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第十章 「告発の行方」②

その夜。

ダンテス・クレイモン伯爵はと妻マリーネ、娘のジュリエッテが夕食を取っていると、使用人が「旦那様、入り口に騎士様がお見えです」と呼びに来た。



伯爵は、今朝、教会が爆破されたことを知っていた。

王宮のジュリエッタが家族の心配をして 騎士を送ったのだと思っていた。




入り口に立つのは、二十代前半の若い男だった。

礼儀正しいが、どこか鋭い目をしている。



「エンゲル公爵様の命により、この地域の状況確認に参りました」



「ふぅん、そうか」

伯爵は気のない返事をした。

エンゲル公爵とは旧知の仲でも無く付き合いもない。



「伯爵様、大変申し訳ありませんが、今晩泊めて頂けないでしょうか。宿屋は爆発に巻き込まれて家を失った者が押し寄せ、泊まるところがないのです」



ダンテス・クレイモン伯爵は計算する。

この機会にエンゲル公爵へ恩を売っておこう、と。



「わかった。泊めてやろう。使用人部屋でも良ければな」



騎士のジャンは内心の不満を表に出さず、「ありがとうございます」と頭を垂れた。



簡単な食事の後、使用人部屋のベッドで眠っていたジャンは、夜中に眼を覚ました。



どこからか、オルドリア正教の経典をそらんじる声が聞こえてくる。

声を頼りに邸内を歩くと、どうやら地下のようだった。


地下の階段を下りると、地下牢の中の男が聖女へ祈りを捧げていた。



月明りが差し込む。ジャンと男は眼が合った。

男は深々と一礼した。



「あなたは、いったい、どうして閉じ込められているのですか?」



ガイは答えなかった。



ジャンは、この地に来た【本当の理由】を語り始めた。

伯爵の手の者ではないと知らせたかったのだ。



ドミナス派とミゼリア派の教会には歪んだ教義しかなく、神父は収賄で堕落し、聖女の加護も失われていること。


この世の不幸は、ルクス派の理想である「真の“崇高な正義”」によって救われるべきだと

いうこと。


ジャンは熱を込めて語った。


ガイは感銘を受け、自分もルクス派の活動に加わりたいと告げた。

そして、策略により囚われた身の上を語った。



「ガイ、今すぐ、ここを出よう。我々と一緒に、正しい教えを広めにいくんだ。多くの人間が救われる」



ジャンは外壁の鍵を使い、地下牢からガイを解き放った。



ガイの顔は殴られて腫れ、とても痛々しい。

だが、新たな道への希望に満ちたその表情はジャンには清々しく映った。



二頭の馬と、ジャン、ガイは、月明りの森へ向けて旅立っていった。

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