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第一章 ”金の指輪のタトゥー”と皇女①

サンクロニア世界紀950年。

50年ごとに「奇跡の聖女」が生まれるこの世界は、広大な海に囲まれた一つの大陸に、東のヴァレー国、中のベルス国、西のラント国の三王国で成り立つ。



各国とも唯一神『聖女』信仰の教義に基づくオルドリア正教に則り(のっとり)、女児が生まれたら7日間以内に、教会内で”光聖水”の洗礼を受ける決まりだった。それが富める者であれ、貧しい者であれ。



オルドリア正教の洗礼は、教会の神父が女児の左手薬指に”光聖水”をかけて行う。

”光聖水”によって現れる”金のタトゥー”は、古来より、聖女出現の目印とされていた。



そのため、各地の教会では、聖女の恵みによってもたらされた”光聖水”の泉を厳重に管理し、洗礼の儀式は、神父のみならず、多くの人々が尊ぶ儀式でもあると言えた。



”光聖水”による洗礼を受けた女児の100人に1人。

左手薬指に金色の指輪型のタトゥーが浮かび上がった。

巷では、これを”金のタトゥー”と呼んだ。



本物の金属の指輪のような質感を伴う”金のタトゥー”。

この”金のタトゥー”を持つ女児こそ、未来の聖女候補者であった。



人々は聖女候補者に出会うと、一日も早い聖女の誕生を祝福する言葉を贈る。



「……聖女様のご加護に、恵まれますように……」



”金のタトゥー”には、二つの特徴があった。



一つは、世界に奇跡の聖女が現れたとき、

もう一つは、聖女候補者が純潔を失ったとき、

”金のタトゥー”は、消えるのだった−−−−−。



サンクロニア世界紀950年の今年は、50年に一度の奇跡の聖女が出現する年であり、人々の信仰心が最高潮になる年でもあった。



奇跡の聖女は、すべての病と怪我を癒し、荒廃した大地を豊穣の地へと変え、人々に安息をもたらす−−−聖女こそがオルドリア正教の唯一神。

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