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第二十四章 兄弟相(きょうだいあい)まみえる①

お待たせいたしましたm(*_ _)m

いよいよ第二部 第二十四章 62話からスタートいたします。



---ヴァレー国ダンテス・クレイモン伯爵領とラント国の国境近く ウンデルの森---



森の湿った空気が、アンジェの甘い香りと、滴り落ちる血と、卑俗な男たちの汗の匂いに混じり合い、黒狼ルゥの肺に重く沈殿していく。



ラント国の王子としてではなく、魔女に呪われた「黒狼」として、森の土を一蹴りするごとに、胸の奥が熱く燃え、思考が溶ける。



「アンジェ、アンジェ、アンジェ……」その名を声にすることは出来ないが、彼女の名前だけが脳内で何度も弾ける。



背後から聞こえるのは、治癒魔法師バルジャンの、魂を削り取るような絶叫だ。

男らが放った卑劣な弓矢に倒れ、動けぬ身体で愛しい女性の名を呼ぶ彼の姿を、黒狼ルゥは振り返ることができなかった。

バルジャンの悲痛な叫びを背に受けながら、黒狼ルゥは四肢を駆動させ、森の奥へ、さらに奥へ……と走る。



……不意に、凄まじい異臭が鼻腔を突いた。

「死臭を(まと)う獣臭」と、(みなぎ)る殺気を感じ、黒狼ルゥは肢を止めた。



前方の崖の上から、ザザザァッと巨大な黒い影が駆け下りて来た。

黒い影が着地した衝撃で土埃りが舞う。



「グゥゥゥウゥッ……」



鼻面に深い皺を寄せ、喉の奥から威嚇の唸り声を上げる、黒狼。

狂気に満ちた牙を剥き出しにして、攻撃の態勢を取る。



キラッ……太陽の光を受け、黒狼の前肢が光った。

黒狼の前肢にある銀の腕輪を見て、黒狼ルゥは頭を傾げて、対峙している黒狼を見つめた。

その様子に、銀の腕輪をつけた黒狼も、殺気を消し、牙の光る口を閉じ、黒狼ルゥを見つめクンクンと匂いを嗅ぐ。



「アゥーン……ウゥーン……」声にならない声で、黒狼ルゥが対峙している黒狼に呼びかける。

(兄上、ギルバート兄上……)



ギルバートはルークの母が亡くなった後に迎えられた王妃(継母)の連れ子で、ルークより2才年上だった。

ラント国の騎士隊長として、魔物討伐の折り、魔女の棲む洞窟で、強敵の魔物の手にかかり、息も絶え絶えだった兄ギルバート。



「……俺はもう駄目だ……ルーク……行け、後はおまえに任せた……」



それがギルバートの最後の言葉だった。

あの時、ギルバートは死んでいなかったのか……自分と同じように魔女の黒い霧を浴び、息を吹き返して黒狼の呪いを受けたのか……



黒狼ルゥが兄との再会を喜びを分かち合おう……とする直前、黒狼ギルバートが、突如として飛び掛かって来た。



「グゥワワァアァッ……」



一回り身体が大きい黒狼ギルバートは、重量級の体躯で躍りかかったが、黒狼ルゥはサッと身を翻して交わした。

が、次の瞬間、黒狼ギルバートは振り向きざまに、黒狼ルゥの横腹に牙をガリリッと引っかけた。

黒狼ルゥの腹部から血がしたたり落ちる。



黒狼ギルバートの金色の瞳の奥が毒を帯び爛々と輝く。



ふと、ギルバートの鼻が風の動きを感じたのか、ピクリと動いた。

黒狼ルゥもアンジェの甘い香りに気づく。

黒狼ルゥは悟った。

甘い香りの少女を永遠に独占したいと思う底なしの……欲求と本能。



兄ギルバートとは、皇位継承の確執も無く、何事も兄弟で支え合ってきた、48年前までは……その兄弟の絆は魔女の黒い霧と共に消えたのか……そんな感傷に浸る間もなく、黒狼ギルバートは憎悪を牙に宿し、威嚇する。



黒狼ルゥも鼻に皺を寄せ、牙を剥きだした。

(ギルバートにはアンジェを渡さない……俺だけのアンジェを……)



黒狼ルゥの心に、これまで経験したことのない激しい独占欲が渦巻く。

黒狼の俺を「ルゥ」と呼び、柔らかな腕で包んでくれるアンジェ、獣に堕ちた俺の身体に顔を埋めてくれるアンジェ……。



(アンジェは俺のものだ!! )



黒い獣二頭が、土埃りにまみれ、互いの肉を食い破らんとする乱闘を繰り広げる。

それは兄弟の再会などではなく、少女を奪い合う、本能のみに突き動かされた「雄」の死闘だった。



その時。


パァンッ――!



静寂を切り裂く乾いた銃声が、森に響き渡った。

黒狼ギルバートは、まるで背後にも眼があるかのような異常な反射神経で、飛来する弾丸をひょいと首を傾けて避けた。

が、弾丸は黒狼ギルバートの耳の先端を掠め、後方にいた黒狼ルゥの後ろ肢へと吸い込まれた。



「キャァーンッ!」



鋭い痛みがル黒狼ルゥの右後ろ脚を貫く。

熱い鉛玉が骨を砕き、黒狼ルゥは反射的に飛び上がると上空でバランスを崩し、地面へと叩きつけられた。


「見つけたぞ……この人食いの黒狼め……!」

第二部につきまして。

活動報告でも触れましたが、ご覧くださっていない方のために、後書きでも書かせて頂きます。



第二部では、ルークの弟フェルゼン王子と、黒狼、バルジャンの3人がアンジェ(川野)をめぐって、激しい火花が散る予定です・・・。



と、それとは別に、実はルークに想いを寄せる、かつての恋人ニナ・シエル・クラレンス侯爵令嬢が新たに登場(ニナはnoteの『転生皇女 不惑のアンジェ』で公開中です)。



ニナはルークが必ず自分の元へ帰ってくれると信じ、永遠の命と若さを手に入れるため、大きな代償を払いました……。結婚の約束を交わし一線を越えて愛し合ったニナと、プラトニックラブで恋愛待機中のアンジェ(川野)の、どちらの女性をルークが選ぶのか……というお話は第二部中盤以降になります。



第二部後半では、偽アンジェのジュリエッテが王宮内で愛人と好き放題、父のダンテス・クレイモン伯爵もヴァレー国の王宮内外で実権を得るため陰謀を企てて……、そして絵本「狼王子」の真実が明かされます……と、盛り盛りしちゃってます。


続きも書いていきますので、ブックマークも評価ボタンもぜひぜひお願いいたします。

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