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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第六章「友情」
44/57

リハーサル

 カントリバースのメンバーがステージに登場。いよいよリハーサルが始まる。


「よろしくお願いしまーす!」


 メンバー全員が挨拶すると同時に演奏が始まり、彼女たちはステージいっぱいに広がった。へぇ、オープニングはこの曲なんだ! などと勝手にライブを想像していると……あれ?

 突然演奏が中断し、メンバーやスタッフが集まって何やら真剣に話をし始めた。そうか、これはリハーサルであって本番ではない……僕にはわからない細かい調整とかあるのだろう。

 桂(相模絵美菜(びーなす))はというと……おっ、僕の「推し」渡良瀬碧(ぐりんちゃん)と振付の確認をしているじゃないか! 桂も真剣にやってんだなぁ……と思っていたら、


「やったなコラァ」

「うるさいばーかばーか」


 二人は突然ふざけ出した……まるで女子高生のノリだが、こんな大きな会場なのに緊張しないのか? あと桂はわかっていたが、ぐりんちゃんもテレビで見る時とキャラが違っている。

 そんな中、一人だけ明らかに緊張しているメンバーが……今日のライブで卒業する利根香澄(かすみん)だ。何か思い詰めた表情で、歌が余り聞こえずダンスも覇気が無い。

 まぁ卒業公演という事で緊張しているのだろうが……本番でちゃんと歌えるのか心配だ。そんな時、


「かすみーん、元気ないぞー気合い入れろー!」


 桂が声を掛けた。いや落ち込んだ相手にその声掛けは逆効果だ。だが続けて、


「かすみん! 今日の()()()が終わったらシャバに出られるぞ! そしたら君は晴れて自由の身だ!」


 おいカンリバは刑務所かよ!? 僕が心の中でツッコむと他のメンバーも、


「大丈夫! お前の裏垢は絶対探さないから、思う存分にこる(多摩川二子)の悪口書いていいぞ!」

「ついでに明日からにこるのニャインはブロックしておけー」

「ちょっとぉ! 私が何したって言うのよ!?」

「あははははっ」


 メンバー同士でかなりキツイ冗談を言い合っていた。それを聞いたかすみんは耐えられず「ぷっ!」と失笑してしまった……どうやら緊張が解れた様だ。

 ネット上では色々と言われてるが、彼女たちは本当に仲が良いんだな。こうしている間もメンバーが一人一人かすみんに近付いては、さり気なく肩に手を置いたりして励ましている。


 そういえばさっきから気になる事が……。


 リハーサルの時、彼女たちは全員「ビブス」という物を着用している。よくサッカーの練習試合とかでチーム分けする時に着るタンクトップみたいなアレだ。全員の名前が大きく書かれ、色はそれぞれのメンバーカラーになっている。

 リハーサルなのでステージの片隅にメンバーの飲み水やタオルが置かれていたのだが、そこにビブスらしいものが一枚置かれていた。広げてないので誰の物かわからないが、あの色……メンバーカラーがローズレッド……間違いない!


 スキャンダルでカンリバを脱退した元リーダー・荒川夢乃(ゆめのん)の物だ!


 でも何で? ネットニュースではスキャンダル発覚以降、他のメンバーと確執が生じたと報じられていた。彼女たちにとって荒川夢乃(ゆめのん)は「NGワード」だとも言われている。まぁ桂は特に何とも思っていない様だが、多摩川二子や一部ファンの間でその名前は完全に封印されているらしい。


 じゃあ何でゆめのんのビブスが……謎だ。


「あっ君! 確かライブスタッフもバイト入ってるよね? じゃあもう時間だから上がっていいよ」

「あっはい、失礼します」


 僕はバイト先の社員に促され会場を出た。すぐに着替え、今度は会場スタッフとしてバイトに入る。

 設営が六時間、スタッフが二時間のアルバイト……割増料金(残業代)は貰えないか……残念。



 ※※※※※※※



 十分に休憩を取って再び会場へ入る。外はすっかり暗くなり、設営の時とは会場の様子がガラリと変わっていた。

 もうすでにお客さんが入場、開演を待ち望んでいる状況だ。遅れて入って来た僕は、二階席の誘導、警備を行う事になった。残念、アリーナ席じゃなかったか……まぁ仕方ないな。


 バイト先の社員から簡単な説明を受け、いざ二階席へ向かおうとした時


「あれ? 鶴見さん!」


 僕を呼び止める声が……神田君だ! 彼は水色の法被にうちわ、ペンライトなど王道の推し活グッズに身を包んでいた……もちろん全て相模絵美菜(びーなす)推しだ。


「あぁ神田君、さっきはお疲れ様」

「えっ鶴見さん、ライブスタッフ(のバイト)もやられてるんですか!? タフですねぇ、普通は設営かスタッフのどちらかですよ!」


 神田君は目を丸くして驚いていた。まぁそうだな、僕も自分の頑丈さにほとほと呆れていた所だ。

 どうやら神田君の席はアリーナの最前列らしい。よくこの席取れたよなぁ、羨ましい……と言いたい所だが、神田君は僕がカンリ人(ファン)だと知らない。


「じゃあ神田君、ライブ楽しんでね」

「はいっ、鶴見さんも頑張ってください!」


 僕は神田君に軽く手を振って二階席へ向かった。

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