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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第四章「告白」
31/57

種明かし

 桂の「友人」だという酒匂梅子という女性に誘われ、入ったのは一軒のものまねショーパブ。そこで僕はステージで歌う相模絵美菜のものまねタレントに目を奪われてしまったのだが……。


 あれってまさか……酒匂梅子?



 ※※※※※※※



 ショーが終わると、再び料理が並べられたテーブルに人が集まり始めた。するとさっきまでショーに出演していたタレントさんたちが次々と店内に入り、お客さんと一緒に記念写真を撮り始めた。

 どうやらこの店はショーが終わると、お客さんが出演タレントと記念写真を撮ったり歓談できるシステムらしい。すると僕の所へ、


「今日は来てくれてありがとー! まっくん」


 相模絵美菜がやって……来る訳がない! やって来たのは


「やっぱ酒匂さんでしたか」

「こーら! 本名言うなー!」


 自分だってまっくんと言ってたじゃないか! 一瞬、桂から呼ばれたかと思って焦ったわ。そうか、この人はものまねタレントだったのか! アイドルDVDを大量買いしてたのは物真似の研究用に違いない。


「私の芸名はね……」


 と言うと酒匂梅子は名刺を取り出した。そこに書いてあった名前は、


「相模()()……何だよこれ?」

「だって相模川を挟んで海老名市の隣は厚木市でしょ?」


 何て安直なネーミングだ。でも、ものまねタレントってこういう芸名多いよな。


「じゃあ鶴見君も一緒に記念写真撮る?」


 いや、ものまね(ニセモノ)と一緒に撮った所で本人じゃないし……断ろうと思っていたら既に「相模厚着」こと酒匂梅子が近くに居たものまね仲間を集めていた。


「はいっフェイクーッ!」


 フェイク(ニセモノ)を「はいチーズ」みたいな使い方するなよ。ていうか本人の二倍くらい体重がありそうな渡良瀬碧(ぐりんちゃん)フェイク(ニセモノ)「渡良瀬(ふとり)」がマジでイラッとする。



 ※※※※※※※



「楽しんでもらえたかな鶴見君?」

「え、えぇまぁ……あっそれと、おごっていただいてすみません」


 本当はものまねショーパブなんて興味無いが夕食分の食費は浮いた。酒匂梅子から貰ったチケットは、ショーと食べ放題飲み放題がセットになっていて意外と高価な物だったのだ。


「いいのよ、私が誘ったんだし」

「それと、ええっと相模……厚……」

「二人だから梅子でいいわよ」


 残りの自由時間(フリータイム)、僕は酒匂梅子と二人きりで話していた。


「えっと……梅子さん、あの……」

「例の話ね! じゃあ、種明かししてあげるわ」


 流石に近くで見ると違和感を覚える。だがステージに立っていた彼女は、正直そこに相模絵美菜が居ると錯覚してしまう程似ていた。


「キミさぁ……()()()と会う時、何でマスコミにバレないと思ってるの?」

「えっ!? そりゃ毎回(ラブホの)場所を変えてるし入る時間も……」


 僕がそう答えると酒匂梅子はクスクスと笑い出した。


「甘いなぁ()()()は! その程度でマスコミなんかごまかせないわよ」


 そう言うと彼女はスマホを取り出し、


「ねぇ鶴見君、びーなすのイヌスタ、フォローしてる?」

「え……えぇ」


 元々渡良瀬碧のイヌスタのみフォローしていたが、こういう関係になってしまったので桂こと相模絵美菜のイヌスタもフォローするようになった。


「じゃあさ! 彼女のイヌスタ、今出してみて」

「?」


 僕は言われるまま、相模絵美菜のイヌスタを表示させた。そこへ酒匂梅子が、


「鶴見君、いい? ちょっとこの画像覚えてね」


 と言って自分のスマホ画面を僕に見せた。そこにはどこかのお店で注文したであろうケーキの画像が表示されていた。そして彼女がスマホを操作すると、間もなく僕のスマホに通知が来た。


「えっ!?」


 通知を見た僕は驚きの声を上げた。何と相模絵美菜のイヌスタに、先程のケーキの画像がアップされていたのだ! 僕が酒匂梅子を見ると彼女はしたり顔で、


「そういう事! あの子のイヌスタは私が投稿しているの」


 種明かしはこうだ。僕が桂(相模絵美菜)と会っている間、酒匂梅子は相模絵美菜に成りすましていたのだ。そして街中で時々ストーリーを投稿……すると投稿を知ったファンが彼女を探し、目撃情報がSNSで密かにアップされるという。

 万が一投稿に矛盾が見つかっても二十四時間で投稿は消えるため、普通のファンなら気づかれる事は無いという。


 現代はSNSを使った一億総監視カメラ時代……それを逆手に取った形だ。こうしてほぼ完璧なアリバイが成立する訳だ。


「ね、わかったでしょ! 私はあなた達の恩人なのよ」


 なるほど納得した! この人が裏で暗躍しなければ、僕は桂と会う事すら出来なかったのだ。それにしても……何故この人はそこまでして鮎川桂、もしくは相模絵美菜に尽くすのだろうか? 先日はアパートの部屋まで貸してくれたし……。


「まぁどっちかと言えば……あの子の方が私にとって『恩人』なんだけど」


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