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第十八話 〈グレイヴ村〉の祀り物と再会

 陽が昇り、時刻は昼。

 朝食兼昼食を摂ったが、まだ少し眠い。

 仕方ないが門を出て《怒気解放(ブレイズギア)》を解放させる。

 

レアを抱きかかえ、〈グレイヴ村〉へと向かう。

 出来るだけ人目の無い道を通るため遠回りになってしまうが、それでも数分で着くだろう。


 案の定すぐ着いた。

 レアを丁重に降ろし、警備の者にガルドの家の場所を尋ねようとするが、突然椅子から立ち上がった。


「カイ様、お待ちしておりました! どうぞ中へお入りください! この先真っ直ぐにガルド様の家があります」


「お、おう。分かった。ありがとう」


 吃驚したな。

 そういえば、昨日俺の顔を見ているのか。

 まあ、俺は覚えていないが。


「流石村の救世主、だね」


 言われた通り歩いているとレアが話しかけてくる。


「そんな高尚な事をした覚えは無い。それに、お前もだぞ」


「とどめを刺したのはカイでしょ。私はその手助けをしただけだから」


「お前がいなければ俺は死んでたけどな。俺にはレアが必要だ」


「ふふ、そうだよ。私にもっと執着して?」


 まあ、俺はもうレアを手放せないし、手放したくも無いが。

 そんな風に話している内にもうガルドの家らしきものの前に着く。

 周りの家が長屋な中、この家だけ二階建てなので恐らく合っている。


「おーい、ガルドー。来たぞー」


 ドアをガンガンと叩き、ガルドを呼ぶ。

 昨日のリプレイかの様に、ドタバタと音がしながらガルドが出てくる。


「カイさん、ようこそ〈グレイヴ村〉へ! 皆心待ちにしていましたよ!」


「おう、そうか。で、例の祀り物とやらはどこだ?」


「この家の裏の広場に祭壇にあります。ご案内しますよ」


 さて、《大罪》に関する情報はどんなもんだろうか。

 石と紙にそんな重大な情報を残すとは思えないが。


 家の裏に回ると、確かに広場の中心に祭壇があった。

 こじんまりとしているが、確かに何かが祀られている。

 本当にこれ持って行って良いのか?

 少し忍びないな。


「どうぞ、こちらが祀り物です。お受け取り下さい」


「ありがとう。だが、少し申し訳ないな」


「いえいえ、誰もこんな物気にしていませんので。それに、俺の一族にずっと言われ続けている事なんですが、いつかこれに触れ、何かを感じる者がいれば譲渡しろと」


「そうか。であれば遠慮せず貰う事にしよう」


 そう言いながら祀り物の紙に手を触れた瞬間、《大罪》の共鳴が始まり、ルクスとレアの脳内に女性の声が走る。


『――《大罪》の継承者よ。汝らに悪意が降りかかる事の無いよう、新たな力を授けます。願わくば、世界を正しき道へと導く者であれ』


 新たな力?

 特に何も感じて無いが。


「レア、なんか変わったか?」


「ううん。何も。もしかしたら、そっちの石の方じゃない?」


 確かになと思い石の方に触れると、またも《大罪》の共鳴が始まった。

 今度は男性の声、それも怒剣と同じ声だった。


『――《大罪》の継承者よ。汝らが善の道へと進む時、世界は汝らの味方となるだろう。これは、悪には行使出来ぬ力である』


 石から黒や紫、赤、緑などの光が溢れ出し、ルクスとレアの身体へと吸い込まれていく。

 刹那――


 ゴゥンと辺りに魔力が広まり、収束する。

 どうやら《憤怒(ラース)》と《嫉妬(エンヴィ)》が共鳴し、混ざり合い、そして二人で一つの存在であるとされたようだ。


 今ここに、《憤怒》と《嫉妬》が真なる共同体へと成った。


「おお……力が溢れるようだ……」


「凄い……。まるで、最初からこれが想定されていたみたい……」


 ガルドは突然の事に驚くが、まあそんな事もあるかと無理矢理納得した。

 祀り物を送る相手は間違っていなかったと、そう強く感じた。


「やはり、貴方達は“選ばれし者”だったんですね……」


「ガルド、何か知っているのか?」


 一般人が選ばれし者について知っているはずがない。

 まだ情報があるならば聞いておいた方が良いだろう。


「はい、少しだけですが。口伝でのみ継がれている秘匿情報に、“選ばれし者、いずれ来たる異常を鎮める者なり。正なる英雄は、誠なる者にあり”というものがあります」


 んー、よく分からないな。

 レアの方を見てみるが、レアもそこまでピンと来てないようだ。

 いずれ来たる異常……《大罪》が何かを引き起こすのだろうか?


「俺達は、貴方達こそが正なる英雄であると確信しています。我ら〈グレイヴ村〉の民は、いつまでも貴方達の味方である事を誓います」


「お、おう……そうか」


 そう言われてもな……。

 俺らには全く分からん。

 だが、味方が増えるのであれば構わない。

 まあ、頼る事は無いだろうが。


「それじゃあ、用件は済んだから俺達は〈ヴァルグレイア〉に戻る」


「はい。我々はいつでも、貴方達の帰還をお待ちしております」


 いつの間にか広場に集まっていた村民全員が礼をしている。

 どことなく気まずいのでさっさと帰る事にしよう。


「よし、レア。行くぞ」


「うん。また、仲間が増えたね」


 完全に信用はしてないがな。

 俺はただ魔物を倒しただけ。

 それだけで何が変わるというのだろう。


 とりあえず《怒気解放(ブレイズギア)》を発動させ、レアをかかえて走る。


「帰ったら準備も兼ねて店巡ってみよう。何か面白いものがあるかもしれないしな」


「ん。あ、ルクスに服選んでほしいな」


「えー。俺にそこまでセンスは無いんだが……、文句は言うなよ」


「言わないよ。ルクスが選んでくれたものなら、何でも嬉しいもん」


 中々嬉しい事言ってくれるじゃないか。

 ならば俺の脳をフル稼働させて最善を選ぼう。



 またも数分程で帰って来た。

 しかし馬の数倍で走れるとは、何とも人離れしたものだな。


 しかも、先程よりも余裕が生まれている。

 あの石から得た新たな力が何なのかは分からないが、魔力効率や身体能力など諸々の力が強化されたのは分かる。

 ちなみにあの紙と石は魔力反応を失ったので、持っておく必要も無いかと置いて来た。


「呉服屋はどこにあるんだ?確か中央広場に地図があったはずだから、そっち行ってみるか」


「商業都市っていうくらいだから、どんな服があるか楽しみ」


 ご機嫌に隣を歩くレアについ見惚れてしまう。

 そのせいで前が見えておらず、人にぶつかってしまった。


「あ、やべ。すまん……ん? お前、まさか――!」


 その姿には、非常に見覚えがあった。

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