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第二十九話 魔剣

しばらくすると、彼はさやに入った何本かのショートソードを持ってきた。


カウンターの上一つづつ並べていく。


「これが今店にある「実用的」なショートソードです。

まずこれ。赤い魔宝石に火魔法をかけると、太刀筋に炎が走ります。

そしてこちらは水魔法をかけると、太刀筋が凍る。スライムとか皮膚の堅い獲物にはこちらが有効でしょう。

これは土魔法で強度が増して、折れにくく切れ味がアップするタイプですね。

お持ちの魔法によって、どの剣が使えるか決まりますね」


商人言葉(関西弁)が全く鳴りをひそめてしまっている。あれは高いものを調子よく売りつけるための、雰囲気作りのために使っていただけなのかもしれない。


私は4大魔法がどれも少しづつ使えるタイプ。だからどれでも選べるのだけど。


どれがいいかしら……。


ちらりとヤン様に視線を走らせる。


彼は一本づつ手に取り、刃や重さ、重心を調べている。


「さすがに皆いい品ですね。

どれを選んでもいいのですが……この水魔法をお勧めしますね。

凍らせて打撃を与えるとダメージが大きいですし」


私はそれを手に取ってみた。


が女性でも握りやすいように細く作られている。長さもちょうどいい。


他のものも手に取ってみる。


右手と左手に一本づつ持ち、見比べていて思い付いた。


でも、欲を言うならば……。


「カスタマイズは出来ないの?」


ロルフに聞いてみる。


「カスタマイズ?

柄の太さを変えたり、刃を薄くしたり、希望があればできますけど……」

「いや、この魔宝石をふややすの。火・水・風・土、全部つけてほしい」

「えっ!?」


聞いたことのない注文だっただろうか?彼は戸惑っていた。


「私は4大魔法が全部使えるタイプなの。だったら4つ付いていた方がいいし」

「で、でも、魔法が変に干渉してしまうかもしれないですよ?下手すると爆発したり……」

「使ってみてダメなら外すわ。とにかく物理的にできるならつけてみて?」


私はゴリ押しした。


それでも「怪我をしたら責任が」とか躊躇ちゅうちょするロルフに、ヤン様がちゃんと使いこなせるようになるまで自分が監督するから、と説得してくれた。


最後にはしぶしぶ折れて、職人に発注してくれることになった。




「ヤン様、口添えしていただいてありがとうございます」


店を出て、私はヤン様にお礼を言った。彼の後押しがなければ、絶対にあの商人は注文を聞き入れてくれなかっただろう。


ヤン様はにっこり笑って言った。


「いいえ、私もいいアイデアだと思ったのです。

ただし、初めてのこころみです、慎重にあつかわなければなりません。

この剣を使うときは、必ず私が付き添います。約束して下さい、私のいないところでは危険なことはしないと。私がいる限り、あなたを守りますから……。」


真摯な目で私を見つめ、ヤン様は言った。


本当に心配してくださっている……。


私は大きくうなずいた。


「わかりました、ヤン様。

約束しますから……そんな心配そうな顔をしないでください。私はヤン様のおそばにいます」


私も彼の目を見つめた。


すると彼は少し目元を赤らめて、視線を外した。


いや、そんな顔されたら私も照れるじゃないですか……。


会話を思い出し、顔が赤くなるのを感じてうつむいた。


なんか愛の告白っぽくない?


その時、私たちのかたわらに馬車が一台止まった。


何事かと、それをふりあおぐ私。さりげなく私の前に立つヤン様とゲルダ。


「往来で見詰め合って何してるのかしら?」


黒塗りの馬車に金の縁取ふちどりが付いた窓。そのカーテンが開いて、私の見知った顔が現れた。


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