第二十四話 解散
夕暮れ時の光は、洞窟から出たばかりの目には眩しく、痛かった。
朝日の中この洞窟に入ったのに、今はもうすっかり夕日になっている。
「ああ、外だぁ!」
皆口々に、解放された喜びに沸いた。
「うーん、やっぱり外はいいなぁ」
私は大きく伸びをした。洞窟の中でも伸びができる空間くらいはあったが、やはり気分が違う。縮こまった体と共に心まで弛んでいく感じだ。
「アマーリエ嬢」
呼びかけてきたのがファーナー先生だと気づき、私はあわてて姿勢を正した。
「いえ、そんな畏まらないでください。
……お礼を言おうと思いまして。
あなたのおかげで、閉ざされた扉を開くことができたのです。私一人では成しえなかった……。
ありがとうございました」
深々と頭を下げられ、私はあわててしまう。
「いいえ、先生。私は先生に少し魔力をお貸ししただけです。
誰にもわからなかった隠し扉の存在を暴いたのは先生のご慧眼です。
私たちの方こそ先生にお礼を言わなければなりません。こうして今日のうちに外に出ることができたのは先生のおかげなのですから」
今日の夕飯とお風呂とふかふかごはんは、すべて先生のおかげです。
彼は照れたように頭をかき、改めて私を見て顔を赤くした。
「?あの……?」
「いえっ、その……。
会ったばかりの私をよく信用してくれたなぁ、と思いまして……」
どういう意味だろう?
疑問がそのまま顔に出ていたのだろう。ファーナー先生は、しどろもどろになりながらも説明してくれる。
「や、変な意味では……。
あの、きっとご存じないと思うのですが、魔力増幅は受ける側に条件がありまして……。
そのう……、愛……いやいやいやっ!?あのっ、好き……?これも違うっ!
ああ……説明が難しいのですが……」
最後はもごもごと口の中で言いごもる。
ああ、言いたいことは分かりました。
ゲームでもそうだった、魔力増幅を受けるためには好感度のゲージがMaxでないといけないのだ。
当然、このゲームを全攻略した私は、先生との好感度もMaxです。
……あれ?では、ローミの場合は??
でも彼女の場合は、好感度関係なく魔力を吸い上げていった気がする……
まだ、ああでもない、こーでもないと好感度について適切な説明をしようと苦闘する先生に、完璧にこの状況を理解している私は笑顔で言った。
「私、先生の事好きですよ?」
「えっ……」
先生の顔が一瞬で、ゆでだこのように赤くなる。動揺して、持っていた本を落としてしまう。
あ。ゲームの中ならともかく、現実に使う言葉じゃなかった……。
「お、お、お、大人をからかうもんじゃありませんっ」
「す、すみませんっ。尊敬……そう!尊敬していると申し上げたかったのですっ」
「なっ、なるほどっ!そうですよねっ、そうですよね……」
なぜ最後残念そうなの……?
落ちた本を拾おうと手を伸ばしたら、同時に手を伸ばした先生の手に触れてしまう。
熱いものにでも触れたかのように手をひっこめる私たち。顔色はもう、夕日のせいもあるが、赤を通り越して血色になっている。
「……ずるいよなー、あんなかわいい子と」
「なんか甘酸っぱい。オレにあんな時代はなかった……」
「ちっ、リア充め……」
ちょっと離れた茂みの中、顔を出す人たち……。
ゲルダまでいるし。
「あの、皆様。そんなところで、なにをしているんですか……?」
私がちょっと怒りの表情を浮かべて詰め寄ると、一番前にいたローミが口を開く。
「だって、わたくし達最初から一緒にいましたしー。なのに二人の世界に入っちゃったのはマーレだしー。二人のお邪魔にならないよう、わたくし達気を遣いましたのよ。
ねぇ?皆様」
「むぐぐぐぐっ……」
その通りなので何も言えない……。
っていうか、さっき舌打ちと共に「リア充め」って言ったの、ローミだよね……?
自分が王子様に会えないからって僻まないでよっ。
「もぉ解散っ!おうちに帰りますよっ」
皆が生暖かい目で見る中、私は大声で宣言した




