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第二話 驚きの事実

日の光が柔らかに差し込む貴賓室きひんしつに、彼女はいた。


男爵家の面目を保つため、金糸の刺繍ししゅうが全面にほどこされた豪華ごうかなソファが置かれているが、腰掛ける彼女はそれ以上に豪奢ごうしゃであった。

青白い月の色をした銀髪はまさに光を放つよう。ゆるやかに波打たせた髪は腰の下まで届いている。ミルクのように柔らかな白の肌に夜空のような藍色あいいろの瞳。ビスクドールめいた、作り物のような美しさ…


私を見て立ち上がった彼女の髪が、さらりと流れた。閉じた扇を口元にあてて、優雅に微笑んでいる。


上位の貴族に面会した時のマナーとして、スカートをつまんで膝をかがめた。


「お初にお目にかかります、ローゼマリー様。アマーリエ・ベルにございます。高貴なる御身が拙宅せったくにお越しくださった事、身に余る光栄でございます」


「ローゼマリー・エーレンフリートよ。アマーリエ様、堅苦しい挨拶はやめましょう。わたくしたち、2年後には士官学校の同級生なのですもの。入学前にぜひ親交を深めたいと思いまして、参りましたの。さあ、おかけになって」

言葉に従い、ローゼマリー様の正面に座りながら私は前世の記憶を懸命に思い返していた。


やはりどう考えてもおかしい…このライバルとは士官学校で初顔合わせするはずなのだ。いずれかの攻略対象と初顔合わせした後に登場し、「あなた、わたくしを知らないの?エーレンフリート侯爵家のローゼマリーとは私の事よ。たかが男爵令嬢のくせに○○様にお声をかけていただくなど、おこがましい。身の程をわきまえなさいませ」とか言ってくる流れだったはずなのだけど…


「どうかなさいまして、アマーリエ様?」

差し障りのない雑談をしていたのだが少し考え込んでいたようだ。私は不自然ではないように話題を変えた。


「いえ、ところでローゼマリー様は同級生になる者たち全てにお会いになっているんですの?」


私の質問に、ローゼマリー様は沈黙された。社交辞令で顔に張り付いていた微笑みがゆっくり深くなる。目も笑いの形にはなっているが、奥に鋭い光が宿っていた。人形めいた美形のため、すごみすら感じる。


「あの…、ローゼマリー様?」


「ねえ、アマーリエ様。いえ、アマーリエと呼んでもよろしいかしら。わたくしたち、もうお友達ですものね?」


「は、はい。お好きなように…」


「わたくしのことも、ローゼマリーと呼ぶといいわ。お友達に身分は関係ありませんもの。

わたくしはね、アマーリエ。あなたとは敵対したくありませんの。仲良くしていたいのよ?」


なぜ最後疑問形…?それになにやら全身から立ち上るどす黒いものが見えるような気がする…


迫力に、背筋をぞわりと何かがすべる。


「えっ…とあの?つまりどういうことでしょう?」


「お互いを思いあう仲の良いお友達でいましょうということよ。特に殿方との悩みを相談し助け合えるくらいのね?」


 殿方?いきなり何をおっしゃるのか…


「つまり、攻略対象がかぶらないように相談しようと?」

「そう、それが言いたかったのよ!」

口に出した瞬間しまったと思ったが、かぶせるように言われた言葉に度肝を抜かれた。相手も笑みという仮面が外れ、信じられないようなものを見つけたいう素の表情をさらしている。


「なんで攻略対象って言葉がわかるんです?」

「なんで攻略対象なんて言葉知ってるのよ?」


同時に言って、沈黙する。

もしかするとこれは。ひょっとしてひょっとすると…


「あの…、もしかして違う世界の記憶なんかあったりします…?」


「ぐわーっ!やっぱり転生者だったかーっ」

恐る恐る聞いた私、頭を抱えてうなる侯爵令嬢。


あー、ゲルダ。いいの。ほっといて。


いきなり上がった悲鳴とうなり声に驚き扉を開けて駆け込んできた瞬間、頭を抱えてもだえるローゼマリーを見て「うちのお嬢様が侯爵令嬢にどんな失礼をっ!?」って顔でおののくゲルダにそう言おうと思ったが、自分も放心して声が出ませんでした。続いて両親も入ってきて、同じく呆然ぼうぜんとしているし……


全くこの始末、どうつけよう?

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