第三十三話 召喚状?
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久しぶりに侯爵家から手紙が届いた。
ヤン様が発たれた次の日に。
なんか、手紙を持ってきたゲルダがげっそりやつれていたのはどういうことだろう?
逆にお父様は朝からハイテンションだ。昨日は部屋に籠っていたのに……。
私は首を捻りながら、早速手紙を開けた。
ローミの綺麗な字で書かれた文面に、目を通す。
「そろそろお勉強の時間も終わりかと思い、お手紙出しました。
二人の仲がどう進展したか、お話聞きたいわ。
いいわよね?友達なんだし、恋バナ聞きたい!
だから今日うちに来ない?王子様も遊びにいらっしゃるの。
王子様にマーレもお誘いしたいと言ったら、二つ返事で許してくださったわ。
だから来るのよ?
ローゼマリー・エーレンフリート」
……相変わらず、招待状と言うよりは召喚状?
ため息一つつくと、私はゲルダを呼んで外出の準備をお願いした。
王子様もいるって……。堅苦しい場になりそうだなぁ。
私の予想は悪い意味で間違っていた。
なんか、王子様がものすごく視線を向けてくるのが分かるんですけど……。
私がいたたまれない思いをしているのにもかかわらず、ローミは上機嫌で話しかけてくる。
彼女の髪は、肩を過ぎるあたりで切りそろえられ、毛先はゆるく巻かれていた。
「ねえ、マーレ?
で、ヤン様とはどうなの?お付き合いするとか、そんな話にはならなかったの?」
「いえ、そんなお話には……。年も違いますし、終始お兄様と言う感じでした」
「ふっ、そなたとヤンとやらは6つも年が変わらぬのだろう?よい、私がヤンとやらに話をつけてやろう。爵位を授けてもいい。だから結婚を……」
「ゴットハルト様?」
なんかどんどん進んでいく話に、ローミが待ったをかけた。
どこかわざとらしい満面の笑顔を浮かべ、彼女は王子様に言った。
「わたくし達、まだ士官学校に通ってもいませんのよ?
結婚なんて士官学校を卒業して、しばらく世間を見てからでよいと思います。
わたくし、マーレと行ってみたい洞窟迷路もいくつかありますの。卒業したら、他国のにも挑戦したいし。ねぇ、マーレ?その時までには、あなたもあの方のお守りがいらないくらい、強くなっていますわよね?」
ローミ、根に持ってるなぁ……。
王子様は憮然と紅茶を飲んでいる。
「ぷっ……」
小さく噴き出す声が聞こえた。
クルト様だ。
今日は王子様ともう一人、クルト・コルネリウス公爵子息が来ている。
「クルト?」
王子様が眉を顰め、彼をとがめた。
クルト様は肩をすくめた。
「いや、失礼しました。
ねえ、アマーリエ。オレたち、二人の邪魔しているみたい。
ちょっと庭を散歩してこようか」
彼は席を立つと、私の後ろに立ち椅子の背を持った。
私が腰を浮かすと、後ろに引いてくれる。
なんかウェイターさんみたい。手馴れている。
「ちょっと、マーレ?」
「クルト?」
いぶかしげな二人に、クルト様は空色の目を細めて手を振った。
「大丈夫、手なんか出さないから」




