第二十七章 本気の恋②
【前回までのあらすじ】
さらわれたアンジェを助けに向かった黒狼ルゥ(ルーク王子)でしたが、異母兄ギルバートが自分と同じように黒狼として生きていたことを知り、喜んだのもつかのま。黒狼ギルバートはアンジェの放つ甘い香りが"呪いを解くカギ"と確信し、黒狼ルゥよりも先にアンジェを手に入れようと攻撃をしかけてきます。そんな決闘中、二匹の前に狩人の男が現れ、黒狼ギルバートではなく、銃弾は黒狼ルゥへ。逃げ惑う黒狼ルゥは滝つぼへと落ちてしまい……
一方のアンジェ(川野)は、男らによって見知らぬ土地の物置小屋へと連れていかれ、鉄格子の檻の中へと囚われてしまいます。アンジェ(川野)は必死に助けを待ち、ようやく現れたのはラント国第二王子のフェルゼンでした。破滅ルートの攻略対象者であるフェルゼンは、アンジェ(川野)へ、いきなりのプロポーズ!?……
「……な、な……なんですって?」
フェルゼンの一目惚れ発言を聞き、グレイシア王妃の顔が驚愕に染まる。
アンジェ(川野)もまた、心臓が跳ね上がるのを感じた。
腰に回されたフェルゼンの手を、(……この、セクハラ大魔王……)と心の中で呟き、そっと払いのけた。が、すぐにまた、フェルゼンの手が腰へ廻された
「彼女は私の守るべき女性です。国政の道具にも、外交の犠牲にもさせたりなどしません。私の愛する女性を傷つけることは何人たりとも、母上であっても許さないと、ここで誓いましょう」
「あなたは狂ってしまったのですか、フェルゼン……これはいつもの『女殺し』の余興ですか」
「心から愛してやまない母上に、こうも信じて頂けないとは……フェルゼンは残念でなりません。私は本気です、母上。本気で彼女に一目惚れしたのです」
「……もう、勝手になさい。ただし、父上にはご自身で相談することね」
王妃は気分を害した様子で、アンジェ(川野)を鋭い瞳で一瞥し、ドレスの裾を翻して、数人の侍女を引き連れ去っていった。
先程から、フェルゼンが腰に回した手を、何度となくほどこうとしたが、逆効果だったようで、その度に彼の手は力をこめてアンジェ(川野)の腰を自分の身体へ密着させた。
気鬱な表情のまま、アンジェ(川野)は、フェルゼンに腰を抱かれながら、用意された客室へと案内された。
客室は白をベースに、いたるところに金の飾りが施され、金糸銀糸の刺繍が入った水色のカーテンも、この室内に調和していた。
外に面したテラスは大きなガラス扉になっていて、外の景色がよく見える。
美しく素晴らしい客室を使わせてもらえる有難さはある、が、それよりも先に、彼女は自分のこれから先の未来が何よりも不安に感じていた。
アンジェ(川野)は、こらえきれずに問いかけた。
「殿下……『一目惚れ』だなんて、なんで、あんな嘘を……それは、私にすぐにでも側室になれということですか? 夜の相手が目的で……愛人を囲いたい目的で私を連れてきたのでしょうか? 」
(……セクハラ大魔王のこの手、さっきから、滅茶苦茶うざいんですけど……まったく……)
アンジェ(川野)はムッとした心とは裏腹に哀しそうな顔を作りながら、フェルゼンが腰に回す手を静かに振りほどき、半歩後ろへ下がる。
「アッハッハ……レディ、いや、アンジェ。君は愉快な発想の持ち主だね……えっと、俺が愛人を欲しているかって……アッハッハ……ごめん、笑いが止まらないや」
不審そうに見つめるアンジェ(川野)をよそに、フェルゼンは笑い転げていたが、しばらくして、気まずそうに呟いた。




