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セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第四章「告白」
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会って話したい

 ――どうしてこうなった!?


 僕が自分の職業を「教師」だと告白した瞬間、桂の態度が一変した。桂は僕の事をまるで親の仇でも見るような目つきで睨み付け、そして僕に別れを告げてラブホテルを後にした。


 完全にフラれた! いや、恋人じゃなくセフレなので「絶交」と言った方が良いのか? あの怒り方……どう考えても尋常では無いレベルだった。


 でも……何で?


 桂が怒った理由が皆目わからない。ひとつだけわかっているのは僕が「教師」だから……という事。本人も言っていたが、どうやら彼女は「教師」という職業に対して並々ならぬ怒りの感情を持っている様だ。

 だとしたら……僕がこの仕事をしている限り、桂が近寄って来る事は永遠に無いであろう。まぁ正直言って「職業」というカテゴリで同じ様に扱われてしまうのは非常に不本意なのだが。教師だって人間、色々な奴がいる……決して聖職者なんかじゃない。僕は桂が置いていった現金で精算し、独りでチェックアウトした。



 ※※※※※※※



 それから数日後、未だに桂から連絡が無い。バイトから帰って来た僕は、いつもの様に自宅でプライベートブランドの缶チューハイを飲みながら、特に何をする事も無くただ過ごしていた。


 ほとぼりが冷めたら……などと言うのは甘い考えだった。桂の怒りは僕の予想を遥かに上回っていた。これは間違いなく修復不可能な状態だ。

 これはもう、桂と別れるしかない。いや、桂の方は既に別れた……と認識しているかも知れない。まぁこれは「夢」だったと考えれば別れるのも容易いだろう。


 そもそもセフレが出来ただけでも超ラッキーな出来事。しかもその相手が世を忍ぶ仮の姿で、実は国民的アイドルグループ・カントリバースのメンバー・びーなすこと相模絵美菜だったとは!? でも彼女に言わせたら相模絵美菜が世を忍ぶ仮の姿らしいが。


 そんな有名人、しかもスタイルの良い美人! と一回でも関係を持てただけで幸せな事だったろう。むしろこのままズブズブの関係になってしまったら、スキャンダルの当事者となってしまう可能性が!? そうなる前に別れてしまった方が、ある意味正解なのかも知れない。


 よし! こうなったら仕方がない。きれいさっぱり忘れるために、桂のニャインをブロック……それから削除しよう。

 僕はスマホを取り出し、リストから桂の名前を選択した。そしてブロックを……ブロックを……


 ――押せない!


 何という未練がましさ……何で!? あぁそうか、僕は桂が何故に教師を嫌っているのか理由を知りたいんだ! それで……って何でそんな理由を後付けしているんだ! きれいさっぱり関係を清算するんじゃなかったのか!?

 僕は自分の脳内で迷っていた。よく漫画で天使と悪魔が囁いている様な感覚だ。まぁ結局消す行為に対して未練がましいだけで、そこへ勝手な理由付けをしているだけ……我ながら情けない。そんな事で迷っていると、


 〝ピロンッ〟


「うわっ」


 突然ニャインにメッセージが! 相手は……


 ――えっ?


 まさかの……桂だった。



 ※※※※※※※



 久しぶりの桂からのメッセージは『電話で話したい』との事。メッセージでは話せない大事な内容だそう。僕は間髪を入れず音声通話のアイコンをタップした。


『……もしもし』


 電話越しの桂は先日とは打って変わり、意気消沈したような声だった。


『先日は……ごめんなさい、私……()()()()が先生だと知って、自分の感情が抑えられなくなってしまって……それで……』

「それなんだけどさぁ、何で先生って聞い……」

『待って!』


 僕が疑問をぶつけようとした所で桂に止められてしまった。


『その事で……お話したい事があるの! 電話じゃなく、会って話したい』


 桂の声は意気消沈……と言うより何か思い詰めている様に聞こえてきた。その後、彼女と会う約束をして待ち合わせの確認をしたのだが……えっ?



 ※※※※※※※



 桂と待ち合わせた日、僕はラブホ……


 ……ではなく、とあるアパートの前に立っていた。


 おいおい、本当にここで良いのか? 僕は一抹の不安を覚えながらも玄関チャイムのボタンを押した。


 〝ピンポン!〟


 古臭いチャイムの音だ……と言うのも今どき当たり前になっているカメラもインターホンも無い玄関チャイムだったのだ。

 そもそもこの二階建てアパート、恐らく家賃は数万円程度ではないかと思われる程古そうな所謂ボロアパートだ。こんな所に国民的アイドルが住んでいるのか甚だ疑問だが……


 〝ガチャ〟


 玄関ドアが少しだけ開き、覗き込む様に顔を出したのは……桂だ!


「……入って」


 桂は小さな声でそう言うと、僕に手招きをしてドアを開けた。僕が入ると周囲を気にしながらすぐにドアを閉めた……完全に密会だ。

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