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第十八話 洞窟迷路(ダンジョン)

なぜかダンジョン……

なんで私こんなところにいるのかな……


ここは侯爵家の別邸から馬車で小一時間ほどはなれた、海に近い森の中だ。目の前には、大きく口を開いた洞窟がある。何の因果か知らないが、これからこの中に入らなければならないのだ。


がっくりと肩を落とし、私は腰に下がったかなり重い長剣の位置を直した。



------------------


「さあ、では出発しましょうか」


朝。さわやかな笑顔でローミは言った。


「どこへ?」

「何言ってるの。昨日寝る前に「海の迷宮」へ行くと言ったでしょう?」


思い出しました。


「それってどんなところなの?」


私が聞くと、ローミは「ちょっと準備が忙しいから、馬車の中で説明するわ」と、はぐらかした。


荷物を積む馬車に、軽量鎧ライトメイルとか積み出した時点で、いやな予感が止まらなかった……


馬車の中で聞いた洞窟迷路ダンジョンの話に、私は引き返すよう懇願こんがんする。しかし、ローミは「おほほほ」と上品に笑って取り合わなかった。馬車も引き返すことはなかった。


で、今。


私は洞窟迷路ダンジョンの前にいる……


刺身、そして醤油のせいだ!


私は昨日一日、ハイテンションだった。そのせいで、夜疲れて寝入ってしまったのだ。もし話をすべて聞いていたら全力で拒否して、場合によっては逃亡することもできただろうに……。


後悔先に立たず。


私は重い装備を引きずりつつ、洞窟に入るローミの後に続いた。




「この洞窟迷宮ダンジョンはね、500年前に終結した人魔戦争の頃作られたと言われているの」


馬車の中でローミが言っていた話を思い出す。


先を歩く彼女は、まるで戦乙女ワルキューレのよう。


胸部と腹部を守る軽量鎧ライトメイルに、ショルダーガードとブーツというち。武器は私が持たされたものよりも大きな長剣。あんな重いもの、よく腰につけられるものだ。


私も同じような装備を付けているのだが、これが重くて……


「マーレ、鍛え方が足りないわ!」


ローミが上から目線で言うが、反論できない……って、なんで乙女おんなのこの私がこんな恰好かっこうしなきゃいけないんだ~。


「さあ、鬼が出るかじゃが出るか。楽しみね、マーレ」


いかにもうきうきしてます、と言ったローミがつぶやいた。


どっちも出ないでほしい……


今この大陸に残っている洞窟迷路ダンジョンは、大方魔族が作ったものだ。強大な力を持つ魔獣を封印するとき、魔宝石という魔力を宿す宝石の鉱山を守るためなどに洞窟迷宮ダンジョンを作る。様々な罠をしつらえて、盗掘者たちからそれらを守るために。


ここも恐らく魔族が作ったと考えられる洞窟迷路ダンジョンで、何が眠っているのかはわからない。魔獣か魔宝石か、もしくはもっと別のものか……


ローミの話を要約すると、こういう事だった。小さい頃からここの話を侯爵から聞いていて、力が付いたら来ようと思っていたんだって。


侯爵も、余計なことをローミに教えてくれたもんだ!


「マーレ、心の声が小声で出ていますわよ」


……失礼。




洞窟を進むと、次第に入り口からの光が届かず、暗くなってきた。


ローミが火の魔法で宙に浮く明りを出す。私たちの後を勝手についてきてくれるので便利だ。


今回この洞窟迷路ダンジョンにいるのは、前回もいた侯爵家の護衛達とハンナ、男爵家うちのゲルダ、あと私が会ったことのない侯爵家の軍人達だ。総勢20人。


ハンナとゲルダも護衛達と同じく動きやすい黒装束着ているけど、妙に着慣れて見える……彼女達いったい何者?


進んでいくうちに岩肌の普通の洞窟だったのが、途中から石を積み上げて作られた壁が続くようになった。


そして突き当りに扉が見えた。重厚な、木製の扉。


「さあ、ここからが本格的な洞窟迷路ダンジョンの始まりね?」


ローミのうれしそうな声、それに反して皆に走る緊張。


うわー、本当に大丈夫なのかしら。せめてメンバーに冒険者プロとか入れようよ……


私の心の声もむなしく、ローミは扉を詳しく調べ始めた。


そして扉に手をかけた。

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