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第二十八章 一目惚れ②

【前回までのあらすじ】

さらわれたアンジェを助けに向かった黒狼ルゥ(ルーク王子)でしたが、異母兄ギルバートが自分と同じように黒狼として生きていたことを知り、喜んだのもつかのま。黒狼ギルバートはアンジェの放つ甘い香りが"呪いを解くカギ"と確信し、黒狼ルゥよりも先にアンジェを手に入れようと攻撃をしかけてきます。そんな決闘中、二匹の前に狩人の男が現れ、黒狼ギルバートではなく、銃弾は黒狼ルゥへ。逃げ惑う黒狼ルゥは滝つぼへと落ちてしまい……


一方のアンジェ(川野)は、男らによって見知らぬ土地の物置小屋へと連れていかれ、鉄格子の檻の中へと囚われてしまいます。アンジェ(川野)は必死に助けを待ち、ようやく現れたのはラント国第二王子のフェルゼンでした。破滅ルートの攻略対象者であるフェルゼンは、アンジェ(川野)へ、いきなりのプロポーズ!?……

ラント国第二王子フェルゼンは、一瞬だけ、父の言葉を思い出した。

民あっての王室。民あっての国家。

(うるさ)いほど聞かされてきた言葉が、いまは腹立たしいほど正しく、記憶されているなと、苦笑した。



湿った土を蹴り、深い藪を抜けた先に、不気味な静寂の中に、その小屋があった。

近づくにつれ、板の隙間から、か細い悲鳴と泣き声が漏れ聞こえてくる。



ちょうどその時、薄汚れた身なりの男たちが、新たに一人の少女を強引に小屋へ引きずり、押し込もうとしていた。

抵抗する少女の声が森へ吸い込まれ、返ってこない。

男の一人がこちらに気づく。



「おい……おまえたち、そこまでだ」



フェルゼンの威厳ある声が響く。

男たちは驚き、同時に凶悪な笑みを浮かべている。



「どこの若旦那だか知らねえが、余計な首を突っ込むと死ぬことになるぜ、早くお家へ帰んな」



「警告は一度だけだ。抵抗する者は切り捨てる。わかったのなら、直ちに少女から手を離せ、いますぐ武器を捨てろっ!! 」



次の瞬間、男たちは刃物を抜いた。

逃げるより先に、開き直る顔で、フェルゼンへと刃を向け、


「うぉりゃぁあー」と、一斉に斬りかかってきた。



フェルゼンは、ため息大きくひとつ、で剣を抜く。


三人の家臣がフェルゼンの元へ駆け寄り、応戦する。

フェルゼンは流麗な動作で抜かれた剣の銀光が一閃……突っ込んできた男の腕ごと斬り払い、男の絶叫を留める一撃が、その首を根元から払う。



ゴロッと落ちる男の首が、縄で繋がれていた少女の足元へと転がっていく。

少女がヒィッと叫び白目を()いて失神。



周囲に散る血しぶき。

フェルゼンの背後を固めた家臣も二人目、三人目と、賊の男を次々と斬り捨てていく。

逃げ道を絶たれた賊は最後まで抵抗を続け、血の海と化した地面へと命を沈めた。



「扉を開けろ」フェルゼンの命で騎士の一人が小屋の扉を蹴り破る。

中には鉄格子の巨大な檻が部屋の真ん中に備えられていた。



檻の中には、四人の少女たちが身を寄せ合って、こちらを見ている。

先に騎士が入り、賊の一味がいないかどうか確認し、フェルゼンに「大丈夫です」と報告をした。



「みんな、大丈夫かい?」



フェルゼンの声掛けとともに、騎士の一人が、檻のカギをガチャッと外すと、少女たちは、わらわらと檻の外へと飛び出してきた。

三人は近隣の街娘の身なりだ。



「いったん村へ引き上げよう。少女たちの身元を確認して、返す手筈も、全部村へ帰ってからだ……」とフェルゼン。



少女たちが「ありがとうございます」と泣き崩れながら家臣の騎士に支えられている中、檻の中にいる一人の少女が、そろそろと出てきた。



最後の一人を見た瞬間、フェルゼンは息をのんだ。



月の光を凝縮したような、透き通るような銀髪。

そして、涙に濡れながらも、凛とした強さを秘めた空色の瞳。

その少女は、恐怖の中にありながら、聖女のような神聖な輝きを放っていた。



フェルゼンは少女を見て、確信した。

この銀色の髪は、噂に聞く隣国の王室の髪色、と。



「誰か……今すぐに馬車を用意してくれ。俺は、馬車で王宮へ向かう」

と、騎士の一人に指示を出した。



檻から出た少女はフェルゼンの顔を見て、はっとし、すぐに深々と頭を下げた。

彼女の頭から顔、胸元までが血糊で固まっている。



「君も大丈夫かい、レディ」

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