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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第四章「告白」
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桂の過去(前編)

 一度は僕に別れを告げた桂だったが、今度はもう一度会って話がしたいと再び連絡してきた。ほとぼりが冷めたのか……僕も桂に対して疑問に思う所があったのでもう一度話し合いたい。僕は桂が指定した場所に向かうと、そこはお世辞にも立派とは言えないボロアパートだった。


 それにしても……何だここは? とてもじゃないが国民的アイドルグループのメンバーが住むような家ではない。もしここが桂……いや相模絵美菜の家だとしたらファンはおろか、アイドルを夢見る少年少女も失望してしまうだろう。

 だがこの玄関入ってすぐに台所がある1K、または2Kのアパートに居るのは紛れもなく桂だ。どういう事だ? まずはこの疑問から解決しないと気が済まない。


「こ、ここって……君の家なのか?」

「違うわよ、ここは友だちの家……あっ、そこ座って」


 桂は僕からの質問を待ってましたとばかりに即答した。僕をちゃぶ台が置かれた部屋に案内すると桂は台所へ向かった。


「友だちって……えっ、今その人も居るって事?」

「まさか! 彼女は今日お仕事で出掛けてるから借りてるのよ」

「……はぁ」


 いくら友だちでもそんな簡単に家貸すかな? 僕は正直まだ腑に落ちない。


「私の家なんて間違いなくマスコミ(見)張ってるもん、そんな所に()()()()行ったらそれこそ『飛んで火に入る……』ってヤツよ」


 そういう事か! やっと納得がいった。どうやら桂はこのアパートを熟知しているらしく、慣れた手つきでお茶を運んできた。


「ごめんね、このアパート壁が薄いから……あまり大きな声出さないでね」


 そう言うと桂も、ちゃぶ台の周りに敷かれた座布団へ座った。僕の隣……右斜め前だ。この前電話で話した時より元気そうだが、それでも「いつもの桂」という感じではない。


「改めて、この間はごめんなさい! 私、先生ってワードについカッとなっちゃって……本当にごめんなさい」


 桂は僕の方を向き正座すると深々と頭を下げた。


「いやいいって! 僕も悪かったし……」


 と言い掛けた所で……あれ? 僕は何も悪い事してないのに頭下げる必要はないよな? 強いて挙げれば彼女に僕の職業を明かしていなかった事くらいだが。

 それに桂とはセフレの関係だし、別にそこまで明かす義務も無いだろう。ただ何で「先生」という言葉に対して過剰に反応したのか、その理由は知りたい。


「で、教えてもらえる? 何で『先生』をそこまで嫌うのか……」


 桂はしばらく僕の目を見たままじっとしていたが、やがて小さく頷いた。



 ※※※※※※※



 だがその後も……余程話し難い内容なのか、しばらく沈黙を続けた桂だったがようやく重い口を開いた。


「前にさ……私がセックス依存症だって告白した時、確か初体験は十三歳で中学一年って言ったよね」


 あぁそういえば……あの時はセックス依存症という言葉も相俟って、ずいぶん早熟な子だなぁって印象だったな。


「あれね……実はレイプだったの! 相手は……()()()()()


 ――!?


 先生という言葉を聞いた瞬間、僕は自分の体内にある血液が全て凍り付いた様な衝撃を覚えた……嘘だろ!?

 桂は十三歳の中学一年……って事はまだ小学校を卒業して一年未満の……子どもじゃねぇか!? そんな子どもに対して……強姦だと?


「最初はね、補習だったの……私、バカで成績悪かったから」


 桂の話だと……当時二十代だった担任教師と放課後に二人だけで補習を行っていたらしい。彼女も成績が悪い事を自覚していたので、何も疑う事無く補習を受けていたそうだが……


「後でわかったんだけど……あの時、私より成績悪い子いたんだよね」


 なるほど、その時点で教師(そいつ)には「別の目的」があったという事だ! どう考えても計画的犯行だな。

 しかも成績が悪かった桂に対し「体罰」と称して次々と如何わしい行為を繰り返していたらしい……そもそも体罰自体NGなのだが。


「最初はね、痛くない程度に頭を小突かれたり……そんな感じだった。でも段々お尻を触られたり胸を揉まれたりして……何か違うって思う様になってきたの」


 こういうのって他人から見ると「騙される方がおかしい」「抵抗すりゃいい」と思うだろう。だが「先生」という立場が絶対的な存在、つまり「聖職者」……そんな考えを親や社会から教え込まれ、信じて疑わない子どもだったら?


「怖かった……これで抵抗したら、ずっと落ちこぼれたままじゃないかって」


 しかも中一女子なら体力的にも抵抗するのは難しい……これはセクハラであるのはもちろん、教師という立場を利用したパワハラだ!


「結局、ある事がキッカケで明るみになるまでこの関係が続いたわ」

「ある事?」


 僕がそう聞くと、桂は唇を噛みしめながら下を向き体を震わせた。そして絞り出すように言葉を発した。



「妊娠……したの」



 ――何だって!?

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