セックスフレンド
kと関係を持った僕はベッドで彼女と余韻に浸っていた。その間もkはずっと自分の体を僕に押し当て、体温が僕に伝わる姿勢で添い寝している。
それにしても……
前戯を含めて彼女は、少なくとも五回以上は絶頂に達していた。男は一回の行為で一度しか出来ないのに……僕は女という生き物が羨ましく、同時にずるいとさえ感じた。
このkという女性、見た目とは裏腹にかなりのセックス好きだ。まるで磁石の様に僕の体へ吸い付き離さない……まさに肉食系女子と言っていいだろう。
だが決して、僕がそんな彼女に冷めてしまった訳ではない。僕が「こうして欲しい」と思った事は全てしてくれて、お陰でとても満足することが出来た。
「とっても良かったですよ、レイトさん」
kは僕の目を見て微笑んだ。
「あぁ……僕もですよ」
「私ね、本っ当に久しぶりのセックスだったからすごく興奮しちゃったの! ゴメン、引いた?」
「いっいえ! そんなことは……」
二十歳だよな? この年でセックスが久しぶりって、どれだけ経験豊富なんだこの女性は!?
でも一回だけだがkとのセックスはとても気に入った。別れた彼女とはタイプが全く違っていたがそれも良かった。もし前の彼女を少しでも思い出すようなことがあれば、その時点で気が滅入ってしまい本気にはなれなかっただろう。
この女性とまた関係を持ちたい! 何ならこのまま待って僕の精力が回復したら延長料金払ってでも……ところが、
「あっもうこんな時間だ! レイトさんごめんなさい! 私、次の仕事があるのでこれでチェックアウトしますね」
と言うとkは、まるで十二時を告げる鐘の音を聞いたシンデレラの様に、急いで帰り支度を始めた。
※※※※※※※
「えっ、本当にいいんですか?」
僕は部屋の出入り口に置かれた自動精算機の前で彼女に尋ねた。事前に「ホテル代は私が出します」と言っていたkだが、まさか本当に出すとは思っていなかったからだ。
「えぇもちろん! 今回会う約束も、私がかなり無理言いましたからね」
精算機の前でkが自分の財布を取り出した。二十歳の女の子が持つには分不相応な高級ブランド品だ。しかも……
「あ、現金(で支払い)なんですね?」
彼女の財布から大量の一万円札が見えた。フリーターってそんなに稼げるとは思えないが、何のバイトをしているのだろうか?
「えぇ、カードは私が管理してないから……明細でバレちゃうんですよ」
ラブホテル代をカードで支払った場合、利用明細書にはホテル名と別の名前で表記される。だが聞いたこともない会社名だからと執拗に追及されれば、ボロが出るのは時間の問題だ。
そうか、kは家族と同居してるのか……でもって家がお金持ちに違いない! そうでなければフリーターであんな大金を持ち歩くのは不自然だ。僕も半分はフリーター生活してるからわかる。
※※※※※※※
「あっレイトさん、ごめんなさいね」
下りのエレベーターでkが再び謝り出した。
「えっ、何をですか?」
「だって……」
そう言うとkは僕に近づき耳元で囁いた。
「もう一回、したかったんでしょ?」
どうやら見透かされていたようだ。もちろん答えはイエス! まだkのことは何もわかっていないが、もう一度抱きたい女性なのは間違いない。
「レイトさんは、私以外にセフレがいらっしゃるんですか?」
「いえkさんだけですよ! マッチングアプリもこの間使い始めたばかりで……」
完全にマウントを取られそうな台詞だが、ここは正直に言っておこう。
「そうなんですか、実は私もマッチングアプリ使うの初めてで……こういう形で男の人と知り合うのも初めてなんですよ」
えっマジか!? てっきり経験豊富な人と思っていたが。
「私たち……正式なセフレになりませんか?」
「えぇ、僕もまたお会いしたいです」
「じゃあレイトさん、今後セフレを増やす予定は?」
いきなりラスボスが現れたのに他の敵キャラを相手にする暇など無い。僕が「無いです」と言うとkは「会費が掛かるから」とマッチングアプリのサイトを退会するよう勧めてきた。
代わりに彼女と連絡先を交換して、僕たちは正式に「セックスフレンド」という関係になった。




