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綾菜を殺したのはこいつらに間違いない!

 俺は左耳に入れていたヘッドフォンを左手の拳の中に隠しながら、立ち上がった。立ち上がって見てみると、俺より前の席の連中のしている事が一目瞭然である。机に隠してマンガを読んでいる生徒もいれば、同じように隠れてメールを打っている生徒もいる。そして、俺と同じように、あの書き込みが気になるのか、スマホでワンセグを見ている者もいるじゃないか。

 小さすぎてよく分からないが、どうやら現場が映し出されているようだ。俺も早く見なきゃなんないし、そもそも何が問題なのかすら分かっちゃいない。


 「分かりません!」


 俺は元気よく答え、先生の反応を待った。


 「そうか。

 では、他に誰かいないか?」


 俺はあっさり解放された。期待されてなかったって事だろう。寂しい気もするが、そんな事気にしている場合じゃねぇ。慌てて、座ると左の手のひらに隠したヘッドフォンを耳に入れ、机の引き出しからスマホを取り出して、そこに映し出されている映像に目をやった。

 映し出されている画面の右手には大きな邸宅の壁が映っていて、その向こうに二人の警官が立っている。そこに向かって歩く男女二人の後姿。

 警官たちが立っているところが、この邸宅の門なのだろう。

 だとすると、そこに向かっているこの二人が、神罰を与えると言っている奴ら、つまり綾菜をあんな無残な形で殺した奴らと言う事になる。

 俺はごくりと生唾を飲み込み、これから起きる事を見逃すまいと、全神経を集中させた。

 左耳から聞こえる音には人々のざわめく声が少し混じっている。


 「何が起きるんだ?」

 「本当に起きるのか?」

 「あの二人がやるのか?」


 どうやら、カメラには映っていないが、ネットの書き込みにつられて見に来ているやじ馬たちがあたりには相当いるらしい。

 神龍興業本部邸宅の門に向かって歩き続けている二人の前に、二人の警官が走り寄ってきて、立ちふさがった。


 「待て、お前達」


 そう言った瞬間、映像の中の警官たちは数m先に吹き飛ばされた。


 「きゃー!」

 「何だ?今のは」


 悲鳴と驚きまじりのやじ馬たちの声が左耳に届いた。

 二人の警官は路上に転がり、地面に打ちつけたと思われる腰や腕をさすりながら、立ち上がろうとしていた。


 「神だ!」

 「やっぱり、神なんだ!」

 「そんな訳ないだろう。

 何かのトリックだ」


 やじ馬たちは二人の力を信じようとする者達と、トリックだとする者たちに分かれたようだ。どちらにしても、警官たちが何らかの力で吹き飛ばされたのは事実のようだ。


 「おんどれら、何さらしとんじゃ!

 いちびっとったら、いてこますぞ!」


 本部邸宅の窓が開き、危なそうな男が二人に向かって怒鳴った。その声に二人は立ち止まり、怒鳴った男に向き直った。


 「さあ」


 女の声がした。何かを督促しているかのようだ。

 男はそれに応じ、窓から顔を出しているやくざに向かって軽く手を振った。

 その直後だった。俺の目は見開いた。

 さっきまで頭があったはずの男の胴体から、真っ赤な血しぶきが吹き上がり、胴体についていたはずの首は地球の重力に引っ張られ、地上に向けて落下して行った。


 「きゃー!」

 「すっげー。マジ、神だ!」


 再びやじ馬たちの声が聞こえてきた。綾菜たちが殺されたのと同じ方法じゃないか。これがトリックなのか、本当に神罰と言う名の超能力なのか、俺には分からないが、とにかく、綾菜を殺したのはこいつらに間違いがない。俺はそう確信した。

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