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第八章 「前世の記憶」④

アンジェは、昨晩から、ずっと夢の中にいた。



(話し声……自分の声……誰かと話している? ……)



(「推しの一条 椿さまぁ……陰キャラのルーク王子の声にぴったり!! 」「このイベントで、椿さまのボイスが聴きたいがために、2日も徹夜したんだよね、まさにその甲斐があったぁー、くうううっ」)



(って言うか、豪華声優陣4名だけが売りっていう、しょぼいゲームに、ここまでハマるなんて。ルーク王子の一条 椿様、義兄のガイに朝比奈 玲也様、フェルゼン王子に今 聖夜様、護衛騎士のエルジーに柳城 大雅様。でもエルジーはちょっと体育会系過ぎて、攻略対象から外しちゃったんだよね。だけど、破滅ルートと溺愛ルート二択とか、この半端なさっ。……よく、こんなシナリオで発売したよね、制作会社も……)




(『マジカルラブムーン』は銀髪の皇女アンジェが主人公。マジカルっていうから魔法を期待してたのに、杖もないわ、呪文もない……タイトル自体、なんかイマイチ。それにゲームスタートしてすぐ、悪女の従妹に皇女の地位を乗っ取られて、そこから破滅ルートか、溺愛ルートに進む。そうそう、これ名ばかり皇女なんだよね、最初っから最後まで使用人同然って設定だし。……)



(この溺愛ルートも最悪だった……ロリコン年上オヤジの貴族に嫁がされて溺愛されたうえ20人の子どもを産んで死ぬ……とか、醜い魔物の愛人として溺愛されるけど、魔物の妻の嫉妬で焼き殺されるとか……どうしてそうなるよ、溺愛なのに!! )



(破滅ルートも、マジヤバイ。義兄のガイに湖デートだと騙され、キスした思い出の湖で突き飛ばされて溺死寸前……と思ったら、ルーク王子に助けられるけど、この後すぐ美人の魔女を袖にしたからって、恨まれて呪いをかけられて黒狼になっちゃう。ルーク王子が人間の姿でいられるのは満月の一日。そのたった一日しか会話ができないから、告白イベントまで、マジ長っ。結末は、狂犬病に侵された黒狼ルークに食べられて死ぬ……哀れだった、アンジェ。ラストはしんみりしちゃった)



(ガイの湖デートを断るモードを選ぶと、今度は売春宿に売り飛ばされて、遊びにきたフェルゼン王子に見初められて側室になるんだけど、フェルゼン王子がプレイボーイのせいで何十人もいる側室の一人にされ、他の側室に嫉妬され毒を盛られて死ぬとか、だったよね。あっ、もうひとつあった。義兄と叔父の愛人として地下牢で飼育されたんだ、で、騎士のエルジーが助けにきて、逃げている途中にドラゴン襲われ、卑怯なエルジーが、アンジェをドラゴンの餌に置いて行くんだっけ。アンジェはドラゴンに愛され過ぎて、熱い炎の息をかけられ焼け死ぬ。って言うのは、エルジーが攻略対象の友達から聞いたけど……)



(ちょっと、このシナリオ書いた人、なんか病んでるんじゃない? と思いながらも、私の推し声優男性4名総出演だから、ぐえええーとか、ヤバすぎるでしょ……、やめてぇ、死ぬ死ぬぅ……とか、なんだかんだ言いながら、イベントの囁きを楽しみにプレイしてたんだよね。しかも、囁きって、破滅か溺愛のルートを究めないと起こらない。椿さまのセリフ、思い出すぅ。『この空のオーロラよりも君の方が美しい。永遠に愛している、私のスイートハート。もう君を離さない、一生、私のそばにいてほしい。君のためなら、死ねるよ、ほしな』とか、名前を言っちゃってくれるから、辞められなかったんだよな……うん? あれ? なんで、いま、『マジカルラブムーン』を思い出しているわけ?)



(あっ、いま病んでたりしてる?……私)



(そう言えば、明日で派遣契約が終了しちゃうんだったぁ。アシスタント事務なんて、雑用係そのものみたいな仕事だったけど、一応、日本有数の商社である四隅商事(よつすみしょうじ)の広報部だから、友達から、うらやましがられたっけ。2ケ月更新の派遣社員だったけど)



(四隅商事と言えば、一流大学の卒業者が目白押し。本社ビルのエレベーターで石を投げたら、ほぼ全員が偏差値70以上。元号が昭和から平成、令和へと変わっても毎年の求人100名に対して、全国から2万人が応募するという風潮はまったく変わらない)



(そしてこの超難関の壁を突破した者だけが入社してくるのはエリートばかり。中でも広報は花形部署、で、運よく派遣社員の契約で2年目)



(それなのに派遣会社からの突然の契約終了の連絡って、マジかい。しかも上司の広報部長が、派遣会社の担当営業マンに話した言葉は、脳みそ沸騰ワードがてんこ盛り)




(「広報部は30代以下の人員で構成したい」と。「川野くんの仕事ぶりは評価しているが、40代になるとは残念だ」と、おおぉー、むかつく。……あの、テッペンつるりんちょ、イケおじだと信じて疑わない超ナルシストの49歳め。私の仕事ぶりを評価してるんなら、契約更新してくれよぉぉ……毒づく言葉が脳内にブワンッ、ブワンッ、これでもかと溢れ出たね、あの時は)



(あれ……それで、ブチンと切れて、缶チューハイ4本飲んだんだよね、確か……唐揚げ1個残しちゃった……冷蔵庫へ入れなきゃ、で、寝た……冷蔵庫に入れなかった……で、いま目覚めた? え? 目覚めてる、いま? )

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