セフレです
僕がラブホを出て来た所を週刊誌のカメラマンに撮られた。だが僕は一般人……桂(相模絵美菜)の様な芸能人、所謂「準公人」と違い肖像権が認められている。
梅子に言われた通り、肖像権をチラつかせて告訴という言葉を使ったが、週刊誌の記者・中川は告訴しても構わないと言い放った……何なんだこの男は?
「では確認ですが……先にホテルを出られた女性は、あなたの彼女さんという事で宜しいですね?」
確認……と来やがったか!? つまり先に出たのが相模絵美菜と「確信」した上での発言だな?
「いいえ、違いますよ」
僕は梅子から予めレクチャーを受けた通りに答えた。
「おかしいですねぇ……じゃあ、あなたは何故お一人でラブホへ? デリヘルでも頼んだのですか?」
中川は怪訝そうな顔をした。当然こんな僕の言葉など信じないだろう。
「あっ、いえ! 彼女は僕の知り合いですが……恋人ではありません」
「え?」
「だって恋人だったら一緒に(ラブホを)出るでしょ?」
「ま、まぁ……そうだね」
恋人ではない……と言われ、中川とカメラマンの綾瀬はお互い顔を見合わせ首を傾げた……でも僕は嘘をついてない。
「えっ、ちょっと待ってください! 恋人じゃなかったら……失礼ですが、あなたご結婚は?」
なるほど……今度は不倫の線を疑って来たか?
「独身ですが……あっ、不倫とかそういうんじゃ無いですよ」
僕は左手を中川に見せ、結婚指輪が無い事をアピールした。
「じ、じゃあ率直にお伺いしますが、あなたは……あの女性とどういう関係で?」
来た! その質問を待っていた! 僕は梅子に言われた通り、ある「言葉」を口にした。
「セフレです」
その言葉を聞いた中川と綾瀬は目を丸くして再び顔を見合わせた。それもそうだろう、二人は先に出て来た女性が相模絵美菜だと信じて疑わない。そんな現役トップアイドルが「セフレ」……真実なら日本中が大騒ぎする大スクープだ。流石に常軌を逸した発言だと彼らは思ったであろう。
……ま、真実なんだけど。
「いやいや、冗談はやめてくださいよ」
「えっ、何でですか?」
「あのねぇ、あなた! あの娘はカントリバースの相模絵美菜ですよ! あなたも東京ドームに居たから知ってるでしょ!? 現役アイドルがセフレって……ふざけないでください!」
中川は苛立ちを覚え、ついにその名前を出してしまった。有名ゴシップ誌の記者でも流石に「現役トップアイドルがセフレ」という発想は無いらしい。
「えぇ知ってますけど……彼女が相模絵美菜な訳ないじゃないですか!」
「え?」
「彼女はマッチングアプリで知り合ったkという女性です! セフレですからお互いの素性は何も知りません」
「……」
「まぁ確かに……言われてみれば似ているかも知れませんが、流石に本人じゃないでしょう!? まぁ百歩譲って『そっくりさん』ですかねぇ?」
「じゃあ何故あなたは東京ドームに居たんですか!? あなたは彼女のファンでは無いのですか!?」
そういやあの時も、この男は僕の事を疑ってたよな? 何でだろう?
「バイトですよ……それと僕はファンじゃないです! そもそもファンだったら会場でバイト出来ませんから」
「うっ!」
僕の一言で中川はぐうの音も出なくなった様だ。どうやらファンのイベントバイト参加がNGというルールを知っている様だ。それと、僕は渡良瀬碧のファンであって相模絵美菜のファンでは無い……この点に関して嘘は全くついてない! すると中川はカメラマンの綾瀬に向かって
「……綾瀬君、さっきの写真はボツにしよう」
写真を使わない様に指示を出した。
「あぁすまなかったねキミ、誤報の可能性がある記事に一般人の画像を使うのは流石にマズい」
いや、真実のゴシップ記事でも使うのマズいだろ?
「じ、じゃああなたの写真は使いませんので……もちろん黒目線やモザイクで掲載する事も無いですからご安心を」
こんな連中の言う事など信用出来るか!? 僕は少し強気に出た。
「でしたら……目の前で消去してください」
「えっ!? あ、あぁわかった……綾瀬君!」
僕は目の前で自分が写った画像の消去を確認した。カメラマンの綾瀬という男はカメラを操作中ずっと苛立っていて、何時僕に殴り掛かって来ても不思議ではない雰囲気だった。
僕は「自分のセフレで一般人だから」という理由で、桂の画像も消去する事を要求した。彼らは「全消去した」と言い、僕の画像も含めてメモリーに何も無い事をアピールした。
これで僕も桂もゴシップ誌に画像が載る事は無くなった! そう安心していたのだが……甘かった!
数日後……
僕の反撃も空しく……桂こと相模絵美菜がラブホテルを出る写真が、ゴシップ誌の「週刊ルード」に掲載されてしまったのだ。




