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これが綾菜たちが殺された理由!?

 「まじかよ?」

 「そんな事、私が知る訳ないじゃん」

 「しかしだな。

 綾菜はどうなるんだ?

 綾菜は女の子だぜ」

 「知らないわよ。

 悪いけど、なんでか分かんないけど、私、あの子好きじゃなかったのよね。

 こう動物的に、関わりたくないって言うのかな」


 傘の柄を首と肩で挟んで、両手が空いている優奈は両手を前の方で、手のひらを上に向け、指をぞわぞわと動かして、その感情を俺に伝えようとしている。

 優奈の反応は予想通りとしても、綾菜がどうしてそんな理由で殺されることになったのか、俺には分からなかった。いや、巻き添えなんじゃねぇのか?そう思うと、腹立たしいじゃないか。

 真実はどうなんだよ。そう思った俺が優奈にたずねた。


 「お兄ちゃんは何か言っていたか?」

 「ううん。何にも」


 ネットの書き込みなんて、無責任なものが多い。刑事である優奈のお兄ちゃんが知らないのなら、根も葉もない話なのかもしれない。

 そう思って、俺は手にしていた優奈のスマホを優奈に返した。


 「あの4人はレイプ犯。

 私の手で神罰を加えた。

 凶悪犯には死を。

 次の神罰は明日、広域指定暴力団 神龍興業に加える」


 ネット上の掲示板に、そんな書き込みがあったらしいが、俺は信じる事はできなかった。




 雨は降ってはいないが分厚い雲が垂れ込めていて、窓の向こうは薄暗い。教室の中は天井から降り注ぐ蛍光灯の白い光で、俺の視界の中で冷たく映っている。決して優秀な生徒たちが集まっている訳ではないこの学校では、授業中だからと言って、みなが授業に集中してなんかいない。一応、私語は交わしちゃいないが、頭の中は何を考えているんだか分りゃしない。

 斜め左後ろを振り返れば、優奈は一心不乱に、ノートに向かって鉛筆を滑らせている。が、優奈は黒板を写してなんかいない。優奈はイラストを描くのが好きなのである。きっと、授業も聞かずに自分の頭の中で、訳の分からない話のイメージを膨らませ、そこに出てくるキャラのイラストを描いているに違いない。

 そして、首を切断して殺された佐々木と綾菜の机の上には、今日も花が飾られている。

 そんな中、俺は頬杖をついて、とりあえず授業を聞いているふりをしながら、制服の袖を通してスマホにつないだヘッドフォンから聞こえてくるテレビの音声に、全神経を集中させている。

 ネットで予告された神龍興業への神罰の時刻が迫って来ていた。


 「えぇっと、次の問題だが」


 先生が教室を見渡しながら、言っている。当てられたら、面倒だ。当然、俺は視線を落として、目をあわしたりなんかしない。


 「神龍興業本部邸宅前に動きがあったようです」


 俺の耳にその言葉が届いた。思わず背筋を伸ばしてしまった俺は、うっかり先生と目があってしまった。


 「高橋、どうだ」


 まじかよ。これからって時に。勘弁してくれよ。

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