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第三十一章 偏執愛③

【前回までのあらすじ】

さらわれたアンジェを助けに向かった黒狼ルゥ(ルーク王子)は、異母兄ギルバートが自分と同じように黒狼として生きていたことを知ります。アンジェをめぐる決闘をしていると狩人が現れ、黒狼ルゥは銃弾を受けて滝つぼへと落ちてしまい……


聖女狩りの男らに捕まったアンジェは偶然訪れたフェルゼン王子に救助されますが、彼は一目惚れしたアンジェを口説き、一気に溺愛モードへ……。そこへ黒狼ルゥのフリをした黒狼ギルバートがアンジェを独占したくなり……

アンジェ(川野)は怒れる黒狼ギルバートを身体で受け止め、力いっぱい抱きしめた。



「……ごめんね、こんなにも寂しくさせて……大丈夫、大丈夫だから、落ち着いて……」



彼女の細い腕に包み込まれると、皮膚に伝わる鼓動が、怒り沸騰する血を穏やかな血へ変える。

その瞬間、黒狼ギルバートの荒れ狂っていた心臓の鼓動が、嘘のように静まった。



(そうだ。もっと俺を抱きしめろ。お前の白く美しい顔を、この忌まわしい黒い毛並みに埋めろ)



彼は唸るのを止め、彼女の首筋に鼻先を埋めて深く呼吸した。

怒りが完璧に治まったわけではない、反省して静かにしているわけでもない、アンジェ(川野)に抱きしめられたい欲求が叶った、それだけのことだ。



アンジェ(川野)は黒狼ギルバートの頭を撫でる。



「よしよし、ルゥはいい子、いい子……寂しかったんだよね、不安だったんだよね」

と呟き、絡めた腕を離して、黒狼ギルバートを見つめた。



「……ルゥ、ごめんね、ひとりぼっちにさせて……でも、さっきみたいなことは、もうしないでね……あんなことされたら、大好きなんて言えなくなっちゃう……」



黒狼ギルバートが、耳を後ろへ下げ、アンジェ(川野)を見つめクウゥンと鳴き声を出す。

しおらしい演技はフェルゼンの愛犬ラックを見て学習していた。

先程の暴れた様子など微塵にも感じさせていないし、演技をしているようにも見受けられないはずだ。



アンジェ(川野)は黒狼ギルバートの額にキスをした。



「大好きよ、ルゥ……大好きだから、今までの優しいルゥに戻って、お願い……」



目の前にいる黒狼が、再び、くううん、と甘えた鳴き声を出す。

と、ともに心の中では別の声が響いていた。

(オマエ、ヲ、ハナサナイ……)



黒狼ギルバートは彼女の頬に流れた涙の跡を、そっと舐めた。

ふふっと笑う顔に、「大好き」と何度もいう言葉に免じて今度のことは、許してやろうと黒狼ギルバートは思い始めていた。



と、鼻先を伸ばして、アンジェ(川野)の銀色の髪がかけられている形の良い耳をペロリペロリと舐めて、反応を見た。


「やだっ、くすぐったい……」と、はしゃぐ子どものように彼女が笑う。



黒狼ギルバートは、やはりおまえを喜ばせるのは俺だけだ。

そう思うと、アンジェ(川野)が好む甘えた鳴き声を、殊更(ことさら)強調して繰り返した。

いつも読んで頂きまして、ありがとうございます!!


第三十二章 移ろう気持ち、ではアンジェ(川野)の心の変化を描いた章となります。

ぜひ引き続き、読んで頂けると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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