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思い出された、あの日

以前掲載した物語になります。

事情あって削除した物語になりますが、書き直しを含め再掲載します。

全部で60話ありますので、もし興味ある方はお読み下さい。

宜しくお願いします。


 私と妻は夢の中で山に囲まれる車道を歩いていた。車道を三十分程歩いた後、山道に入ると妻が足を止めた。

「ここからは、あなた一人で行って……」妻は私に微笑んでいた。不思議な感覚に襲われたが、妻の表情をじっと見ても微笑んでいる理由が分からない。しかし目が真剣だった。それが私の足を動かす理由になった。

 山道に入ると少しずつ道が細くなり、幾度となく坂を上り下りした。周りの田んぼの風景は変わらないが、私の歩く横には小さな川が流れていた。川に沿って山道を登って行くと霧が出始め、前へ進むにも視界は悪く、戻ろうと思って後ろを振り向いても、前と同じように視界が悪い。もう進むしかないと覚悟して、私は無心で前に進んだ。どれだけ歩いたか分からないが、少しずつ視界が良くなってきた。

 五十メートル程先に六十代の男性と三十代の女性が横並びで立っているのが見えた。女性の方は何となく見覚えもある。

 二人の立っている場所へ進むと、女性の方は昔の恋人の松野だと気付いた。久し振りに会う彼女の様子は、まるで私がここを通る事を知っていたかのようだ。私が彼女の様子を見ていると、今度は彼女の方から私に近付いてきた。

「久し振りね」と松野は私に微笑んだ。松野と会うのは六年振り。正直再会したい相手ではなかった。しかし嫌う理由もない。そんな考えを頭に巡らせていると「やっぱり私を嫌ってるね」と松野が言った。松野は私の表情から再会を嫌がっている事に気付いていた。

 松野と何を話したのかは覚えていないが、会話が終わった後、私は再び山道を一人突き進んだ。そこで眠りから覚めていた。そして夢の内容も数分も経たない内に私の頭から消えていた。


 六月二十日。


 仕事を終えて家に帰った時、凄く気持ちが悪い事に気付いた。明日の仕事に差し支えあっても困るので、その日は早い時間帯に妻と一緒にベッドに入った。

 妻は私より先に眠ってしまったが、私は一向に眠れそうになかった。横になっていても吐き気と悪寒がする。体調が悪くても意識だけはしっかりしていた。しかも体全体で妙な空気を感じていた。そんな状態を三十分も続けると、眠れないと判断して時間を潰そうと思った。ベッドから数歩先に黒色の本棚が置いてあり、その本棚の中から無造作に音楽CDを抜き出しパソコンが置いてある机に向かった。パソコンの電源を入れて、CDを入れるとロック調の激しいエレキギターの音が鳴り始めた。そのCDは二十歳の頃、毎日聴いていたB'zのRUNと言うアルバム。

 気が付けば音楽に集中していた。『さよならなんかは言わせない』が流れ始めた時、何故だか分からないが悲しみの感情に襲われた。

思いも寄らぬ自分の涙に、数日前に見た夢を思い出され、今日が何の日だったのか思い出された。


松野との関係は、六月二十日に始まり、そして六月二十日に終わった。


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