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第二十八章 一目惚れ①

【前回までのあらすじ】

さらわれたアンジェを助けに向かった黒狼ルゥ(ルーク王子)でしたが、異母兄ギルバートが自分と同じように黒狼として生きていたことを知り、喜んだのもつかのま。黒狼ギルバートはアンジェの放つ甘い香りが"呪いを解くカギ"と確信し、黒狼ルゥよりも先にアンジェを手に入れようと攻撃をしかけてきます。そんな決闘中、二匹の前に狩人の男が現れ、黒狼ギルバートではなく、銃弾は黒狼ルゥへ。逃げ惑う黒狼ルゥは滝つぼへと落ちてしまい……


一方のアンジェ(川野)は、男らによって見知らぬ土地の物置小屋へと連れていかれ、鉄格子の檻の中へと囚われてしまいます。アンジェ(川野)は必死に助けを待ち、ようやく現れたのはラント国第二王子のフェルゼンでした。破滅ルートの攻略対象者であるフェルゼンは、アンジェ(川野)へ、いきなりのプロポーズ!?……


【護衛騎士エルジーとフェルゼン王子のお話は第一部 第十八章「追われる者」①②をご覧ください!】

---ヴァレー国とラント国の国境付近 ラント国フェルゼン王子管轄領地付近アンジェが攫われて4日目---



国境の村へ向かう道は、朝霧に濡れていた。

草の先から落ちる雫が馬の蹄に弾かれ、小さな音を立てる。

フェルゼンは手綱を握りながら、胸の奥に残る昨夜の父王の怒鳴り声を、朝霧の中へと押しやった。



父王ツォークの雷は今に始まったことではない。

所詮、自分は”王”の器ではない、笑ってやり過ごす。

けれど、その笑いの下で、心が磨り減る何かを感じていた。



北方に広がる村の朝は静かだった。

数日前に保護したヴァレー国の騎士エルジーの容態を確かめるべく、フェルゼンは精鋭の家臣の騎士3名と再びこの地を訪れていた。


村へ着くと、物置小屋の前に人影があった。

王子の到着を見て村人の男たちがざわめく。

フェルゼンは、挨拶はいいと男たちを手で制止して、軽く頷き、戸口へ近づいた。



「……おい、まだ生きているかい……」



中から、布を擦るような音がして、傷だらけの騎士が起き上がった。

顔色は悪いが、眼の輝きは残っている。

肩から胸にかけて包帯が巻かれ、血の跡がまだ滲んでいた。



「フェ……ルゼン、王子様……。私の命を、救っていただき……」



エルジーと名乗った騎士は、礼を言おうとして身体を起こし、すぐに痛みに顔を歪めた。

フェルゼンは近寄ると、肩をそっと押さえ、無理をするなと短く言う。



「礼はいい。今は寝ていて構わない……第一、お前が動けば、こちらの面倒が増えるじゃないか。だろ? ハハハッ」



 フェルゼンの軽口が自分を気遣うものだと察知したエルジーは、唇を噛みしめ、申し訳なさそうに目を伏せた。



「……ご恩は必ず。けれど、私は……追われています。ここに、迷惑がかかっては……」



「気にしなくていい……迷惑かどうかは俺が決める……傷が開くといけない、いいから寝ていてくれ……」



「……フェルゼン、様……」



村長がフェルゼンの後ろで、様子を窺っている。



「……村長、この男を頼む。薬も食事も、必要なものを与えてくれ……請求は俺の屋敷へ廻しておくように」



フェルゼンがそう告げると、傍らにいた村長は、ははっ、深々と頭を下げた。

だが、その表情には拭いきれぬ不安が影を落としている。



フェルゼンが物置小屋から出るのを待って、村長が慌てて側に寄ってきた。

彼は周囲を見回し、声を潜めた。



「王子様……。実は、お願いがございまして……。最近、村はずれに得体の知れぬ男らが集まり、根城(ねじろ)を構えた様子で。どこからか若い娘を(さら)い、小屋に閉じ込めているのでございます……」



「なに!?……」



フェルゼンの顔色が険しくなる。



村長は続けた。

「もしも、この村の娘が(さら)われて……あいつらの毒牙にかかるのかと思うと、私も、若い娘を持つ村の連中も、おちおち夜も眠れません。どうか王子様のお力をお借りいたしたく……」



「……人攫(ひとさら)いか。俺の庭で、随分と不作法な奴らが居たものだな……おい、みんな、これから庭掃除の時間だぁ!! 賊を退治するぞっ……」

フェルゼンの声に供の騎士が「ははっ」と言い、集まってきた。



フェルゼンは即座に3名の騎士を連れ、村人の先導する馬に導かれて、村外れの森へと向かった。

フェルゼンの愛犬ラックも先導する馬に並び、走り出す。

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