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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第四章「告白」
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鶴見君……だよね?

 成り行きとはいえ、僕は「他人の家」で桂とセックスしてしまった。


 この部屋の住人は桂の友だちで、年上の女性だそうだが……いや今は性別とか関係ない! 他人の部屋の折り畳みベッドでギシギシと音を立て、桂の香水の匂いや二人の汗など……思いっきりセックスの痕跡を残してしまった! しかも、


「あっ、あのさぁ……これ、どうする?」


 行為が終わり、所謂「賢者モード」になっていた僕は背徳感で一杯だ。原因は僕が今持っている物……それは使用済みのコンドームだ。

 こんな物を留守中の知らない人の家へ置きっ放しにするのは余りにも非常識過ぎる行為! 倫理感道徳感背徳感全てにおいて間違いの無い答えだ。


「あぁ、いいわよそれ! 私が後で捨てとくから」


 いやいや、僕の体液が入った物を現役アイドルに捨てさせるなんて……絶対に無理! 背徳感の極みだ。


「心配しないで! 私の体液だってべっとり付いてる訳だし」


 今更ながらだが……現役アイドルが言うセリフではない。


「どうせ食べたお菓子の袋とかも一緒に捨てなきゃいけないし……まとめて帰りにコンビニのゴミ箱にでも捨てとくから!」

「それってコンビニも迷惑でしょ!?」


 桂はこの後、この部屋に残り家主の友人と会うと言う。僕は一足先に誰だかわからない人のアパートを、罪悪感と背徳感の両方を抱えたまま後にした。



 ※※※※※※※



 桂との関係が修復して一ヶ月ほどが過ぎた。


 その間、桂はアイドルグループ・カントリバースの相模絵美菜として五大ドームツアーを続けていた。名古屋のライブが終わり、次は札幌、東京へと続く。

 知っての通り、会場のドーム球場は現在プロ野球の公式戦の真っ只中……わざわざシーズン中にコンサートが開催されるのは異例だと思う。言い換えればそれだけ彼女たちの人気が並みのアイドルとは違うという事だ。

 ただ球場のスケジュールがびっしりと詰まった中で行われるドームツアー、当然というか期間は長い。そんな中、こちらに戻った桂とは何度も会ってセフレの関係を続けていた。


 今、桂はこっちに帰って来ている。だが彼女はテレビや雑誌、ネット番組など分刻みのスケジュールをこなしているので会えない日の方が当然多い。

 この日も桂はテレビの収録なので会えない。僕はこの日、バイト仲間からシフトを変わって欲しいと急に頼まれたため暇を持て余していた。

 特にすることも無かったので、僕は近くの中古CDショップでCDやDVDを物色していた。推しがいるカントリバースは新品のCDを買うが、他のアーティストは配信か中古CDやDVDで済ませている……正直生活レベルは高くない。


 僕がアイドルDVDのコーナーを見ていると、


「あれ? ねぇキミ!」


 突然、見知らぬ女性に声を掛けられた。年は二十代後半から三十代くらい、眼鏡をかけ化粧っ気の無い地味な顔をしている……何だ、こんな平日の真昼間から逆ナンか? それとも宗教の勧誘?


「キミ、鶴見君……だよね?」


 ――えっ!?


 何でこの女性(ひと)は僕の名前を知っているんだ!? 僕は以前、この人と会った事があったっけ? この瞬間、僕は自分の記憶からこの女性に関するデータをCPU並みの超高速で呼び出した。生徒の関係者? ファンイベントで会った人? 思い当たる節を必死で探したが、全く思い出せない。


「あっ、あの……失礼ですが、どこかでお会いしましたっけ?」

「あぁー、今私の事を思い出そうとした? そりゃわかんないわよねー! だってキミとは初対面だもん」


 何なんだよこいつは!? そりゃ思い出せる訳がねぇ……それにしても、このウザ絡みして来た女性は何で僕の事を知っているんだ? するとこのウザ絡みの女性は僕の耳に顔を近づけると、こう囁いてきた。


「困るなぁキミ、使用済みコンドームはちゃーんと片付けてくれなきゃ」


 ――なっ!?


 この一言で全てが理解出来た! そう……彼女は桂の友人で、あのアパートの住人だったのだ! て言うか桂はアレを片付けるとか言っておきながら結局置きっ放しにしておいたのかよ! 僕は顔から火が出る位恥ずかしかった。


「あっ、まだ自己紹介していなかったね!? 私は酒匂梅子、独身よ!」


 わざわざ独身と付け加えた酒匂と言う女性は、よく見るとアイドルや有名なテレビドラマのDVDを大量に買い込んでいた。


 何なんだ、この人は……?

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