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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第八章「発覚」
63/72

スキャンダル

 

「マジかよ……」


 ラブホの騒動から数日後、僕はコンビニで手に取ったゴシップ誌「週刊ルード」を見て驚愕した。そこには桂こと相模絵美菜がラブホテルを出る写真と共に記事が掲載されていたのだ!

 僕は確かに週刊ルードの記者・中川とカメラマン・綾瀬に、僕たちの写った画像を全て目の前で消去させた筈だったのだが……何故だ? ちなみに僕の写真は掲載されていなかった。


『あぁ、やっぱりアイツらか』

『よくやる手口だよ』


 僕は酒匂梅子とニャインでやり取りしていた。梅子の話では、既にネット経由で画像を編集部に送信したか、メモリーカードをこっそり入れ替えた可能性があるのだそう……まんまと騙された!


『でもまっくんの健闘は効果あったみたいだよ』

『記事よく読んでみな』


 タイトルは「国民的アイドルグループの()()()()() ラブホテルから朝帰り」と書いてある。記事には「相模絵美菜に()()()()女性が」とも……なるほど、本人と断定した表現では無い。

 だがこの記事をよく読むと、この女性が相模絵美菜である……と決めつけている様な表現で書かれている。でも僕が言った「セフレ」という言葉はどこにも見当たらない……流石に常軌を逸した主張で、これでは読者の理解を得られないと判断したに違いない。


『これのどこが健闘?』


 僕は思わず梅子に聞いてみた。これじゃ誰がどう見ても相模絵美菜のスキャンダル記事だ。完全にやられた……敗北だろう。


『タイトルに(?)マーク付けさせただけで十分』

『つまりアイツらに本人と確信させなかったってことだよ』


 梅子の推測では……恐らく週刊誌側は当初、相模絵美菜本人と確信して記事を書くつもりだった。ところが僕が彼女の事を「セフレ」と……しかも堂々と主張したため、彼らの確信が揺らいでしまったのでは? という事だ。

 だがネタとしては読者の興味をそそり、写真の女性が本人だった可能性も完全に否定出来ないため(実際に本人だし)掲載に踏み切ったのであろう。ま、堂々と主張って……僕は本当の事を言っただけだからなぁ。

 虚偽の報道なら法的措置が取られる可能性がある。告訴上等と強気な態度を取っていた彼等だが、やはり裁判は避けたいのが本音だった様だ。と、そこへ……


『こんばんは』


 ――えっ?


 相模絵美菜……もとい桂がニャインのやり取りに入って来た。巷ではニャインの流出が問題になっているが、僕たちはアカウントの乗っ取りやパスワードの設定などには細心の注意を払っている。桂に至っては「相模絵美菜用」「鮎川桂用」と二台のスマホを所持しており、当然僕たちは「鮎川桂」とニャインをしている。


『ふたりともゴメンね』

『私が油断したばっかりに』


 桂は改めて、自分のせいで今回の事態を招いた……と自分を責めていた。そんな事は無い……油断していたのは僕等も一緒だし、むしろ記事にされてしまい桂を守れなかった事に責任を感じている。その事を桂に伝えると、


『事務所からは何か言われた?』


 今度は梅子が桂に聞いてきた。


『聞かれたけど』

『梅ちゃんから言われた通りにしたよ』


 今回の様な場合……週刊誌はリスク回避のため、芸能人の所属事務所へ事実確認を兼ねて掲載の事前通告をするパターンが多いらしい。

 桂の話だと、当初は事務所から色々聞かれたが、梅子に言われた通り「知らぬ存ぜぬ」を通したそう。しかも写真が不鮮明で、週刊誌側の主張も確証を得るレベルでは無かったため、事務所側も相手にしない……という方針にしたらしい。


『でも謹慎喰らっちゃった』

『SNSも当面禁止』


 だが世間の反応は予想以上に大きかった。元々別のメンバーの不祥事や芸能界引退が続いたグループ……そこへ降って湧いた今回のスキャンダル、疑惑の域を脱しないとはいえ世間の注目を浴びるのは当然だろう。

 ネットでは記事を全面的に信じる者、信じない者の間での論争や、相手の男が誰なのか? という考察まで行われていた。

 桂こと相模絵美菜は「自分ではない」と改めて主張し、事務所もそれを支持する形で公式に発表した。相模絵美菜が公式発表以上に余計な事を言わない様、彼女のSNSは一時凍結してマスコミの前にも出さない措置を取った。

 週刊誌側も本人だとは一言も主張していないので法的措置は行わず、このまま沈静化するのを待っていたのだが……

 沈静化どころか騒動は日を追う毎に拡大……連日テレビのワイドショーで取り上げられていた。中には荒川夢乃や利根香澄のトラブルと強引に結び付ける番組まで出てしまい、文字通り尾ひれが付いた形だ。挙句の果てに、カントリバースの出演する番組やCMを降板……という騒ぎにまでなって来たのだ。


『梅子どうするの? 作戦があるって言ってたよね』


 僕は梅子にメッセージを送った。事態は想像以上に悪い方向へ向かっている……彼女は本当に騒動を収束させる事が出来るのだろうか? 梅子は


『私に任せて』

『二人とも、私が言った通りにしてくれたから助かったよ』

『ありがとう』


 というメッセージを残し、それ以降トークに参加する事は無かった。



 ※※※※※※※



 僕たちがニャインでやり取りしてから数日後、とあるネット記事が世間を騒がせた。タイトルは……



『【実は私です】ものまねタレント、相模絵美菜になりきっていたと告白!』



 ラブホから出て来た女性は相模絵美菜ではなくモノマネした自分だと、ものまねタレントの梅子こと「相模厚着」がマスコミに告白したのだ。

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