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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第五章「嫉妬」
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偽装デート

 酒匂梅子と関係を持ってからというもの、桂の様子に変化が表れて来た。セックスの際、事ある毎に梅子と比較するようになったり……彼女は何か不安を抱えている様にも見えた。

 桂の精神的負担を思うと、このまま梅子との関係を続けて良いのだろうか……僕が悩んでいると、その張本人・梅子からニャインが来た。


『突然だけど、今夜予定ある?』


 梅子からの「お誘い」だ。一応、彼女にも「空いてる日」は教えてある。


『ないけど』

『じゃあ今夜会わない? 場所は……』


 梅子との関係は解消した方が良いのかも知れないが……とりあえず一度会って話をしない事には先に進めない。僕は梅子と会う約束をした。



 ※※※※※※※



「お待たせ―、遅れてごめーん!」


 その日の夜……僕は駅前の広場にあるオブジェの前で待っていると、五分程遅れて梅子がやって来た……遅刻というレベルでは無いが、彼女は申し訳無さそうな顔をしていた。


「いや大丈夫だけど」

「そう? 良かった……それにしても、何度見ても変な銅像ね?」


 えっ、そうかな? これは僕も尊敬する有名な彫刻家の作品なんだけど。梅子がやってくる前に、僕はこの彫刻の写真を何枚も撮っていた。まぁそんな事をしていたのは僕一人だけだったが。


「じゃあ行こうか()()()()!」

「あ、はぃ……うん」


 まっくんは桂が僕に付けたニックネームなので正直違和感を覚える。僕は梅子と二人並んで駅前の雑踏の中を歩き出した。実は前々から梅子が行きたいと願っていた高級レストランがこの近くにあるらしい。

 だがこの店は男女カップルが多く、女友だちとは入りづらいそうだ。そこで梅子は、僕を恋人に見立てて入ろうとしている……つまり僕は「偽装彼氏」だ。


 今夜はセフレの密会……というよりデートと言った方が近い。だが僕は、偽装とはいえ久し振りのデートを楽しんでいる。と言うのも……

 桂の正体はアイドルの「相模絵美菜」だ。いつもはラブホテルの「部屋」でしか会う事がない。街中で大っぴらにデートなんかしたら日本中が大騒ぎになる。ラブホの近くで待ち合わせする事さえ不可能なのだ。

 それに引き換え酒匂梅子は、一応テレビにも出た事がある「芸能人」だが知名度はほぼ皆無。しかも相模絵美菜のメイクをしていない時はほぼ別人。ツーショットで堂々と歩いていても、どこにでも居る普通のカップルにしか見えない。



 ※※※※※※※



「うわっ、これマジヤバい! うっまー!」


 高級レストランでの発言としては相応しくない感想を述べながら、梅子は料理を美味しそうに食べていた。

 ここはビルの最上階にある高級レストランだ。こんな店、テレビドラマでしか見た事が無い……本当に夜景が奇麗なんだな。

 梅子こと「相模厚着」はまだ知名度の無いものまねタレント……生活はとても苦しいが、食べ歩きが趣味の彼女は外食のために貯金しているらしい。


「ほらっ、()()()()も食べなよ! 私が誘ったんだから……当然おごるよ」

「えっ、あぁ……すみません」


 まさかこんな高級料理をご馳走になるとは。セフレの関係なのに……今までは桂との付き合い方が「セフレ」というものだと思っていたが、梅子と知り合った事でその概念が変わってしまいそうだ。



 ※※※※※※※



「あぁ美味しかった! 幸せ―」


 僕と梅子は高級レストランを後にした。彼女はとても満足そうだ。


「今日は楽しかったわー」

「僕もです」


 桂とは絶対に出来ない体験をした僕も満足していた。しかも食事代まで出してもらって申し訳ない……って!

 いやいやマズい! セフレの関係を解消したいとか言っておきながら、これじゃズブズブの関係になってしまうじゃないか!?

 沼にハマらない様にしたい所だが、桂とは違う制限の無い付き合い……まぁこれは良し。だが今の状態では桂に悪影響を与え兼ねない……これは困った事。しかも今、無碍に断ったら今度は梅子を傷付ける事になる……どうしよう!?


 でも今夜はこれで解散っぽい流れだし、もう一度慎重に考えて答えを出そう。


「今日は有難うございました。それとご馳走様です。では……」

「えっ、何言ってんの!?」


 帰ろうとした僕の腕を梅子は力強く握った……え?


「このまま帰ったら()()()()だぞー! この後『お楽しみ』があるでしょ!?」


 僕の言葉を聞いた梅子は少し不機嫌な顔をした。まさか……


「甘~いデザートの時間……楽しみましょ!?」


 やっぱりそう来たか!? 念のため下着も替えといて良かった。

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