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『名前を失う前に、世界が壊れ始めた』  作者: 久遠かける
第三章 選択が、意味になるまで

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意味は、遅れてやってくる

ここまでお読み頂きありがとうございます。


世界は、

まだ結論を持たない。


《確定処理:未実行》

《評価:保留》


それは、

迷いではない。


結論を

急がないという

選択だ。



朝は、

いつも通り訪れる。


光は差し、

風は流れ、

人は目を覚ます。


だが、

世界は知っている。


「同じ朝」は

もう存在しない。


昨日と同じ構造で

始まっても、

同じ意味には

ならない。



澪は、

家を出て

一度立ち止まる。


進む方向は

決めていない。


それでも、

迷ってはいない。


「……あとで考えよ」


そう言って、

一歩を踏み出す。


世界は、

その一歩に

理由を付与しない。


《行動:未意味化》



街では、

些細な選択が

積み重なる。


早く店を開ける者。

今日は休む者。

いつもと違う席に

腰を下ろす者。


誰も、

“正解”を

気にしていない。


世界は、

それを異常としない。


《最適化:非適用》



恒一は、

高台から

街を見下ろす。


混乱はない。

崩壊もない。


だが、

確かに

制御は効いていない。


――やっとだな。


世界は、

まだ自分で

歩けない。


それでも、

手を離したまま

進み始めている。



昼。


澪は、

見慣れない露店で

果実を買う。


味は、

少し酸っぱい。


「失敗したかな」


そう思う。


だが、

全部食べる。


世界は、

その判断を

修正しない。


《評価:未確定》



午後。


街角で、

言い争いが起きる。


結論は出ない。


誰も、

世界に答えを

求めない。


「今日は

ここまでにしよう」


その言葉で、

場は解散する。


未完のまま、

時間が流れる。


世界は、

その未完を

抱え込む。



夕方。


澪は、

丘を見上げる。


昨日は

登った場所。


今日は、

登らない。


それだけだ。


だが、

「登らなかった」という

事実は残る。


世界は、

それを消さない。


《非選択:履歴保存》



恒一は、

静かに息を吐く。


意味は、

まだ生まれていない。


だが、

生まれるための

余白がある。


それが、

何より重要だ。


――意味は、

 後から追いつく。



夜。


灯りがともる。


誰かの選択で

灯った灯り。

誰かの選択で

灯らなかった灯り。


世界は、

それらを

同じ重さで扱う。


初めて、

差を急がない。



世界は、

理解し始めている。


意味とは、

選んだ瞬間に

完成するものではない。


振り返られ、

繋がれ、

語られたときに

初めて

形になる。


だから今は、

語らない。


急がない。


選択だけが、

静かに

積み上がっていく。


それでいい。


この世界は、

ようやく

待つことを

覚えたのだから。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

感想やご意見など頂けますと、とても励みになりますので宜しければ是非お願い致します。

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