサロンへ行った。
今日は王子様がいらっしゃるので、王子様の特別室にお邪魔している。
「アマーリエ、先日はありがとう」
「カイ様」
部屋に入ってソファに座ると、先に来ていたカイ様がやって来た。
彼は少し微笑み、嬉しそうに話す。
「あれからゾフィは、相変わらずわがままも言うけど、悪いと思った時は素直に謝ることができるようになったよ。君とローゼマリーにおかげだ。本当にありがとう」
おお、順調に愛されるツンデレができているようですね。
私はにっこり笑って、
「私は何もしていません。ゾフィは頭のいい子ですもの。自分でどう振る舞うべきか、気が付いたのですわ」
そう答えた。
このまま悪役令嬢なんかにならずに、平穏無事に過ごしてもらいたいものだ。
カイ様はちょっと迷ってから切り出した。
「実は……。ゾフィが君の事をもっと知りたい、週末私的に開く夜会にぜひ出席して欲しいと言っているのだけど」
週末?
私はローミと顔を見合わせた。
「カイ様、申し訳ございません。
実はこの週末は、男爵領から友人が来ることになっていまして……。
あ、そうだ!彼女は来年士官学校入学なので、ゾフィと同級生になる予定なのです。ゾフィもうちに来たらいいわ。ローゼマリーも泊まりで遊びに来るんですよ」
私は思いつきを口にした。
ローミも頷く。
「それはいい考えね。
二人とも面識ができれば、来年からの士官学校でも仲良く出来るでしょう」
私たちの言葉に、カイ様は苦笑した。
「ゾフィは人見知りなところがあるから……。うまくその子になじめるかな?迷惑をかけなければいいんだけど」
ローゼマリーは不敵に笑った。
「大丈夫ですわ、カイ様。わたくしが調教しますから」
調教って……。
彼女の不穏な言葉に、カイ様は目を白黒させ。私は彼女の本気を感じとり、乾いた笑いをもらすしかなかった。




