表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/95

第二十八章 一目惚れ③

【前回までのあらすじ】

さらわれたアンジェを助けに向かった黒狼ルゥ(ルーク王子)でしたが、異母兄ギルバートが自分と同じように黒狼として生きていたことを知り、喜んだのもつかのま。黒狼ギルバートはアンジェの放つ甘い香りが"呪いを解くカギ"と確信し、黒狼ルゥよりも先にアンジェを手に入れようと攻撃をしかけてきます。そんな決闘中、二匹の前に狩人の男が現れ、黒狼ギルバートではなく、銃弾は黒狼ルゥへ。逃げ惑う黒狼ルゥは滝つぼへと落ちてしまい……


一方のアンジェ(川野)は、男らによって見知らぬ土地の物置小屋へと連れていかれ、鉄格子の檻の中へと囚われてしまいます。アンジェ(川野)は必死に助けを待ち、ようやく現れたのはラント国第二王子のフェルゼンでした。破滅ルートの攻略対象者であるフェルゼンは、アンジェ(川野)へ、いきなりのプロポーズ!?……

「……あ、ありがとうございます、デン……ナク……殿下…お陰様で助かりました」

銀髪の少女が、モゴモゴ言い、居心地が悪そうな雰囲気で立っている。



(……俺のことを王室の者だとわかった物言いだな……近くで見ると銀色の髪色は美しい……それに顔立ちも……とても美しい……)



するっと少女の頬に涙が流れた。

よほど怖かったのだろうと、フェルゼンは指先で少女の涙を拭う。

自分が側で守らなければ、溶けてしまいそうに(もろ)そうだ。



まるで巣から落ちた雛鳥。

「守りたい」、その一語を想い浮かべただけで、フェルゼンの心はぎゅっと鷲掴みにされた。

思わず、少女の銀髪を指で掬いあげる。



「怖かったんだね……でも、もう大丈夫だよ。俺がいる。……なんてことだ、この美しい髪も、君の頬も、服まで血だらけじゃないか。……すぐにでも手当が必要だな」



少女は上の空で話を聞いているようだったが、ふっと面持ちを上げ、


「……本当にありがとうございました。これで教会へ戻れます……」

小さく息をのみ、震える声で言った。

礼の言葉が、妙に綺麗で、沁み入るように耳へ馴染む。



「……え? 教会? 君は教会から来たの? 」



コクリ、と少女が首を縦に振る。



「……じゃあ、そうだね……うーん、その前に汚れを落とさなきゃいけないね。俺が、君の身体を隅々まで、綺麗に洗ってあげるよ……なんならお風呂で一緒に洗いっこでもしようか。教会へ行くのは、それからでも遅くはないんじゃない」



フェルゼンは、ほんの冗談で言ったセリフを、少女が真に受け、真っ赤な顔でいる姿を見て当惑した。

彼女は世慣れた貴族令嬢たちと違い、純潔の金のタトゥーを持った、10代の少女。こんな冗談なんかで気安く笑えるはずもない、俺も馬鹿だな、そう自身を戒めた。



恐怖に襲われるのか、少女の身体が小刻みに震えている。

フェルゼンはマントを脱ぐと、少女の肩にかけた。彼女のお礼の言葉が心地良い。



少女は教会へ帰りたいと何度も口にしたが、フェルゼンは、賊がいるかも知れないという口実の元、実は、単なる義侠心ではなく、彼女を自分の目の届く場所に留め置きたいという、強烈な情動に突き動かされていた。



「王子様……王子様……ありがとうございましたぁ……」と村人たちが、群がるように駆け寄ってきて、感謝の声が重なる。



「村長ぉー、庭掃除は終わったから、安心しておくれー、アッハッハッ」



村長と村の男たちへの挨拶もそこそこ、フェルゼンは少女とともに馬車へ乗り込む。



憂いを秘めた銀色の髪の少女が窓越しに見える村人へ頭を下げているのを見て、フェルゼンは思う。



(……あの時、ヴァレー国の騎士を救わなければ、この村へ立ち寄ることもなかった……俺の庭を荒らす連中がいなければ、銀髪の少女とも出逢わなかった……運命の……悪戯か……)





---ラント国 フェルゼン王子管轄領地付近---




城ヘ向かう馬車の中、アンジェと名乗る少女が眠りに落ちていく様子を眺め、フェルゼンは彼女の隣に席を移し、その身体を自分の元へと引き寄せた。



世俗に染まることもない、純潔の10代の少女が、フェルゼンの肩に安堵した寝顔を乗せている。

このまま少女を自分の元へ留めておきたい。

フェルゼンは少女の髪をそっと撫でつけた。

髪の指触りも心地いい、いつまでも撫でていたいくらいだ。



馬車の揺れに合わせ、少女の長い睫毛が微かに震える。

陶器のように美しく白い肌は青白かったが、この頬が紅潮し、自分だけを見つめてくれたら……そう考えているうちに、「そんな変な綽名が定着する前に結婚しなさい」と言う母の言葉が思い出された。



(……この出逢い……悪くない……運命の赤い糸で結ばれているのかもしれない、俺とアンジェは……)



フェルゼンはアンジェ(川野)の頭に軽く口づけをし、寝顔を見つめた。

そして二度目は彼女の身体を抱きかかえ、顎を指でつまみ、唇に口づけをした。

柔らかな唇を離す間もなく、アンジェ(川野)の唇にはフェルゼンの唇がずっと押し当てられていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ