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第三十章 婚約指輪⑤

【前回までのあらすじ】

さらわれたアンジェを助けに向かった黒狼ルゥ(ルーク王子)は、異母兄ギルバートが自分と同じように黒狼として生きていたことを知ります。アンジェをめぐる決闘をしていると狩人が現れ、黒狼ルゥは銃弾を受けて滝つぼへと落ちてしまい……


聖女狩りの男らに捕まったアンジェは偶然訪れたフェルゼン王子に救助されますが、彼は一目惚れしたアンジェを口説き、一気に溺愛モードへ……。そこへ黒狼ルゥのフリをした黒狼ギルバートがアンジェを独占したくなり……

ラント国第二王子へ、大胆なお願いをしたところで不安になったアンジェ(川野)は視線が定まらず、俯いた。



フェルゼンの思考が一瞬、停止した。

求婚の勢いで、片膝をついたまま、彼は彼女を見上げる。



「お試し? ……恋人になる前の? 」



聞き慣れない言葉にフェルゼンは眉を寄せた。

結婚前提で婚約するという確固たる絆を求めていた彼にとって、それはあまりにも衝撃的なお願いだった。



「君の国では、それが一般的なことなのかい、アンジェ。俺には理解できないな……恋人になる前、お互いを試すなんて……俺が試すのは剣ぐらいだ。何本か作らせた剣を試し斬りして、俺に合った1本の剣を選ぶ。試すとは、そういうことだと思っていたが……」



アンジェ(川野)が唇を嚙みしめ寂しそうな顔になった様子に、フェルゼンは、ここは話だけでも聞いておこうか、と思い直した。



「それで、恋人になる前には、何をするのかな? 」



「え……っと、それは……一緒にお茶を飲んでお喋りしたり、散歩へ行ってお喋りしたり……あっ、景色のいい場所、こんな場所でお喋りしたり……とか、たまに手を(つな)ぐとか……です」



「うーん……恋人になる前は、お喋りと、お手々を繋ぐのか……まるで御飯事(おままごと)だね……アッハッハ……」



「それで……お喋りをしたあと、いつ恋人になるんだい? 」



「あの……それは……必ず恋人になるというわけでもなくて……恋人にならなかったら……友だちになるか……さようなら、とお別れします」



「じゃあ、却下……そのお願いは却下するよ。俺は君と恋人からスタートじゃなくてもいい、最初に婚約者からスタートしたいんだ……でもまあ、いまのお願いは、君が決意して俺に話してくれたことなんだと思う。だから婚約者からスタートの条件だけは妥協できない。もちろんお喋りもするよ、でもお手々を繋ぐだけじゃなく、キスもハグもする。当然だろう、婚約者なんだから……」



アンジェ(川野)はフェルゼンの真剣な顔を初めて見た気がした。

(……まあ、譲歩してもらったんだから、ここで手を打つべきかもね……)



「フェルゼン様、ありがとうございます……ですが、キスは……あの……」



「え? キスがどうかした? なになに、話してみて」



「……ええっと……キスは……舌を入れないでください……口の中に」



「……アッハッハ……わかった、わかった……じゃあ、今から予行練習でやってみる? 」



「い……いえ、いまはいいです……そんなすぐじゃなくても……」



「それと……」



「なに? まだあるの? 」



「ハグはいいんですけど……」



「うん!? ハグはいいんだよね、ぎゅっとしても」



「……その、ぎゅっとはいいんですが……あの……そのとき私の胸とか……そのお尻とか……触らないでほしくって……」



「じゃあ、どこなら触っていいのかな」



「はいぃ?……うーん……じゃあ……頭と肩だったら……」



フェルゼンは、ふうっと大きく溜息をつく。



(……確かに、そういう反応かもね……いま29才で、根っからの女好きな人だもん……)

と、アンジェ(川野)は、(やっぱり無理だよね……この人に、恋人お試し期間なんて……)と諦めモードへ思考が移る。

いつも多くの小説の中から読んで下さいまして、ありがとうございます!!


第三十章は①~⑦まで、と、かなり長くなってしまいまして(^^;

2/23は祝日でもあるので、④~⑦までアップすることにしました。


次の投稿時間は、2/23  15時、 19時予定ですので、

引き続き、読んで頂けると嬉しいです、よろしくお願いいたします(୨୧ᵕ̤ᴗᵕ̤)

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