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明治あやかし遊郭~ジンガイ・セツクス・エデユケエシヨン~  作者: 百合川八千花


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37「だいだらぼっち」

「でかすぎる!!」


 天の声が広い宴席に木霊する。

 気づけば目の前には一丈五寸(5メートル)はありそうな巨大な男が、天を見下ろして笑っていた。

 小柄な天は山王丸の膝ほどの身長しかなく、どれだけ見上げても顔が見えない。

 ここが妖遊郭の特殊な形状でなければ、屋根を突き破ってしまっていただろう。

 

「はっはっは、そりゃあたり前だろう。俺はだいだらぼっちだからなあ」


 山王丸はそう笑うと天を軽々と摘まみ上げる。

 巨大な手に包み込まれた天はまともに抵抗もできない。まるで釈迦の掌の上で暴れる孫悟空のように、じたばたともがくだけだ。


「ひゃっ……」


 だが、恐ろしいことに天を握っているのは釈迦ではない。

 欲を持った妖の指が天の体をなぞる。

 壊さないように、しかし刺激するように力を込めて体を揉まれると、天から甘い声が漏れた。


「おお、いい声だねえ」

「ちょっ、やめっ……あんっ」


 大きな指が天の胸を探る。ぐりぐりと刺激をされると、鰻で火照った体がじわりと熱を持つ。

 山王丸は笑いながら、贈り物の包みを開けるかのように天の帯をほどく。

 山王丸の大きな掌の上でなまめかしい肢体があらわになるが、天は恥じらっている場合ではない。

 こんな化け物とこれから何をするというのか、その恐怖に体がこわばった。


「だんまりかい? らしくないぜ、天ちゃん」

「その呼び方……やめえ……」


 【天ちゃん】そう呼ばれるとかつての恋人の誉を思い出す。

 山王丸は乱暴で、破天荒で、しかし情熱的で……どこまでも昔の男を思い出させる男だった。


 べろり

 

 山王丸の大きな舌が天の裸体を舐める。

 今までに感じたことのない大きな刺激に天は甘い声を上げる。

 決して喜んでいるわけではないが、初めてだらけの感覚に理性が追い付かなかった。


「俺ぁこんなんだからな、いままで人間の女は抱いたことがねえんだ。ほら、教えてくれよ」

「まずは、降ろさんかい」


 はぁはぁと、山王丸の掌の上で天は甘い快感に耐えていた。

 相手が人間が初めてなら、こちらもだいだらぼっちなど初めてだ。

 圧倒的な体格差のもたらす暴力的な刺激に天は腰が抜けそうだった。


「いやだね。降ろしたらアンタが見えなくなっちまう」

「身長を小さくせんかい! どのみちこの対格差じゃ何にも……」

「ナニを、するってんだい?」


 山王丸は怪しく笑うと、自らの着物の帯をほどく。

 天と同じように甘い期待を含んだ猛りが山のように隆起しているのが見えて、天は悲鳴を上げた。


「無理や! デカすぎる!!」

「いやあ、そんな褒められると嬉しいもんだねえ」

「本気で言うてんねん!」


 その猛りは天の胴体ほどもある凶悪な大きさ。

 入る、入らないの問題以前の巨大さに天は悲鳴を上げて逃げ回る。退魔師としても、遊女としても矜持など持っている場合ではなかった。このままでは壊されてしまう。


「じゃ。お手並み拝見……」

「待てー! 殺す気か!」 

「いいねえ。女のその台詞が、俺はいっとう好きなんだ」

「その女どもはちゃんと生きて帰ったんやろなあ!?」


 逃げようとした体を山王丸の指でぎゅうと押されて、天はまったく動けなくなる。

 凶悪な体格差による交わりなど、受け手の寿命を縮めるだけだ。

 

 壊されてしまう、殺されてしまう。

 そんな時に天が口にしたのは――禁の名だった。


「大旦那様! 禁さん!」


 厄介な客がいます! そう言えば店を守るために来てくれないだろうか。

 そう願いを込めてその名を呼ぶ。

  

「そこまでだ!」 

 

 そして禁は、その声にこたえてくれた。

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