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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第五章「嫉妬」
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現状維持

 僕はアイドルの相模絵美菜こと「鮎川桂」とセフレの関係だ。だがそこへ、桂の友人を名乗る「酒匂梅子」が現れ……僕と「二人目のセフレ」として関係を持ってしまった。

 セフレなので当然、二人以上の女性と付き合おうが何の問題も無い。恋人や夫婦では無いので浮気でも不倫でもなく、倫理的にも社会的にも問題は無い。

 まぁセフレという概念が倫理的、社会的に問題無いか……というのはここで議論する話題では無いだろう。


 もちろん桂もその事は十分理解している。むしろ梅子に僕を勧めてきたのは桂の方だ! だが実際に梅子と関係を持った後、桂の言動に変化が表れ始めてきた。



 ※※※※※※※



 ある日の夜……僕はバイトを終え、独り寂しく自分のアパートに帰って来た。今の生活では家賃を払うのが精一杯の状態だが、何とかこの生活を維持出来るように頑張っている。

 僕はこの時間まで営業しているスーパーへ閉店ギリギリに駆け込み、半額になった良くわからない弁当と一番安いプライベートブランドの缶チューハイを買い込んだ。同じ様な物を毎日コンビニで買っていたら、とてもじゃないが生活出来ない。


 テレビを点け、買って来た弁当と缶チューハイをテーブルの上に広げる……()()()以来、台所はほとんど使った事が無い。テレビではカントリバースが出演するバラエティー番組を放送していた。

 ドームツアー真っ只中……しかも元リーダー・荒川夢乃のスキャンダル以降、所謂アンチが増えて大変だというのに皆、何事も無かったかの様に番組を盛り上げている……凄い体力そして精神力だ。そんな中、トークコーナーで司会者がひな壇に座った「びーなす」こと相模絵美菜に話を振った。


『そういえばびーなす! 最近キレイになったって専らの噂だけど……何? 恋愛でもしてるのー!?』

『はいっ! 実は……』


 〝ぶっ!〟


 思わず飲んでいたチューハイを吹き出してしまった……勿体無い。恋愛禁止のアイドルにそんな話を振る司会者も司会者だが、それに対して「はい」って!? まさか僕の事を言うつもりじゃないだろうな!?


『って、私たち恋愛禁止ですよ! ある訳無いじゃないですかー!』


 あぁビックリした! ていうか僕たちはセフレであって恋人じゃないし……冗談でも言ったら大騒ぎになる関係だ。



 恋愛か……



 もう二年以上、僕は『恋愛』というものをしていない。


 僕は振り返って後方を見た。そこは風呂場とトイレ兼用の入り口だが真ん中に洗面台が置かれている。洗面台には……元恋人の歯ブラシがそのまま残されている。


 僕はこのワンルームのアパートで元恋人と同棲していた。だがある日、彼女と別れてしまった……突然の別れだ。

 それ以来、元恋人が自分の持ち物を取りに来ることは無かった……僕も処分していない、いや……絶対に出来ない。

 なのでこの部屋は彼女と過ごした当時のまま時が止まっている。ま、当時と違うのは部屋が少し散らかってゴミが増えた位だろうか。

 別れた彼女に未練がある僕は、例え生活が苦しくてもこのアパートを退去する事が出来ない。でも本当は何時までもここに居てはいけない事も理解している。


 次の恋愛に移行できない僕は桂と「セフレ」という関係を結んでいる。僕は桂に恋愛感情を持たないし、桂も僕に恋愛感情を持たない……いや、お互いに持ってはいけないのだ!

 今の所その辺はお互いに心得ていて、僕と桂はバランスの取れた良好な関係を続けている。だが梅子と知り合い、そして関係を持った事で少しずつバランスが揺らいできた気がする。


 と言うのもあれ以来、セックスの最中に桂がやたらと梅子の事を聞きたがる……いや、梅子と比較しようとしてくるのだ!

 桂は年下だがセックスの経験は豊富、今まではまるで「年上のお姉さんが教えてあ・げ・る」みたいなスタンスだったのだが……僕が本当の「年上のお姉さん」と寝てしまった事で自信を失ってしまったのだろうか?

 まぁお陰で? 今までの桂とは違った、何か吹っ切れた様なセックスになってそれはそれで良いのだが……流石に桂の精神的な負担になっては良くない。

 もし梅子の存在が負担になるのであれば、やはり僕は梅子と関係を持つのは止めた方が良いのかも知れない。そう思っていたら、


 〝ピロンッ〟


 ニャインのメッセージが届いた。相手は……梅子だ!

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