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第二十九章 銀の腕輪③

【前回までのあらすじ】

さらわれたアンジェを助けに向かった黒狼ルゥ(ルーク王子)は、異母兄ギルバートが自分と同じように黒狼として生きていたことを知ります。アンジェをめぐる決闘をしていると狩人が現れ、黒狼ルゥは銃弾を受けて滝つぼへと落ちてしまい……


一方のアンジェ(川野)は、聖女狩りの男らに捕まりますが、偶然訪れたフェルゼン王子に救助されたものの、彼は美形の金髪セクハラ大魔王で溺愛モードへ突入し……

「アンジェ、その黒狼は? 」


戸惑いを隠せないラント国第二王子フェルゼンが歩み寄る。

フェルゼンの隣りでは愛犬ラックがウウッと牙を剥きだしたままの状態でいる。



「うふふ……フェルゼン様、この子はルゥ、教会で私を助けてくれた相棒です。はぐれてしまったようで、やっと再会できたんです……なので……お願いします、ルゥと一緒にいたいんです。連れて帰ってもいいでしょうか? とても大人しくて良い子だから、誰かに迷惑をかけることは無いはずです。お願いします。また一緒に暮らしたいんです」



フェルゼンは困惑したように眉を寄せたが、アンジェ(川野)の必死な眼差しに(あらが)うことはできなかった。



「……君がそう言うなら……だが、黒狼となると……猟犬のラックでさえ、俺の部屋の外テラスで寝せているぐらいだ。部屋の中で一緒に暮らすというのは、さすがにダメだろう……さて、父上にどう説明したものか」



二人の会話を聞きながら甘い香りの少女の言った「一緒に暮らしたい」の言葉がリフレインとなり、黒狼ギルバートの心に波紋を呼ぶ。



少女が彼の耳の付け根を撫で、

「ねっ。(うち)へ帰ろう、ルゥ」と言う。



(……ウチヘカエロウ……帰る場所が出来るのか、俺に……)

黒狼ギルバートはその言葉の持つ温かみに、胸の奥が妙にざらつくのを感じる。



(……家へ帰る……14年過ごした、あの場所へ……)



銀髪の少女の言葉が、彼の胸の中に甘酸っぱい時代の温度を蘇らせる。

人間ギルバートだった8歳の頃、母はラント国王ツォークと再婚した。

連れ子だったギルバートに初めての兄弟、2歳下の弟が出来た。

ギルバートの家(王宮)は、弟ルークと幼馴染のニナの三人でよく遊び……共に学び過ごした思い出の場所でもあった。




-----ラント国 王宮城内---




王宮広間の外廊下を、フェルゼンとアンジェが、野生の大きな黒狼を従えて歩く。

侍女や使用人たちが、その様子を見て一斉に壁の方へと後ずさる。



ちょうどその時、侍従長が王の間の扉を開け、中からツォーク王が出てきた。



「……父上、ただいま戻りました……」

と、にこやかな様子のフェルゼンをよそに、ツオーク王は銀色の髪の少女を一瞥、その隣を歩く黒狼を眼に止めると「ふんっ」と鼻息を荒げ、唇を歪めた。



アンジェ(川野)が、ツォーク王へ深々と頭を下げた。



「……アンジェ・クレイモンと申します。いつも、こちらで大変お世話になっております……挨拶が遅くなりまして申し訳ございません」



「そうか……」

ツォーク王は一言残し、黒狼を忌々しそうに見つめた。

王の鋭い視線は、黒狼の右前肢に嵌められた「銀の腕輪」に釘付けになっていた。



一方の黒狼もまた金色の瞳でツォーク王を冷ややかに眺め、すぐにアンジェの足元へと鼻先を寄せた。

側にいた侍従長がハラハラした様子で黒狼とツォーク王を交互に見つめる。



「フェルゼン、後で、事情を聴くとしよう」



「はい、父上」



フェルゼンの言葉が終わらぬうちに、ツォーク王は、数歩進んだところで立ち止まると、後ろを振り返った。

廊下を悠々と歩いていく黒狼の後姿を見て、

ツォーク王は「(けだもの)め……」と小さく呟き、侍従長と共に立ち去っていった。



二人と一匹も、王の間の廊下を後にすると、アンジェ(川野)に与えられた客室へと向かった。



「アンジェ……約束してくれるかな? どんなに一緒にいたいと思っても、部屋の中で黒狼を入れたままにしないこと。本来、王宮の室内では動物の飼育は禁止なんだ。人と動物は同じ部屋にいることは許されない。だから君が部屋にいる間は、黒狼は外のテラスへ出すように。これだけは必ず守ってほしい」



「はい。ルゥと一緒にいられるのなら、喜んで」

【あとがき】

いつも読んで頂きまして、ありがとうございます。

この続き、銀の腕輪④は本日2月22日11時15分頃にアップしますので、

ぜひ、そちらも読んでやってください(⁎˃ᴗ˂⁎)

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